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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ4:社会的問題(地方自治と高齢者の運転)の論文レビュー

複数自治体連携による地域公共交通の改善に向けた政策決定プロセスに関する研究―滋賀県湖東圏域の公共交通活性化プロセスを例に―

塩士 圭介, 近藤 隆二郎, 高山 純一
都市計画論文集 2012 年 47 巻 3 号 p. 463-468

内容

地方の公共交通などの維持が大きな社会問題なのは言うまでもない.各自治体は対応を行っているが,効果を挙げられているものは少ない.その中で滋賀県湖東域は複数自治体の連携により一定の効果が得られた.しかし複数自治体の施策は様々な点で利害の一致などのハードルが高い.そこでその成功の鍵となる要因や残された課題を明らかにすることを,この論文の目的としている.
この地域ではバスはほぼ赤字で,相乗りタクシーも小さな自治体では導入が難しかった.そこで圏内唯一の市である彦根市が中心となって,これまでの事業を継続・改善する形で圏内全体での相乗りタクシーの導入を図った.この際に特筆する点として,費用負担明確化,各域運賃水準統一,域内全体のネットワーク見直しがあったとしている.プロセスに関しては,共通目標(交通空白地域解消),アンケート結果(連携が必要との声),競合するバスとの役割分担が大きな役割を果たしたとしている.
流れをキングダンの政策の窓で分析している.問題の認識の流れとしては,交通に関する不便さと費用負担を各自抱えていた点とアンケートが寄与したとしている.政治の形成の流れの背景として全国の公共交通衰退を受けた上位の総務省定住自立圏構想があるとしている.これらより各行政担当者を通し政策提案がなされ,いずれかが欠けた場合,実現は難しかっただろうとしめている.また JR 以外の公共交通は全モードで事実上寡占であった.そのため競争意識が働かず安定を求める保守的な事業者と,利用者を増やしたりしたい比較的革新的な行政で温度差があり課題だったと指摘している.事業者はプレイヤーとしてはあまり動かず,運行本数なども一部妥協されてしまったようである.

感想◎

これからの各地方で苦しくなる中,非常に参考になる有意義な分析だと思う.ただこの取り
組みの住民の反応が見られず,また政策の窓の分析の必要性がやや疑問で,少し引っかかる
ところはあった.

鉄道駅と東京大都市圏における郊外自立生活圏の住環境特性に関する研究

山村 崇, 後藤 春彦
都市計画論文集 2012 年 77 巻 676 号 p. 1381-1390

内容

1990 年以降,徐々に自立型郊外核が形成されているのが明らかにされている.この研究では郊外自立生活圏を捉え,中心市とこれの相対的特性と類型化を目的としている.

まず第一次〜第五次首都圏基本計画から計画の変遷を分析している.昭和 25 年から過度な住宅供給が行われ無秩序な外延的拡大が生じていた.そこでロンドンの計画の影響も受け,近郊の緑地帯の外側に衛星都市を開発することとした.そして多極分散型と郊外の自立性が強調されるようになった.住環境に関しては,職住近郊などからリダンダンシーなどストック重視型にシフトしている.通勤混雑などの大都市問題を捉え,自立型郊外都市による低減を図ることが示されている.
住環境の詳細な分析として,土地建物統計調査を採用している.そこから快適性や利便性に関する指標を取り上げ,相関分析をしている.結果,指標の分類としては,住環境については住宅の古さや広さなどの基本性能,地域環境については,通勤・コミュニティ施設・公園・商業施設・生活施設へのアクセスが選定された.ただし各項目において,複数の相関のある指標を取り入れており,多重共線性に課題がある.また不動産価格の適正さのアフォーダビリティを取り入れている.
自立生活圏の対象地として,週従比率(常住就業者に対する従業地就業者の比率)が 1 以上の自治体を選んでいる.これには,近郊の川崎区,浦和区や,やや郊外の立川市つくば市成田市などが選ばれた.これらに対し,平均と東京都区との比較をしている.その結果,区内に対し自立圏は住宅が安価で通勤が短い一方,各種生活アクセスは劣っていた.また自立圏の自治体に対しクラスタ分析を行った.すると,都心との距離で違いが見られた.70kmほど離れた特に千葉の各自治体は通勤と住宅価格が良好という結果が得られた.また交通特性についても分析を行い,これらの地域では公共交通より自動車が優位なことが,これまでと同様に示された.またこれらの地域の業務特性についても分析を行い,近場の自立圏や区内はホワイトカラーが多いのに対し,郊外はブルーカラーが多いことが定量的に示された.

感想◎

分析結果は明示なようなことが多かったが,アプローチの仕方が面白かった.また自立圏が様々あるなかの分析が特に面白かった.首都圏でも特に千葉にブルーカラーが多いのは興味深かったが,この研究では群馬・栃木が含まれていないので,それを入れたら同じような傾向が見られると思う.一方これらは著しく車社会なのが知られているので,少し違う可能性もあり興味深い.

Pioneering Driverless Electric Vehicles in Europe: The City Automated Transport
System (CATS)

Derek Christie, Anne Koymans, Thierry Chanard, Jean-Marc Lasgouttes,Vincent Kaufmann
European Transport Conference 2015 – from Sept-28 to Sept-30, 2015

内容

後述のヨーロッパの無人運転について興味があったので.
自動運転の受容性と実現可能性を定量分析することを目的としている.5 か国 11 チームのプロジェクトをまとめている.自動車は大半の時間駐車していてポテンシャルを活かせていない.旅行時間経路を最小化して活用し効率化が図れる.初期段階では 3 つの都市のモビリティのニーズ分析し,ストラスブールが同定されたとしている.しかし実験は EPFL でNavy を用いて実験は行われた.
Navy は夜間に充電することで日中走り続けらるとしている.また GPS とカメラで自動識別し特別なインフラは不要と述べている.最高速度は 20km/h だった.区間は 1.8 ㎞で徒歩よりやや速い程度だった.長期休暇に 168 時間運転された.授業期間は需要が上回る懸念があったとしている.また利用者にアンケートを行った.しかし休暇中だったため多様な利用者の意見を集められたと述べている.
アンケート結果では審美的・未来的・機能的・ユーザーフレンドリー・安全という意見に 8割以上が賛成で肯定的な意見が圧倒的に多かった.待ち時間は 5-6 分をピークに,運賃は1-2 フランをピークに小さい値よりの山の分布が見られた.またドライバーがいないことは心配する声は小さく,否定的なのは 5%程度だった.なお実験では,一応責任者が同乗している.しかし車両速度は半数の人が遅すぎると述べていた.
今回は比較的クローズな大学構内で行われたが,これまでの研究と同様に受け入れる傾向が見られ一致したとしている.ただ政策的な検討が行えなかったことなどが課題だったとまとめている.

感想◎

読んでいたらちょうどシーサイドライン事故が起きてしまった.しかし山手線や新幹線,南北線はほぼ無人運転なので,今後のさらなる発展と実用化に期待したい.すずかけも駅前から最奥の G3 までそこそこ長いので,自動運転車が走っていてほしいと思った.DeNA などに頑張ってほしいと思った.結果がここまで肯定的なのは驚いた.しかし安全性と速度のトレードオフとサービス水準に課題があるようなので,政策の課題も含め頑張ってほしいと思った.

進む都市化と変わるカーデザイン

森口将之
IATSS Review Vol.43,No.1,pp.15-24,2018.

内容

一般的な論文とは少し異なり自動車変遷をまとめている.モビリティとエネルギーに焦点を当てようと思い読んだ.
まず戦後,被害の少なかったアメリカを中心に大衆車でありながらクラスレスなものが,続いて経済的な小型車が流行になった.しかし環境問題に関心が集まるようになり,人工集中による渋滞の増加があった自動車は大きな逆風であった.さらに小型化への機運が高まり,時計会社の開発した Smart が売られた.しかし導入が強引だったためか,浸透せず売れなかった.ホンダも ITS 技術を先進的に取り入れた商品を開発・発表したが,失敗に終わった.現在と同様の件で苦い経験があり,これからの自動運転の普及に際し,歴史に学ぶ必要があるように感じた.
その後ハイブリットが流行となった.モーターの小型化などからデザインの幅が広がり,革新も進んだ.しかし購入者は非常にデザインに保守的なことが明らかとなり,大幅なデザイン変更は多くが失敗したようである.さらに現在はシェアリングエコノミーが台頭している.ロンドンのタクシーの景観保全性について述べるととともに,日産の NV200 がニューヨークで独占契約を勝ち取った話が取り上げられている.また日本においては,トヨタが数少ないワールドワイドパートナーであり,モビリティのまたとないアピール機会を得,チャンスだろうと述べている.目がシティにおいては,タクシーは台数が多く,景観に与える影響が大きく,広告的な効果があるというのは目から鱗だった.
自動車の特有の課題として,乗車人員に対し大型化が止まらないことを挙げている.平均で 1.3 人だが大型化で非効率と指摘している.汎用性を考えれば仕方ない部分もあるが,先述のシェアエコノミーや相乗りで解決を探っていくのも,この業界の課題と感じた.当然,過疎化・高齢化へ自動車も対応する必要があり,小型化が失敗した今,自動運転へ大きく期待がシフトしていることが述べられている.グーグルは当初,社会インフラ的立場から開発していたようである.現在はメーカーと提携し,メーカーのドライバー主体の考えに流されていると述べている.自動運転の潮流としては,自動車メーカー系と IT ベンチャー系(=当初のグーグル)で考え方に違いがあると指摘している.IT 系の考えの方が都市との親和性が高いとしており,私はこちらに期待したいと思う.スイスのシオンの無人運転がここであげられたりしている.

感想△

自動車は詳しくなく,流れと現在の主流を経時的に把握できた.

余談としては論文レビューとして横着すぎて少し指摘された..

簡易自動車運転シミュレーター(Simple Driving Simulator)を用いて判定した中高年健常者の運転特性

和才 慎二,門田 隆,松村 直樹,蜂須賀研二,加藤 徳明,佐伯 覚,松永 勝也
日職災医誌,66:45─50,2018

内容

近頃,池袋の事故など高齢者に関する事故に関心が集まっている.一方,これはメディアによる印象操作の部分も認められるだろう.そういった点は保険料などで明らかになると思われる.しかし統計的なもののほか,学術的にどうか関心があり読んだ.
この論文はもともと脳に障害を持つ人の検定用のシミュレータを社会背景を受け,高齢者に適応したものである.対象者は 50歳以上のゴールド免許の健康な 40人である.中高年健常者の運転特性を明らかにすることを目的としている.
検査項目は,認知反応,タイミング,走行の検査を行っている.これを若年健常者のデータと比較して分析している.平均±標準偏差以内を標準域,2 標準偏差以内を境界域,それを超えるものを傷害域と定義している.
結果としては,正常に運転できるとされたのは試験者の半数に満たなかった.そのため昨今述べられている報道や世論は妥当で,社会問題と言える.基準を満たしたのは,60.5±9.5歳だった.健常者と比べ,認知反応時間や黄信号認知反応時間,予測誤差に統計的に有意な差が見られた.ただし,これらの人も車間を大きくとることなどで,安全を確保できるだろうと述べられている.

感想〇

意外と本当に危険で,必ずしもメディアの煽りとも断言できないだろうと思った.なかなかに驚く結果で,あまり受け入れたくないところがある.交通弱者の救済がより急務だと感じた.また日常生活で巻き込まれる確率も十分に高いだろから,注意しなければならないと思った.あと実験機械は少し面白そうだった.グランツーリスモの適用ができないだろうか.分析方法について,健常者との標準偏差との差から統計的に判断していたが,理論的でないのが引っかかった.単に老化で運動能力などが衰えているのと,運転障害との相関に関して課題があるだろう.

認知症患者の自動車運転に関する責任

馬塲 美年子
Journal of the Japanese Council of Traffic Science Vol.16 No.2 2016

内容

同様の分野より.認知症という言葉は 2004 年に使われ始め,そのため関連する法整備などは十分とはいいがたい.これを目的とし,主に法律の観点から分析している.
疾患持ちの人は免許更新に際し,以前は該当すれば一発取り消しの絶対的欠格事由となっていたが,差別に対する世間の風当たりなどから相対的なものに移された.しかし認知症は実質的に絶対的な扱いとなっている.更新では 2016 年現在 75 歳以上の高齢者は認知機能検査が行われる.これは 2009 年の改正道交法で取り入れられた.検査の結果,第一分類となると取り消しとなる.しかしこれは記憶力・判断力から判定されるため,アルツハイマー型以外はすり抜けてしまう可能性が高いと指摘している.そのため他の検査法も取り入れるべきと述べている.また認知症の発症時期が 51.3±9.8 歳といわれているから,より若い人にも行うべきと指摘している.
次に賠償責任について述べている.民法により,認知症により認知無能力となった場合は,賠償責任が免責される.ただし車の所有者や同乗者などの運行供用者は免責を受けてしまう.また家族などの監督責任についても検討している.これには鉄道事故判例が応用できるとしている.この判決は家族の賠償責任を否定したが,患者の家族が必ずしも責任を負わないというわけではないと指摘している.判決では,総合的に勘案されたとして,今後はこのような形が主流になると述べている.また公的補助は民間保険などに投げ出され,見送られたことが記されている.
また民事ではなく刑事について,疾患持ちの人は危険運転致死傷に問えるが,認知症は含まれていない.他の病気では,事故発生時に心神喪失であっても,体調の悪化の際に事故を回避できるだろうとして,結果的に回避義務違反に問われることが多いことを挙げている.しかし認知症は日常的に判断力などが衰えているため,回避が可能かの判断が難しいと指摘している.さらに認知症は進行していくから,判決後の刑事処分時に対応できるかという問題もあることを指摘している.2015 年のデータでは,第一分類は 3.3%の 5 万人余りであった.しかしこれに医師の診断が必要となると適性検査が 1650 件から 5 万になり,取り消しが 500 件余りから 1〜1.5 万件になるだろうと警視庁のデータを取り上げている.これにより代替交通の問題が生じると懸念している.

感想〇

認知症の法律面での難しさが分かった.しかし危険であり運転を回避させることは社会的要求とも感じる.取り消しが増えようとも強い意志で推し進めるべきだろう.そのため交通問題の解決がやはり欠かせない.

まとめ

最近省いていたけど,前述の横着エピソードとかゼミ資料に追記してみた.

ただTwitterはじめ,高齢者運転に反対する意見が目立つが,保険料から分かるように若者も同様だし,自分は絶対やらないというのも慢心.煽られていることに気づき冷静になることが必要だと思う.

Twitterリテラシーが高いと自己認識している低リテラシーの声が大きいのが問題.

一方で高齢者運転関連のソースをひとつくらいは

高齢者専用の運転免許創設 安全機能付き車に限定:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45897580Q9A610C1MM8000/

www.nikkei.com