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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

地下鉄7号の延伸に関する環境影響評価について良い点と悪い点

1年位前の学部時代の課題だけど

地下鉄7号とは南北線のことで,要は埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線ーSRの延伸について

現在の美園から岩槻を経て蓮田への延伸計画がある

個人的にはそこからカーブして上尾か桶川まで伸ばしてくれって感じだが

市民意見と同様に、まずゼロオプションが示されていないこと、環境特に生態系への影響の評価があまりされていないのが問題である。
しかし東北本線や自動車交通への代替性、大宮や各路線の混雑解消、ネットワーク形成による防災性などの副次的効果などの意義は大きい計画だろう。そのためこれに関する調査をより綿密に行うべきだっただろう。他の項目と同様に既存資料を用いるならばPT(パーソントリップ)調査を行い、あるいはアンケート調査を行う意義も十分にあったものと考えられる。ネットワークとしての部分と重複するが、現在の埼玉高速鉄道埼玉スタジアムのイベント時には、東川口-浦和美園間で非常に混雑する。それに伴い武蔵野線東川口-南浦和間も混雑が激しい。そのため大宮などからの利用者も十分に含まれると考えられる。そのため、来場者のうち県北からの割合なども調査すべきと考えられる。
各種で具体的な数値を出している点は基本的に評価できるが、最も肝心であるB/Cの算出過程と、B/Cそのものの数値が示されていないのが、非常に大きな問題である。少なくとも1.0より大きいのか小さいのか、すなわち赤字か黒字かを明確に資料の本文中に示すべきである。東京新聞の本計画に関する記事を参照したところ、B/Cは時間が経つに連れ0.9、0.8、0.7と減少してしまっている。そのために記載するのを躊躇った可能性もあるが、この数値は示さなければならないものだったと感じる。そしてB/Cの比は、あまり必要なかったと感じる。
その一方でデメリットの環境影響(地質・水質)に関して図を多く用い、また各項目において表でまとめてある点は、わかりやすく示されていて評価できる。特に断面図のイメージは良いと感じた。各案のルートもざっくりと図示されていれば尚良かったと思う。
また中間駅に関する記述が、建設費に関するものと一部に留まり、少なかったように感じる。ルートにより位置が変わり、報告書p.54の図からも住宅密度が低く、そもそも都市計画調整区域なため採算性は低いだろう。しかし、それゆえにしっかりとした検討と記述が必要だったと言えるだろう。同様に蓮田までの延伸についても、少し触れられても良かったのではないかと感じる。
また環境影響評価そのものについては、市民への理解が少ないためか、3つの市民意見からも分かるように、市民参加がなされているとはとても言えない。現状からは、事業者及び行政による積極的な参加への呼びかけが急務と言えるだろう。そもそも日本は政治などを含め、このような活動には消極的で関心も薄く、ノイジーマイノリティが反映されやすくなってしまう問題がある。本制度は概ね良いものだろうが、欧米のものをそのまま用いるのでなく、日本の国民性に合わせてアレンジし運用していくほうが有意義だと考えられる。また分かりやすくまとめられているとはいえ、大人の市民の多くが理解するには難しいだろう。簡易版をまとめたり、より手軽で分かりやすくする努力も行っていたほうが良いと感じた。
また自発的な姿勢は評価されるべきだが、事業者が自ら行うことに本質的な問題があるだろう。第一種事業のような大規模でなくても、企業による倫理観に反するような隠蔽などの問題は後を絶たない。これらも含め、第三者からの働きかけが必要ではないだろうか。

参考文献
東京新聞『費用対効果の達成「難しい」地下鉄7号線延伸 さいたま市 3度目の外部委初会合』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201709/CK2017090602000189.html (2017/12/16最終アクセス)