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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ10:文京区プロポーザル関連でプロセスなど

都市施設整備における利害調整に着目した合意形成方法に関する考察

室田 昌子

都市計画論文集2003 年 38.2 巻 p. 10-15

内容

合意形成は理念的合意と利害的な合意に分けられる.これまで阻害要因分析やWSの役割の分析などが行われてきた.一方,利害的な合意形成を明示的に着目した研究はない.こうしたものとして,便益帰着構成表・連関表などが挙げられる.そこで連関表により,定性的に利害調整を分析することを目的としている.

事例として,目黒区八雲の複合型都市施設整備を取り上げている.情報は議事録などを用いた.ここは周辺に低層住専も含む住居系地域である.大学移転跡地で,区内で便益を内包できる,土地の権利問題が起こらない易しい条件である.

分析項目としては,施設利用,生活環境,地域経済などを挙げ,主体の事業者,利用者,住民(影響/納税)などを挙げ,連関表により±で分析している.商業者らは経済振興による期待が大きい一方,環境や増税から各住民はネガティブな面が強いなどとまとめられている.当初は清掃工場が計画されたが,強い反対からのアンケートを踏まえ,公共系施設へシフトした.しかし住宅地に不適などとして住民との対立してしまった.基本計画は+の受益者を揃えて協議が行われ決定された.そのため,-を含めてないそもそもの利害調整体系が悪かったと述べている.また決定後に文章で広報され,住民の理解や参画が進まなかった点も指摘している.そのため,決定後に多くの反対意見が出された.ここでは反対派(区域居住者・地権者)が修正代替案を出した.基本計画が変更されたが,反対派は不十分とし,懇談会を経,基本計画がなんとか合意された.基本計画案の住民説明でも小委員会の議論が無視され,住民から反対を受け混乱した.その後,反対派は強硬派と穏健派に分離し,総数は減少した.

利害調整の結果としては,計画が一部縮小されたことでプラスが縮小し,マイナス面の削減がそれほど進まず,工期延長のコスト増でむしろマイナスになってしまったと分析している.設計段階より効果的なはずだが直結はせず,精神面の補助が主だろうと考察している.

またこれに際し周辺整備も検討された.一体整備でより効果を見込めるが,これまでの地権者との関係悪化もあり困難を極めた.

 

感想◎

文京区MPの関連で.反対派の分断・減少は実現できたポジティブなものなのか,議論に疲れたネガティブなものか気になった.都市計画プロセスはやはり,トップダウンではなくボトムアップはが望ましいのだろうなと思った.ポートランドとかはそういう感じらしい.

 

 

幹線道路計画の計画プロセスと住民参加 イギリスの事例

原田 昇

都市計画論文集1997 年 32 巻 p. 559-564

内容

イギリスでも日本同様にモータリゼーションが進んだことで道路整備が課題となり環状線が注目された.1990sに環境と財政にも考慮した見方が重要となる中で,伝統的な幹線道路の住民参加を把握し事例研究している.

まず行政命令としては,環境大臣と共同で行われる.住民参加は義務ではないが慣例的な市民協議(public consultation)と義務の公聴会(public inquiry)が行われる.前者は住民の意見収集として技術的に数本の経路が決められ,それが公開されアンケートが行われる.資料としてパンフレット(consultation documents)が用意される.後者は「交通大臣と環境大臣に道路計画に対する反対の質と重みを知らしめること」と説明される.Inspectorは反対意見を考慮しまとめての提言が役割である.ここで議論対象は各命令に関するもので事業の必要性や金額は含まない.これら2段階プロセスにより大きな反対の芽を潰せ,プロセスが迅速化するものと述べられている.しかし実際は反対が強まり議論や分析に時間がかかったり,本来含まれない公聴会まで侵食されたり,うまくいかない懸念もある.ただし公聴会まで進んだ命令が撤回されることは稀で評価できるとしている.更なる迅速化へ4つの施策が行われた.①優先事業のピックアップ,②公聴会の改定による時間浪費削減,③計画立案と計画実施・維持管理を分離し検討事項を絞る,④関連者の円卓議論の導入.

事例として,herefold bypassを挙げている.これはinspectorが環境より命令を却下したもので,結果的に概ねまとまった賛同を得られ成功だったとまとめている.円卓導入に政府は積極的だが,ここでは環境の比重が高くなり,費用負担のあり方を促進していく必要性を指摘している.また目的の達成や住民参加は良いが,合意付加価値や資源の活用といった点,広域的検討,そして経済成長と道路整備の関連などが課題として挙げている.

別にclift lane改良を挙げている.現道拡幅と南北のバイパスの3案が挙げられた.展示会は通常通り5%ほどの住民参加で,アンケートは14.6%だった.ここで自身の地域でない経路を選択する傾向が明確に見られた.支持としては北と現道で割れ,現道は次点ながら反対が比較的少なく,現道が選択されたと考察している.ただし景観に対する不安の記述が多く,半地下による対応などが行われた.公聴会では廃案が劣っている指摘のための分析が行われた.結果として反対意見は交通安全や住民と資産に関するものが多く寄せられた.時間をかけ形成されたプロセスは論点整理などで優れているとまとめている.

感想◎

イギリスに行くこともかねつつ.システムとしてよくできていると思うし,急がば回れで早くからのボトムアップを促すのが大切だと思った.

 

複数の環状路をもつ円盤都市における平均移動距離と流動量

藤田 学洋, 鈴木 勉

都市計画論文集2003 年 38.3 巻 p. 421-426

内容

環状線は計画的に作られており,その果たす役割を明らかにするため様々行われてきた.しかし環状線が複数のものは,人口分布をべき関数で解を扱ったPearceを除きない.そこで複数環状線を持つ円盤都市(r=1)で平均移動距離を求めることを目的としている.

方法としてはODの座標を極座標で考えて,環状線の整備状況を変えつつ移動距離を求めている.ここで経路は放射のみS0と環状利用S1に分けられ,環状線の本数Snでも変わる.以下はその模式図である.出発点が変わらなければS0とS1の境界は変わらず,下図でrが外へ移ることから,より郊外のODで効果的であろうということがうかがえる.

1環状のネットワークでは,r=0.817より外側の建設は,都市の全員に不利なことが平均移動の計算より導かれた.また環状の本数で移動距離が1.333(0),1.078(1),1.040(2),1.026(3),…,0.905(直線)と漸近した.さらに最適配置はr=0.5~0.6で環状線本数が密になることが示された.

さらにSiの形状は本数とODで異なる.そこで環状線の流動量を分析している.方法として微小領域の積分で求まるようである.結果として4本以上で前述と同様の中間部にピークが現れ合致する.東京区部に適用したところ環7の混雑と合致することが確認され,モデルの整合性を主張している.ただし欠けた道もあり,その点はモデルの修正で要対応としている.

まとめとして環状線整備の妥当性を主張する一方,渋滞回避などもあり現実的な再現を課題としている.

感想〇

環3ということで.ゴリゴリの数式系で難しかったが,シンプルなモデルで良かった.ただ考慮する環状線は都合を合わせたような気がしなくもない.

 

落合崖線上における緑地の現況とその質に関する研究
東京都新宿区立おとめ山公園を対象として

吉田 葵, 片桐 由希子, 石川 幹子

都市計画論文集2011 年 46 巻 3 号 p. 637-642

内容

都市に残る緑としては,開発しづらかった傾斜地・崖が挙げられる.これらは一体的に残りエコロジカル・ネットワークとしての価値が高い.そこで落合崖線(新宿-江戸川橋)に着目し,植生を把握して緑の保全・向上の基礎的知見を得ることを目的としている.

まずリモセンと明治42年の地図などを参考に江戸期から現在までの都市の植生・土地利用の経時的変化を分析した.明治は崖線に沿って連続した緑があったが,現在は不連続になってしまっていることが明らかになった.残っているのはやはり公園や社寺,学校である.主に現在の公園は,将軍家や大名の所有する土地であった.その後明治で邸宅地となり,庭園として取り込まれた.これまでを分類すると,庭園期,荒廃期,保護運動期,再生期としている.おとめ山公園の土地は1939(S14)に相馬家の移転で売却され所有者が移り管理が放棄され荒廃してしまった.その後ジャーナリストのPRから市民の陳情などから,S39に大蔵省管轄となり,公園としてS41都市計画決定,S44開園となり,現在は風致公園などとし再生が図られている.

また既存林として,江戸川公園,新江戸川公園,おとめ山公園の3点で植物社会学的手法を適用し分析を行った.植生として常緑樹が70%と多くを占め,草本層の被度が低く,自然での更新は困難と分析している.また土地としては,公園の62%が急斜面地であった.裸地は18%だった.湧水帯から高くなるにつれ,シダ,裸地,草本層,高木の実生と区分していた.また公園ごとも経緯として公園化が早かった江戸川ではその公園植栽の特徴が強く見られ,放棄されたおとめ山では落葉樹二次林が見られるなど相違もあった.このような人為的な手が加えられた経緯から,植物種多様性が下がり生態系機能の質も低下していると考察しまとめている.

感想△

都市計画論文集から文京区関連の緑についてピックアップしたが,内容としては予想以上に植物寄りでその専門用語も多く難しく,求めていた情報より遠い感じだった.しかし東京の生態系は重要だと思い,壊されているという現状の分析結果があったので,都全体の主体的取り組みが急務だと思った.生活環境やヒートアイランド対策のみならず.

 

宇都宮市LRT計画における市民意識変容と合意形成手法に関する研究

伊藤 将司, 森本 章倫

都市計画論文集2010 年 45.3 巻 p. 847-852

内容

LRT導入が訴えられているが現実問題として各主体の合意形成や費用負担などから実現が難航している.その中,宇都宮の計画に焦点を置き,LRT導入の合意形成に向けた検討の基礎的知見を得ることを目的としている.既往研究では従来の道路整備とは異なる手法の必要性や,トップダウンと情報公開についての指摘のものなどがある.本研究では賛否態度毎の意識変容の検討し,政策プロセスを整理した点が特徴としている.

3つのフェーズに大別し,混雑対策としてのLRT妥当性(93-02),導入必要性(03-06),基幹公共交通としての妥当性(07-)を論点としていった.初めの段階は立場明確の主体は,交通事業者,地元推進/反対団体に限られ,少なかった.今後の本格化が見込まれている.既往研究では,情報公開により次第に信頼で建設的なものが可能を示されている.そして地域のコミュニティの継続的な向上も示されている.これより今後のフェーズ4では適切な合意形成手法を提案し,市民個々人が適切に賛否判断できる政策プロセスに移っていくと述べている.

取組としてビデオによるイメージ提供とその前後でアンケート(n=109)を取っている.内容としては,LRT導入した社会での1日の生活を例示したものであった.事前のLRT事業の認知度は餃子祭りに際して行われて75%ほどだった.認知による賛否態度には5%有意差があり,中立立場が減っていた.そのためこれが意思決定を促進できるとしている.詳細については利便性・活性化・街のブランドがより重要だろうと分析していた.媒体としても,新聞に依れば,より立場が明確化していた.ビデオにより利便性は有意な変化が見られたが,動画中にあまりアピールされなかった環境・活性化などへの寄与・変化は少なかった.またこれにより,3割に賛否の変化があった.意思決定はまだ不安定で,センシティブな状況だろうと考察している.また前後どちらもどちらともいえないというのは10人にとどまり,何かしらの立場があるのが見られた.

これらからステップとして,まず広く情報提供を行い,次に中立的な情報を発信し,事業方向性を議論していく流れが大切だろうとまとめている.最後に少しバスとの比較をしている.

感想◎

実は森本先生とは高専の共同ゼミ合宿でお世話になっていて面白く読ませてもらった.LRTでもプロセスに着目していてちょうどよかった.やはりボトムアップ的態度が重要だと思った.

 

Engineering future liveable, resilient, sustainable cities using foresight

Chris DF Rogers, Eur Ing, BSc, PhD, CEng, MICE, MCIHT

Proceedings of the Institution of Civil Engineers Volume 171 Issue 6, 11 2018, pp. 3-9

内容

遠い未来とは,現在の予測などに頼れない50年よりも先を一般には示す.そして将来の予測には,先見の明として現状の分析が重要である.現在,5のパイロット都市の分析が行われ,社会学環境学など様々にアプローチされ,レジリエンスを考えながらシームレスな点が先駆的なものである.

まず都市計画の専門家に,将来に関する質問がされた.例えば,「生活で直面するだろう課題」,「50年後のリスク・不確実性」などが挙がった.この討議を記録しクラスター化などがされた.ここで行政に将来の指針を提供することを目的として,包括的な情報基盤集めのプロジェクトが立ち上がった.専門家8人にチームが付随する形である.そして20の都市を訪問しWSなどを行った.委託含め集まった情報は政府のサイトで公開された.分野はインフラから生態系,旅行など多岐にわたる.そこでテーマが住み方,都市経済,統治構造,都市の代謝,生態系,都市形態に大別された.

現在の慣行ではなく既往研究による様々な極端なシナリオをベースに考えられた.そこでiBUILD法が用いられた.行われる施策に対し,意図された利益を追い,そのための条件を求めるとのことである.この条件が欠けていると脆弱と判断され再設計されるようなものである.反復により洗練される.これにより不確実性やリスクの軽減が図られる.さらにそれと並行して,正式(立法,規制)と非公式(市民態度,社会規範)からシステムが設計される.そして透明性が重要な因子であり,現在土木工学では透明で再現性のあるプロセスは提供できていないとしている.またこれが方法を意思決定補助として,責任が残されている点が期待できるとしている.

感想〇

イギリスの土木学会の人気のものだったようで選んでみた.WSの内容に近いものを感じて面白かった.ただ抽象的で具体感がなくて難しかった.この手法のベースとしては世界中で適応できるだろうということだったので,相互発達を期待できるのかなとも思った.

 

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