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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ20:ゼロエミッションの可能性

Life-cycle implications of hydrogen fuel cell electric vehicle technology for medium- and heavy-duty trucks

Dong-Yeon Lee, Amgad Elgowainy, Andrew Kotz, Ram Vijayagopal, Jason Marcinkoski

Journal of Power Sources Volume 393, 31 July 2018, Pages 217-229

内容

環境問題から中型・大型トラックのFCET(Hydrogen fuel cell electric trucks)の導入の検討をした.現状ではBEV($0.1/kWh)よりも高価で$0.45kWh($15/kgH2).ただし規模の経済と水素ステーションの活用で低減されると予想されている.さらに環境のみならず,航続距離と補給の早さがメリットである.実際は車重とエネルギー構成で分類でき,明確な分類はないが,バッテリーと燃料電池それぞれ優位なものに大別できる.

現状のFCVは150~200mileを350bar(=e5Pa)の圧縮水素ガスで用いられている.大型転用には容積で懸念がある.ただし米のMDVの半分は短く200mile/日未満である.これは改善できるが発電時の負荷の考慮が必要で,LCA評価を目的にWTWを適用した.なおFCETは影響の割にNational Petroleum Council reportでも言及されてない.方法はGHG排出などを調整済みEPA/NHTSAで車種・地域ごとに計算した.特に地域はEVが気候の影響を受けやすい点を考慮した.また積荷含む走行特性も反映した.ここから燃費などが得られる.そしてWTWとして,地域ごとの発電を考慮した.またガスと液化を考えた.

結果として,ディーゼル比でWTW化石燃料削減量は18~34%でバラついた.これは運転特性がある.一般的なMDVは高速道路の運転が多く12%に留まる.一方,LCVや8bクラスは高い削減率だった.LC大気汚染については,VOCで37〜65%,COで49〜77%,NOxで62〜83%,PM10で19〜43%,PM2.5で27〜44%で削減だった.しかしSOxのみ発電に際し増加に転じた.これらの利点はいずれの地域でも可能と述べている.そして西側WECC地域では電化の環境改善が最高で,全体としても改善の方向だった.しかし石炭などの比率の高いRFC地域では悪化となった.

最後の章ではそれぞれの技術進歩の可能性を検討した.主にディーゼルの熱効率改善と水素精製の比較だ.水素についてはPVによる環境の大きな改善が検討に含まれた.そのためGHG86%減というFCETの環境性が顕著に示された.一方熱効率は20%程度の改善と見られている.また回生を利用できない.そのため車種によらずPVによるFCETの利点が強く示された.また比較の結果,液化がよりよい.まずは一次エネルギーを石油からLNGに転換すべきとまとめている.

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感想◎

なんだかんだ読んでなかったWTWが読めてよかった.まさかのPVへの言及も含まれており非常に良かった.ただ米のPVの可能性の言及はあまりなかった.広い車種が見られていたのもよかった.輸送部門のエネルギー革命は明るいと思った.

Solar photovoltaic capacity demand for a sustainable transport sector to fulfil the Paris Agreement by 2050

Christian Breyer, Siavash Khalili, Dmitrii Bogdanov

Volume27, Issue11 Special Issue: EU PVSEC Papers November 2019 Pages 978-989

内容

パリ協定を満たすため,難しい分野を除き,輸送含め今世紀半ばまでにゼロエミッションを達成しなければならない.発電部門は再エネでの実現可能性が示され,コスト面では却って安くなるとまで試算された.輸送も海路・空路は難しいものの,陸路は完全な電化の実現可能性が高い.再エネを組み合わせれば,概ね達成でき世界中を対象にこれを検討した.

各モードの旅客/貨物について検討した.そこで車両台数と需要データをリンクさせ,エネルギー需要に変換した.さらにこれを100%という制約条件の再エネ(PV,風力のみ)電力と比較した.具体的には,線形最適化に基づくLUTエネルギーシステム遷移モデリングツールを用いた.そして発電・蓄電技術,財政制約,設置制約を考慮した.これを経時的に変え,精度・信頼性を担保した.PtG効率は水素で84%,CH4で57%とし,これらを空路・海路でも用いると想定した.

そして結果では,主に道路輸送が電化されたため,需要が急増した(461,000→120740億p-km,12710→321,600億t-km)にも関わらず,輸送部門のエネルギー需要は32500TWhで安定化した.経緯として小型から大きな車種に移るとされた.特にアジア・中国の貢献が大きい.他には航空でも,0.545kWh/p-km(2015,灯油)から0.141kWh/p-km(2050,電気)の改善が見られた.また将来は合成燃料の貿易・競争により,さらに値段が下がるのではないかと述べている.最終的な輸送部門の燃料ミックスは,電力(26%)、水素(22%)、メタン(8%)、およびFT燃料(44%)となった.

14%の輸送損失を考慮し,利用可能なリソースは,既に発電部門のものと想定した.2030年以降,輸送部門よりPV需要が促されることが示された.2050年の持続可能なエネルギーシステムの累積PV容量は約80TWpと見積もった.そして一次エネルギー需要の54%を占めると述べている.またPVの位置にも言及され,9つの分類のうち,アジア:中・印の周辺が支配的と述べているが,総計しても1/4ほどで世界中に分散したものと考えられる.これはCO2DACを想定した.これにより,PV市場もアジアに軸足が移ると推測した.

まとめとして,実現可能性があると示しつつ,現状が後れを取っていることを指摘している.しかし思いのほか,あまり悲観的には捉えていないようである.

 

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感想△

世界規模であり詳細な検討が少なかった.日本においてPVと風力で賄いきれるとはさすがに思えない.土地,予算の検討がもう少し入っていて欲しかった.

蛇足

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https://www.bcg.com/documents/file36615.pdf