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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

Homework: Contextual Urban Design: U.S. Experience & Perspectives

 

Week3

Thursday, October 3, 2019

contents

 

Bacon, Edmund, N. Design of Cities. New York: Viking Press, 1967. (Pages 106-127) (REQ.)

Sitte, Camillo. “The Meager and Unimaginative Character of Modern City Plans” and “Artistic Limitations of Modern City Planning.” from City Planning According to Artistic Principles (1898) in The Urban Design Reader, 2nd Ed. Michael Larice and Elizabeth Macdonald, eds. New York: Routledge,2013. (OPT.)

 

日本の特に東京では土地が足りずオープンスペースは貴重なので,より丁寧な整備が必要だと感じる.象徴的なランドマークとスペースの共存としては,東京においても東京タワーや六本木ヒルズなどが挙げられるだろうが,広範に有機的なネットワークを形成しているものは少なく,明治神宮と丸の内周辺しか思い当たらない.私はこの夏にロンドンへ短期の留学へ行っていたが,そこではここに挙げられているような空間が散見された.そもそも公園や建物のアプローチなどとしてオープンスペースが多く存在し,良好な都市環境が形成されていた.St Paul's Cathedral,Trafalgar Square,Palace of Buckinghamの周辺などが好例だ.特に前者は建築的にも優れていた.フィレンツェの例ほどは優れていないだろうが,近くにテムズ川も流れておりかなり似ているように感じた.建物としては,フィレンツェの大聖堂と同様,キリスト教の中心的な建物として心理的に,当時随一の高さであったことから物理的・視覚的ランドマークとして優れていたと考えられる.見学する中で,建物の内部の歴史は学んだが,外部との繋がりはあまりコンテンツがなかったので,機会を見つけてこれについてより勉強したいと思う.いわばこれを中心に街が作られていったというのはすごいと思う.

私は土木を専攻してきて,建築にはあまり明るくないが,p.109のスケッチは各建物が違う構造をしつつも根底的なものの親和性を感じ,また空いた空間に過不足なく像が配置されることで物寂しさもなく雑然とした印象も与えず,ただの四角い空間でありながら殺風景でなく全体としての調和を感じる.左の経緯のパースからもそこまでの軌跡を見ることができ参考になる.設計や建設のタイミングが異なりつつも,こういう形へ発展できたのは当時のステークホルダーのセンスの良さゆえになせる技だと思う.

次のページでは,道路ネットワークと絡めた話であり,一重に配置と言ってもその奥深さに驚いた.像の背景となる建物や,お互いの位置する場所による相互作用による人の流動の促進,合流地点など計算が綿密すぎて,設計者の技量に驚くばかりである.現在のコンピュータの計算をもってしても難しい課題で,話は逸れるがこの分野へのAIの浸透は遠い話になりそうだと強く思った.日本においても似た概念として風水というものがあるが,そうした都市の空間配置のエピソードは聞いたことがなく廃れてしまったものと考えられる.

また既存のルネッサンスファサードとの調和の重要性というのは,どこでもいつでも当てはまるものだと思う.日本の代表的な風致地域の京都では,既存の低層密集木造の街並みに合わせて開発時に色や高さの規制が厳しくかけられている.ただこうした深い話を聞いてしまうと,これすら安易で安直なような印象もある.経済活動とのトレードオフの部分でもあるが,材質などによりこだわる余地もあるのではないかと思う.経済活動といえば,日本においてはしばしば文化や自然の保護が軽視され,経済活動が優先されてきたように感じる.よく言えば国民性の1つなのかもしれないが,より調和的・共生的な視点・マインドが必要なのではないかと思った.

大聖堂のドームを焦点として周りの広場の空間を構成するのもすごいと思った.本校の真田先生の講義で景観においては,モノの見上げる角度や壁の距離と閉塞感の関連について聞いたが,これらを包括的に満たしている手腕はすごいと思う.その後のページでは,消失点などについて科学・数学的アプローチの経緯が記されており,こうした美術的な建築との分野横断的インスピレーション・イノベーションがいつの世も重要なのだと思う.しかしこれを裏付けるために,いわば計画を進めるために資料として現代におけるCGであろうHeemskerkのパースが用意されているのは,今日に近く感じるものがあってよかった.また矢印の空間が貫かれるように開けられている図も明示的でよかった.おそらく1500年ごろにおいても,現代と同様に設計の発注やコンペが行われ,設計者は分かりやすい資料を用意し,地権者らに許可を得ていたのは同様なようで親近感も感じた.しかしやはり知的蓄積が基礎として欠かせないとのことで,今後より研さんしようと思う.

ランドマークというと高いものを想像しがちだが,星形の舗装のパターンというのも面白く,そうした地面にもありなのだろうなと新発見だった.しかしこれには,広場としての広大の土地のみならず,過不足ないスペースが必要で,その調整は非常に難しかったと想像される.ちょうど星形として類似したようなものに日本は北海道の五稜郭がある.美的感覚ではなく軍事的な合理性からの設計ではあったが,結果的に日本にもこうしたものが残っているのはやはり貴重なものだと思う.フィレンツェは街中で,五稜郭では空間の広さと戦時中のタイムスケジュールの中から,それぞれよく成し遂げたものだと感嘆してしまう.ただフィレンツェも計画は長期に及んでおり,やはりこの段階でどこまで綿密に構想できるかが重要なのだと思う.そしてこうした成果物と,残りの空間での適切な成果物がきちんと調和した街並みを形成しているのは,ヨーロッパの羨ましい点である.アメリカは建築的な歴史が浅く,日本では地震国で建物の寿命が短いのがネックである.しかし現代のコンクリート建築はそうしたポテンシャルを秘めているので,注意が必要である.力学的な制約はかなり解消されたが,残りうるという点でライフサイクルのあり方を詳細に検討しなければならない.しかし日本のほとんどの構想コンクリート構造物において,こうした配慮がされているとは思えない.これからでも既存のストックの利用含め,調和をとらなければならない.大丸有エリアや先生の言っていたみなとみらいは好例だと思う.渋谷などは混とんとしていて不協和音的で,整然としているとは到底言えない.しかし一方であそこはあそこで,そういった個性を持っている.ストックとして,あの土地利用をポジティブに活用していくのが重要だろう.

また建築分野の大きなスケールの潮流として,内部の設計から外部に目が向けられるようになった経緯も勉強になった.恐らく地権者重視から,街との共生性が重視されるように価値観が移り変わった―パラダイムシフト―のためだと考えられる.