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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ8:blockchain関連と線引きについて

なんだかんだ違うので二軸になってしまったけど,そもそもタイトルのつけやすさ以外で一軸にする意味もないかなと

Blockchain in Logistics and Supply Chain: A Lean Approach for Designing Real-World Use Cases

GUIDO PERBOLI, STEFANO MUSSO, AND MARIANGELA ROSANO

IEEE Access ( Volume: 6 ) 62018 – 62028,16 October 2018

内容

金融分野以外でのblockchainの研究では,戦略設計を考慮されていない.また食品サプライチェーンについて,透明性確保などのためblockchainが取り入れられたこれまでの研究では有効性を示している.しかしコストなどが考慮されておらず現実的でない.この不足を補い,その側面を示すことを目的としている.物流の課題として,エネルギーや都市交通の解消,モードの接続などがあり,blockchainでの解決が期待されている.

GUEST方法論を用い,制約,情報,目的,ユーザなどを整理して分析を行った.Blockchainでは,客の注文要求と運送業者と小売業者との間の合意に基づいて、倉庫は送達に選択される.トラックが倉庫につくと,バーコードで確認が行われ,誤送や遅延などを防止できる.また生産者,倉庫,運送者,顧客の4者を図にまとめている.ブルウィップ効果とは,上位ほど需要予測が難しさから必要量とのギャップが生じたりすることで,blockchainで全体の情報をまとめることで,上位ほどその影響をより小さくできると述べている.これにより,工場の生産計画や倉庫の在庫に改善が期待される.ただしこれには,各ユーザのシステムへの参加が必須である.またインバウンドの効率化の改善も挙げられている.物流のインバウンドとは,社内で調整するものを指す.KPI(:key performance indicators)は精度向上が期待される.既存の情報を送るEDI(:electronic data interchange)やASN(:advanced shipping notice)などは不要になるとまとめている.一方,短期的に偽造品の懸念があるとしている.

blockchainは、インバウンドプロセスと在庫状況に生産や倉庫のネットワーク全体の視認性を高めることができると述べている.また予測活動と倉庫管理をサポートし、最適化、効率化と速度の点で食品サプライチェーンを改善する。

より実際的な分析も行っている.まずIBMのプラットフォームを利用できるとしている.コストに関しては,種々の導入コストを考え,維持費はAWS(:amazon web service)を考慮しているようである.なおblockchainは公共性の高さが売りだが,ここでは分野で分散管理することに重きをおいている.労働時間も850hが効率化され,最終的に各自1000ユーロ/月で維持できると試算している.また顧客の信頼も得られる利点なども挙げている.

感想〇

思ったより物流寄りで,専門用語の理解が難しく,一覧もなく残念だった.しかしblockchain導入の手引きのようで,その点も参考になったのはよかった.費用の試算は突然出てきて流れがつかめず,またそれぞれの数値が何を表すのか分からなかったのが残念だった.

交通社会におけるコネクティビティ技術の動向

大月 誠

IATSS Review(国際交通安全学会誌)2019 年 43 巻 3 号 p. 128-138

内容

車がネットワークで繋げられるようになり,社会システムに組み込めるようになったことで,コネクテッドカーとしての期待が高まっている.特に社会的需要と個人のニーズのマッチングに期待がある.これらの議論についてまとめている.

インターネットに繋がりこれまでの制御系よりオープンなので,機器の垂直統合的な開発環境はあまり望めない.また冗長性が必須で,セキュリティについても課題が残っている.

日本ではスマートシティの要素として,ダイナミックマップの考えに基づいたデータ共有基盤の検討が進んでいる.またMaaSや民間主体のblockchainカーシェアの期待が軽く述べられている.実現には,情報量とセキュリティを主な課題に挙げている.一方,管理ドメインを一本化しない手法が優位で,新規事業のチャンスではという研究も紹介されている.

災害時に関しては,東日本大震災を受けてITS Japanでは車の位置情報プローブデータを収集して,1週間ほどで道路通行実績情報を提供したことがある.これには,自治体・公団・自動車会社などが情報収集,提供などで関わってはいたが,当時はシステムの合意などができていなかった.しかしITSタスクフォースの精力的な活動で実現したようである.そしてビックデータの可視化,情報連携,支援経路の提供ができたとしている.その後の災害でも利用されたが,豪雨災害では状況が流動的に変化し苦慮し,また西日本豪雨では,被害範囲が広く情報量が膨大で,分散処理が課題になったことも述べられている.

感想〇

blockchain関連の交通系で,日本で唯一ひっかかったので読んだ.災害に関して,安全な都市環境特論で似たような発表をしたので参考にもなった.blockchainの記述は少なかったが,災害情報は公共性・重要性(分散化が望ましい)の高いデータで,様々なステークホルダーが関わっているので,このシステム自体のblockchain化も検討できると思った.また平常時も,自動車がネットにつながることで,自動運転のみならず,様々なシナジーが期待できそうと思った.

相乗り型ライドシェアにおける乗り換え効果

長 晃, 馬 東来, 高原 勇, 大澤 義明

都市計画論文集2018 年 53 巻 3 号 p. 597-602

内容

日本では一種免許からか,ライドシェアは実証実験段階で,まだ黎明期で海外に後れを取っている.実験は2つ行われており,配車型と相乗り型がある.ライドシェアの研究は既に行われているが,乗継を考慮したものはまだなく,その点の検討を行うことを目的としている.

式を用い,理論的に求めている.まずマッチングの成否について,運転者都合を優位の線分都市で確率を求めている.すると成立確率は1/12で通過交通がプラスに働くことが示された.次に簡単な放射状のネットワーク(Y(k=3),*(k=6)型など)を,加重和で求めている.これは山間過疎部を簡易モデルするためである.すると成立確率は1/k^2オーダーで放射の少ない方が成立することが示された.またクロフトン微分方程式でも同様の計算結果が得られた.

そして中心結節点で乗換ることを考慮している.これは(S1)直通可・乗換不可u,(S2)直通不可・乗換可v,(S3)いずれも可wの3つのレベルをマルコフ連鎖モデルで比較している.まずS1とS2を比べると,後背地の長さに依存する待ち回数の増加は緩和され,放射リンク数kの影響は小さく(オーダーが1つ下がる),効果的であることが確認された.S2とS3でもS3の方が効果的なことが数学的に示されたが,図からは限定的なことが分かる.

過疎地域でのライドシェアの推進には,乗継を促すため,拠点を設定するといいだろうとまとめている.

感想△

先週のLazoozから,ライドシェアに興味がわいたので読んでみた.マルコフや微積などの数式を使っていて,流れを追うのは難しかったが,計算結果からの述べられていることは説得力があった.一方,計算をせずとも予想できるものばかりだと思った.ただこれからのライドシェアでは,複雑なネットワークで乗継効果はさらに大きいと思うので,これからに期待したいと思った.また今回は運転手優位だったので,種々の考慮が必要だと思う.

 

公共交通システムの整備水準とモビリティ・ ディバイドの発生状況に関する研究 -ポートランド及び岡山都市圏を対象にして-

吉松 ひかる, 氏原 岳人, 阿部 宏史

交通工学論文集2018 年 4 巻 2 号 p. 1-9

内容

モビリティ・ディバイドを,自動車保有と運転可否で生活スタイルが規定され,格差が生まれることと定義している.その差異を定量分析し,解消の施策を検討することを目的としている.その中で,日本国内の地方都市は似た状況であることから,岡山市と先進的と知られるポートランドとの比較を行うこととしている.どちらも同規模の150万人都市である.

まず地理的な分析を行っている.岡山は鉄道延長が4.6㎞で地方ネットワークとしては短く,バス路線は分かりにくく・不便で・空白地域をカバーできていないと指摘している.ポートランドは,日本の鉄道にあたるLRTが整備され,同様の事業者であるストリートカー・バスが連携して機能しており,支払いの利便性も高いと述べている.さらに都市計画を行うMetroがUGB:都市成長境界線(≒線引き?)をし,土地利用と交通整備にも連携が見られる.

またメインの分析として,サンプルが偏よらないような抽出した大人を対象にアンケートを行っている.これによれば,自動車分担率はポートランドの方が10%ほど高い.なお,各都市で免許と自動車の保有は同様であった.しかし岡山では,交通弱者が市街地に居住地選択をする傾向が見られ,さらに移動に対する総合満足度は比較的低かった.一方,ポートランドの満足度は全体として高く,特に交通弱者のものが高かった.ただし岡山では卵が先か鶏が先かという問題もある.結論として,岡山では移動制約による格差が見られるとまとめ,ポートランドのような公共交通の発展した地域では格差低減に寄与すると締めている.

感想◎

図が多くて見やすく分かりやすかった.MaaSなどにも広く触れているような感じでよかった.元々本でポートランドの良さは知っていたが,ますます魅力に感じた.

補足

pytho.hatenablog.com

 あとお勧めの本

ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる

ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる

 

 

市街化調整区域におけるスプロールの実態からみた現行開発規制の評価
埼玉県におけるケーススタディ

森尾 康治, 金 星坤, 中井 検裕, 斉藤 千尋

都市計画論文集1995 年 30 巻 p. 127-132

内容

市街化調整区域でも例外的な開発の容認により,スプロール化が進んでいる.そこで,調整区域内のスプロール化の実態把握,スプロール化カニズムからと逆線引きからみた現行開発各規制の評価を目的としている.対象地は埼玉県富士見市である.

まず既存宅地制度についてまとめている.これは都道府県ごとに異なり,神奈川より緩いものの静岡より厳しいことが確認された.これと開発許可の県内の推移から,既存宅地がS50から右肩上がりで,いずれも3000件ほどとなっている.なお終端の平成初期は,横ばい傾向に落ち着いている.市街化区域などとこれらを地図上にプロットし確認すると,調整区域深部まで既存宅地の連担要件が侵食していることが確認された.また開発許可は,これでは不可能な飛び地にあり,各地でスプロール化を助長していることが示唆された.なお既存宅地のもう一つの要件の地目条件,1割ほどで原則を外れたものが見られた.既存宅地の用途は自己の住居・業務と記載されているが,現実には共同住宅や工場なども建てられ,建売なども多い.開発許可については,市街化のおそれのないという条件で許可が与えられることが8割でほとんどだが,先述のように実態は異なる.また条文では細かい指定がされているが,実際は弾力的な運用が行われ,これが却ってスプロール化の原因になっていると指摘している.また農振法は農用の青色区域が指定され,保存が図られているが,周囲の白色区域はスプロール化の懸念があり,検討されている.実態はスプロール化が激しく,また青色区域にも及んでいることがあり,抑止する規定がなく,不十分だと指摘している.

本市ではS59に暫定逆線引きが行われた.しかし以来,既存宅地・開発許可が増加している.駅周辺地域が含まれているが,道路が未整備で安全性・利便性に課題があり,今後の市街化区域編入時の面整備への阻害の懸念を挙げている.また調整区域内には住居系用途地域が残っているが,建蔽率容積率を超過した不適格建築物が平均2割ほど存在している.

市と県の担当部署へヒアリングを行ったところ,開発規制と線引きの各主体の建築部局と都市計画部局の間に一貫した共通認識はなく,大きな問題と認識していないことが分かった.筆者は暫定逆線引き地域が保留フレームにあることを活用して,随時市街化区域に編入すべきと提言している.また法律も,一元的な運用体制の確立が肝要と述べている.

感想〇

埼玉の都市計画の問題がわかってよかった.特に荒川周辺の開発は,確かに自分もひどいように感じる.また法律のダメさを実感した.しかし古かったのが残念だった.これまでゼミで読んだ中で,最近の埼玉はひどく言われておらず,改善したのかなと少し期待した.

 

人口減少フレーム下での区域区分定期見直しの実態とあり方に関する研究

田之上 貴紀, 松川 寿也, 佐藤 雄哉, 中出 文平, 樋口 秀

都市計画論文集2015 年 50 巻 3 号 p. 986-991

内容

人口減少下で市街地拡大の妥当性を評価することと,区域区分見直しに対する提言をすることを目的としている.具体的には①将来人口の過大推計,②可住地人口密度減少,③非可住地の定義の変更が予想されている.

対象地は既往研究を参考に,地方都市78か所としている.これらの線引きについて,大規模な逆線引きは行われておらず,多くが市街化区域の方針は拡大で,一部は維持・縮小と分類された.また人口推計については,増加予想と減少予想が半々だった.表にまとめており,人口減少を予想しながら市街化拡大を行うのは金沢圏,長野市和歌山市など31か所に及んだ.これらと減少予想で市街地維持の佐賀市を加えた4都市について,詳細な分析を行っている.

佐賀市は,実人口が推計を上回っている.市街化区域の残存農地も開発が進行しており,逆線引きの余地はほぼないと述べている.長野市は人口が推計と同値で,市が市街化区域に新たに編入した地区は既に大部分が市街化している.これらより市街地拡大は概ね妥当と評価している.

金沢圏と和歌山市は,逆に推計が実人口を上回っている.金沢は新幹線を見込み楽観的な予測で,また可住地人口密度の実績値は定期見直しの度に減少している.そのため先述の①,②の手法を用い行っていると考察している.また市街化区域の残存農地率は小さいが,大規模なものが残っており,石川県は逆線引きを検討している.和歌山市は大規模な住宅地を編入することで拡大となっている.残存農地率は大きいが,低密度でも居住者がいるため,逆線引きには慎重である.逆線引きの難しさの典型例がみられた.しかし逆線引きの必要性を指摘している.そして金沢などでは,市街化を拡大するために過大推計を行っているのではないかと指摘している.あるいは市街地拡大が不適切だと指摘している.このような過大推計では,今後,新市街地に充てる人口を確保できないと指摘している.また新市街地は順調に宅地化され,スプロール化が懸念される.地方としてだけでなく人口の確保が課題になると述べている.これらの地域は結果的に人口が多く集まっているように見えるが,可住地人口密度などどこかに計画面の課題を抱えていると考察している.地方の都市であっても,人口減少を見越したフレーム設定を行うべきだとまとめている.

感想〇

そもそもなぜ市街地拡大をしているのか,はじめは疑問だったが,地域により様々な事情があることがわかった.ほかでは評価されている金沢を,こういった側面から指摘するのは面白かった.裏を返せば,新幹線に胡坐をかいていたとも考えられるのかなと思った.