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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ5:都市鉄道の混雑と職住配置

ネットワーク上での混雑を考慮した最適職住配置手法の構築とその実証研究

円山 琢也, 原田 昇

都市計画論文集2003 年 38.3 巻 p. 517-522

内容

職住最適配置とは,都市構造を変えず,職住配置を変えるというTDM施策である.

職住最適配置を,混雑を考慮したネットワーク均衡モデルで解明することを目的としている.職住について,ODと経路が制御される最適割り当てSOと,経路制御は非現実的としその点を自由としたUEの2者を考えた.後者は最適職住配置と経路選択が,相互に影響してしまう.そのため最小交通費用経路を選択するよう,OD表の変化とOD所要時間の変化を繰り返すこととした.なお一意に求まらないこともあるとしている.また交通モードは自動車と電車をそれぞれ考えている.また自動車においては,交通抵抗は外生的なものではなくOD変化に伴う渋滞の変化を組み込んでいる.同様の研究では鉄道を主に扱っており,本紙の新規性でもある.

結果として,いずれの最適割当でも,総走行台キロ・総走行台時・CO2排出量が30-40%減少することが確認された.所要時間はいずれも10分ほど減少した.従来の混雑を組み合わせないものを交通抵抗の面から検討すると,本研究の方が所要時間はわずかに短かった.これまでのものは,過剰通勤を過小評価していたと指摘している.鉄道はSOで改善した.最適割当はそれほど効果的ではなかった.しかし組み合わせることで,平均所要時間を51から38分に改善できていた.

ここまでは全体の配分見直しを検討していたが,現実的でない.そこで部分的な施策について分析している.すると導入率と台時の関係は下凸の傾向があった.これは割当非対象者にも効用が及ぶためと述べている.このメリットの3割を非対称者が得ている.台時は9%削減を20%の職住入れ替えで実現できると述べ,混雑課金と同様の効果を得られるだろうとまとめている.

感想△

職住配置は手間がかかっているわりに効果が薄いように感じた.従来のメジャーであったようだが,車内混雑の不効用は選択行動にそこまで影響を及ぼすものなのか疑問だった.また施策を実現する際,税金優遇や補助金が現実的だろうが,管理者の思うように移動が進むかも疑問.一方で地域内内交通は検討しておらず,そこが重要なのではないか.

  

東京大都市圏における持家取得者の住居移動に関する研究

佐藤 英人, 清水 千弘

都市計画論文集2011 年 46 巻 3 号 p. 559-564

内容

全国的な人口減少に加え,郊外では住んでいた団塊世代が便利な都心近くへ移り,そのジュニア世代は余った不便なこれら郊外ではなく便利な都心が選ばれている.そのため空き家が問題である.この研究では,東京大都市圏を対象に郊外住宅地の縮退が進行する地域の空間特性を明らかにすることを目的とし,持ち家取得に伴う住居移動の世代間比較を行っている.

データには国の統計ではなく,リクルート住宅カンパニーのアンケートデータ10年分を用いていた.これには個人属性のほか,いわゆるODが含まれている.これを持ち家取得時の家族構成を年代別にまとめると,50年代生まれが核家族のピークで6割ほどで80年生まれでは4割ほどだった.反対にDINKsが増加し,また単身は1割でほぼ一定だった.家の種別としては,集合と戸建てが2:1ほどで,70年生まれ付近がピークで全体で5500人ほどだった.これらの組み合わせは,若いほど持ち家を買うことに有意な差があった.

住居地の分析では移動は平均9.1㎞だった.標準偏差は示されていなかったが,郊外ほどに移動距離の平均が大きいことが示された.外部郊外に住んでいた人ほど都心への回帰の傾向が強いことが示された.また都心との距離を正負を考えて検討したのが上図である.前述の傾向に加え,都心に住んでいる人は郊外に移っている.これは年齢の影響が大きいと考えられ分析した.すると若い人ほど外向傾向が強いことが示されたと述べている.しかし割合としては7%の差で有意かは微妙だろう.

これからの空き家問題には比較的若い人の影響が大きいだろうから,70年代生まれについて検討している.集合は内向志向,戸建ては外向志向があることが示された.しかし以前の郊外志向とは異なると考察している.この時期は職住分離の最盛期で長距離通勤の世の中だったが,先述の通り現在は異なる.そのため主要路線沿線を除き40㎞以内ほどに収まっている.住宅土地利用調査とも比較し,近年都心近くが好まれていることを再確認している.したがって40㎞以遠の空き家がより厳しい状況になるだろうと予想している. 

感想〇

選択傾向が予想と同様に各グループで分析されていたので面白かった.

  

通勤ラッシュの緩和をめぐる東京大都市圏の都市構造の変化

明石 達生

都市計画論文集2013 年 48 巻 3 号 p. 525-530

内容

都市構造の大局的な変化を解明することを目的としている.既往の研究では,鈴木の研究によると,業務核都市への分散は1割ほどでは効果が薄いことが確認されている.

以下,ピークの90年と10年の数値を比較している.20-40km圏でのみ人口増加が見られる.多極分散型が進んでいると考察している.一方,首都圏のスプロール現象とも受け止められると思う.また職住関係の組み合わせを都道府県レベルで分析している.埼玉は県内のODが増え,都へは減少している.千葉も絶対値は小さくなるが同様の傾向にある.しかし神奈川は逆の傾向にあり,マクロな面では劣っていると言えるだろう.多摩内部のODが著しく減少しているが,区へも減少し,団塊らなどの引退が寄与していると考えられる.各県の都からの30~40km圏の分析も同様.ただし,接しない自治体の移動が1.5倍ほど増えており,都内の混雑を助長している可能性があると述べている.

ピーク時間帯の輸送量の分析なども行っている.京葉武蔵野線は著しく増加している.また田都・小田急・京王・東西・埼京が大きめで,他の分析と同様だった.

通勤・通学定期の分析も行っている.都区内のものは5%ほどの微減であった.これまでの分析と同様,多極分散が裏付けられた.しかし総量は微増していた.都心への娯楽余暇施設の集中などの懸念がありそうだ.時差通勤についても分析している.都心の着トリップ時間の早めが微増し,時差通勤で特に早めに出勤する人の増加が示された.輸送力も13%改善し寄与していると述べている.

さらに事業所の床面積についても分析している.中間区(港,江東,渋谷ほか11区)で特に増加が示された.これは都心一極集中を煽っている懸念があるが,そこの就労者は横ばいであった.したがってそれほど助長はしてないことが明らかになったと述べている.例えば,江東は人が1.5倍だが床が約4倍に増えていた.これについて各区で回帰分析をした.相関係数は0.7でやや低かったものの相関が示された.分布の形状より,線形よりも対数近似の方がベターだったように感じる.

 感想〇

混雑緩和は実感できるレベルとまとめていたが,疑問である.また床面積は助長していないと述べていたが,絶対的には増えているので,課題ではないだろうか.全体としては,同じ目標に向かって様々な指標でアプローチしているのが面白かったが,目新しさには欠けた.個人的には,埼玉・神奈川間を都区内を通過して通学しているので心苦しかった.

  

地域差のあるオフピーク通勤による首都圏の鉄道混雑緩和に関する研究

西山 直輝, 室町 泰徳

都市計画論文集2014 年 49 巻 3 号 p. 849-854

内容

地域差のある時差通勤により鉄道混雑の緩和が計れるかを検討することを目的としている.OD旅客需要を利用者均衡配分で求め,時間的空間的に分析し,地域差とその地域ごとの推奨される時差通勤パターンを求めた.細かい計算としては,前述のとおり3次元的に,既往の田口の研究を参考にしている.これは鉄道利用者の認知所要時間を表す一般化費用と同様のパラメータを用いている.

モデルの再現性を確認するため,まず現状の再現を行った.旅行時間の計算値と実測値について,R2は0.80でいい相関が得られている.なお実測値はセンサスの解答欄の都合,10分単位で誤差が出る.また混雑率も同様に比較した.概ね10%程度の誤差に収まっているものの,上野御徒町間,中野新宿間で計算値が小さく出た.さらに上野御徒町間は良好だったものの,品川川崎間で京浜と東海道で混雑率が50%も異なっており,誤差も増大していた.これはこの計算の都合,考慮できない影響によるものだとしている.しかし上野御徒町間と比べ,緩急の違いがあり,旅行時間の計算の都合により,影響したのではないだろうか.しかしどこも国交省の最低目標の180%を達成している.

そして時差通勤の検討を行った.これは通勤者が前後1時間ずつで自由選択できると仮定している.これにより,検討する混雑で有名な16の区間で混雑率の低下が確認された.特に小田急・田都・東西で50%以上の改善があった.一方,東海道・埼京は低下率が小さく,ソフト面での限界が感じられる.また上野御徒町間は路線ごとの違いが大きくなった.また路線・車内ではなく,新宿駅についても検討している.7時後半のピークが7時前半と8時後半の双峰性にシフトし,バラツキが大きくなり混雑緩和が確認された.

さらにGISとリンクさせ分析している.ODそれぞれのトリップの時間に関し,平均・標準偏差を求め2×2個プロットしている.乗車側より区内は早い出勤,山手線外ではピーク分散が見られた.多摩・川崎や荒川下流付近はバラツキが大きく出た.また降車側より,始業は都心は遅く,郊外は早くといった傾向が見られた.こういった施策を提唱している.

 感想◎

GISで見やすいのがよかった.高崎線は混雑の大きな緩和が見られたが,GISによれば乗車のバラツキはあまり大きく出ておらず不思議だった.ほかにも前述したような細かい点では気になる点がいくつかあった,特に上野東京ラインの影響は気になった.

  

Reinforcement learning approach for coordinated passenger inflow

control of urban rail transit in peak hours

Zhibin Jianga, Wei Fana,b, Wei Liuc, Bingqin Zhud, Jinjing Gu

Transportation Research Part C 88 (2018) 1–16

内容

上海のプラットホームの混雑の入場制限(inflow control)について,相互作用のシミュレーションによる強化学習を用いて分析している.これは混雑のためホームに人が溢れ,安全性が社会問題だからだ.

混雑で待ちが容量を上回るとそのホームに積み残しが発生しさらに次駅でもほとんど乗れなくなる悪循環になる.そのため当駅の混雑と次駅を見越す必要がある.しかしいつどの駅で行うかが難しいので,これを求めることを目的としている.乗車側を考慮すれば十分に思えるが,急ぐ降車客による混雑の悪化などを考慮するため乗降客両者を考慮することとしている.OW制御最適化問題として考えている.

この論文でのモデルは,乗客移動時間チェーンと乗客とサービス施設との間の相互作用を表すために,各状態における乗客の統計的累積数を追跡するとしている.詳細な計算には種々のモデルを用いていた.ここで用いられる強化学習は,期待報酬を最大化する最適制御ポリシーに基づいて,待ちの到着の受動的なEnvironmentの値と捌く能動的なAgentsをサイクルにして,繰り返し計算していくことで求められる.このAgentsではQ-valueという指標を取り入れ,これにより学習するようである.そしてそこにODのデータを入れて分析した.またここでは時空間両者を考えられている.

得られた結果の一例が図のとおりで,青が施策あり赤がなしであり特にピークでの分散が図られていることがわかる.そのため有効性が十分しめされた.

 感想◎

上海でピーク時簡に入場制限するほどの混雑が起きていることが驚きだった.日本でもオリンピック時に行うかもと思った.成長してきた中国の現在の実態であるから,海外でも都市集中が進み全世界共通の課題になるように思った.日本ではピークタイムシフトでソフト的に行うのが一般的だが,このように改札でハード的に行うことも検討する余地があるように感じた.またこの点が中国らしくもあると思った.

強化学習は予備知識がなくモデルも相まって,全体として内容は難しかった.

  

地方都市における公共交通の持続可能な市街地構造に関する研究

武澤 潤, 中出 文平, 松川 寿也, 樋口 秀

都市計画論文集No.45-3,2010.

内容

地方都市のストックや変遷や計画を分析し問題点を明らかにし、公共交通が持続可能な市街地構造への土地利用などの検討提言を目的としている.

対象として,全国の10万都市を人口規模のみに絞って分析した.鉄軌道を維持するには,20万人が望ましく50万人以上であれば費用の面でそれほど困らないだろうと述べている.またDIDと駅(1km圏)の位置関係を分析し,1970で57.6%カバーが,2000は47.6%に減少していることが明らかになった.これはモータリゼーションにより駅から離れた市街地・DIDが拡大したことが原因としている.DID内人口は59.2%から73.2%へ改善して見えるものの,平均人口密度は71.4から56.8人/haに悪化していた.35の廃線都市は20.9%減少し非廃線では12.2%しており,廃線の影響も見られた.また市街化区域のカバー率は1970で41%で,この変化率は比較すると小さかったが、そもそも線引きが甘かったとしている.

地方都市について、各年代で鉄道とバスの割合をクラスタ分析した.札幌・福岡・広島など大きめの都市は鉄道優位で,それらの周りの岡山・姫路・熊本などは2000にバスへシフトしたことが示された.同様に熊谷・太田・足利はバスがより優位になった.絶対数としてはどの年代もバス優位の都市が多かった.盛岡・北関東中心地・金沢・静岡などが例だ.これらの地域のバスは基幹の他本数型から多様なネットワークの少本数型への傾向が見られた.また交通分担率はどこも半分以上が自家用車で新潟69.6が最低だった.

さらに北信越に絞り詳細な考察している.公共交通圏は概ね担保されており廃線などあっても,バス路線の柔軟な対応が行われていることが示された.しかし市街化の誘導は難しいとも述べている.人口密度の推移を分析すると、時間にそって就業地が郊外に指向され、低密な都市となり自動車通勤が促されたと指摘している.都市計画について,担当者のアンケートをし,線引き見直し規制強化は難色示し消極的だった.公共交通活性化は重視しているものの意欲は各都市差があることが明らかになった.高岡や新潟は比較的低く,富山金沢は比較的高く考察している.富山公共交通の沿線外の居住選択が多かった.しかしストック特に鉄軌道が生かされていなかった.しかし拠点集約型による誘導施策や密度設定で意識的だった.金沢は駅南側を中心にバス路線沿線での集積しており,また運行本数も多く,規制にも積極的で意識が高いとまとめている.

 感想〇

バス停の利用圏について分析ごとに半径が異なる点は気になった.富山・金沢は特徴ある街でやはり評価が高かったのは,私もそう思う.

余談

香港からきれいな留学生が2Q限定で配属されたんでモチベになっている次第