Land use
Rolf Pendall, Jonathan Martin, and William Fulton. August 2002. Holding the Line: Urban Containment in The United States. https://www.brookings.edu/research/holding-the-line-urban-containment-in-the-united-states/ (pp. 2-17 and pp. 29-39) (REQ.)
Fulton, Chapter 11, “Growth Management and Smart Growth” pp. 225-46 (OPT.)
都市の開発抑制として,日本では市街化調整区域がある.これは1968年の都市計画法の改正で導入された.ただし同時に開発許可も含まれた.そのため日本では概ね失敗したように感じる.特に都心への通勤圏内は好ましくない状況で,埼玉がその筆頭だろう.そうした研究結果も下記のように示されている.他にも,例えば,見沼田んぼなどの荒川周辺は川沿いで危険ではあり,また都心近郊で数少ないまとまった原風景の残る親水地域だったが,開発圧力を強く受けている.開発許可が抜け穴になったことが一因でこれも示されている.
その点,ULL(:urban limit line)は比較して面白いと思った.線引きに強い力を付与(インフラを整備しない方針)し,地権的,すなわち物理的にも遮断されているのが素晴らしい.日本では,下記の参考に示すように,線引きを定めてもそこから隣地として漏れ出してしまう問題があった.またこのようなものは日本ではこれのみだが,複数の選択肢(UGB: urban growth boundary ,USB: urban service boundary)があるのも良い.日本全国に線引きをしようとしても,都市部と地方部でその表す意味は大きく異なる.運用上の柔軟性をもっと考慮すべきだったろう.ただアメリカにおいても,市町村レベルの小さなスケールでは苦慮しているのは興味深い.しかし日米では,上位計画のリーダシップと権限に違いがあると思う.日本においては,上位の都道府県マスタープランは参照する程度で連携はとれていない.
とはいえ,7ページによれば,アメリカでも上位計画ではやはり詳細は決められていないようである.また西部で例外的にルールを定めずというのは,これまでの講義課題で感じたプロセス重視と異なり意外だった.さらに,ここでの"growth management" or "smart growth"は面白い言い回しだ.こうした都市の抑制として,日本では人口減少を見据え縮退としての,コンパクトシティが注目されていた.最近では導入が思うように進まず足踏みをしている.こうした分析も下記のように行われており非常に興味深い.要旨は,人口減少に応じ市街化区域は縮めるべきだし,そうでなくてもコンパクトシティを考慮すれば縮めた方が持続可能的であるが,都心から少し離れたような地域では,依然として市街化地域の拡大が進み非常に問題である.ここに書かれたアメリカのインセンティブや有機的な法改正は,日本への導入を検討すべきだろう.
29ページからは都市の抑制の影響が検討されているのも面白い.日本においては,多くは現況の土地利用に合わせて土地利用規制などを与えてきたため,抑制が土地に影響を与えるというよりは,土地が抑制に影響を与えるという逆の構図が実態だったためだ.しかしアメリカのそうした政策において,50万戸もの建物が抑制されたのはすごいと思う.そして研究において,これが関連する密度に関する法律の影響だったというのは驚きだ.日本ではこうした政策評価のような研究はタブー視され,少ないように感じる.しかし学官での本来的な関係性として非常に重要だろう.また日本において密度規制に類似した高さ規制も形骸化している.東京都心こそ高需要なため効果を発揮しているが,地方都市の商業地域などは持て余している.そのため様々な高さのビルが混在し,コンテキストとしても良好な環境が築けていない.低密な都市では,これを集中させることも必要だろう.また都心部においても,高さ規制を厳しくし,CSRなどを促すべきだろう.
また強い土地規制が地下価格を上げないという結果は意外だ.これも日本に導入したいが,市街化区域外になる住民から反対を受けるのは明らかだ.ポートランドはneighborhood associationのような仕組みが整っている背景がある.日本でも町内会などは辛うじて残っており,希薄な都心でもマンションの自治会などがあるので,それらを通して草の根的にボトムアップで改善に挑むしかないだろう.
Context urabn design
Walters, David. Designing Community: Charrettes, Masterplans and Form-Based Codes. Oxford, UK: Architectural Press, 2007. (Chapter 6: “New Urbanism and Neighborhoods”) (REQ.)
Charter of the New Urbanism (https://www.cnu.org/who-we-are/charter-new-urbanism) – also available in PDF on course website. (REQ.)
New urbanismにおいてまず中央都市への投資を廃止すると書かれているのは興味深い.日本でも地方にカネを回そうという意識はあるように感じるが,実際は都心に集中している.地方は人口が減少し税収が減る中,高齢化により福祉負担が増大し苦境に立たされ,今後さらなる苦境に立たされるだろう.一方,都心を見れば,羽田・成田空港の各種アクセス(新線,滑走路,発着数)の強化や大阪万博・IR,常盤橋・日本橋・渋谷の再開発で投資が行われている.前者はインバウンドマーケティングとしての国策だが,後者は民間主導なのが特徴的だ.民間主導ではCSRがあるとはいえ,利益が得られなければ誰も行わない.企業は冷ややかに地方の可能性を切り捨てている.そのため国による強いリーダーシップが必要だ.具体的な箇条書きにおいて,都会の自然への脆弱性について述べられ,これは日本で顕著だ.そのために都心で莫大なインフラ投資(渋谷の大規模地下貯水池,首都圏外郭放水路など)が行われている側面もある.また町中がコンクリートで覆われヒートアイランド現象を促し,自然は身近でなく,摩天楼に集中することで通勤混雑もひどい.そのためやはり分散型の都市を目指さなければならない.具体的には地域によって法人税を追加・緩和するなどの経済的インセンティブを含めた強制力の強い手を講じるべきだろう.これはこの問題が都市の持続可能性という面において,非常に重大な問題であるためだ.
また地方都市も嘆いてばかりではいられない.観光客のみならず企業や若者を呼び込める総合的に魅力的なまちづくりを強く意識すべきだ.そこで自動車依存社会からの脱却が重要だ.これはそこに住む高齢者の救済にもなり汎用性がある.ただしインフラ投資が先行する特性上難しい.より実際的な費用便益評価システム(例えば社会貢献性に関する項)の拡張・開発と,積極的に支援する国の姿勢が重要だ.前者はリスク回避のためにも重要な課題だ.
最後の項目では,まず安全については災害国日本において切実だ.現状も木造密集地の防火性や路地のアクセス性の課題が指摘されている.この点は地域の歴史的背景の保守よりも優先されるべきだ.またそのための広々とした空間は隣人との交流促進に資する.全体としてSDGsみたいで面白かった.
Waltersについては,まずデザイナーとの継続なまちづくりが斬新だと思う.日本はデザイナーにそこまで求めてられていないだろうし,そうした人材もあまりいないだろう.これはどこでも画一的な都市になってしまう一因と考えられる.さらに日本のビルは,清掃の作業性重視で四角いものが多く,個性的なポストモダンが少ない点も指摘できる.
取り組みとして学生に現実すなわち採算性を考慮したプログラムを行ったのは,興味深くうらやましい.学生の頃はどうしても表面的なものを重視しがちだと思う.それがうまくいきているのだろう.敢えてフレッシュで新しい風を取り込んでいる姿勢も良いと思う.さらにこれが多様な顧客のニーズに応えることに繋がるのも面白い.
そして新都市主義として,多様性は重要になると考えられ,それに対し有効的だ.ただ書かれているようにこれは複雑化を生み,難しくなるだろう.コンパクトシティはかなり流行ったが,こうした画一的な対策でなく,環境や持続可能性を地域ごとに本質的に考えていく必要があるだろう.これは流行りのAIも苦手な分野であり,経験や造形の深いノウハウ・経験のある建築家やデベロッパーがより求められるだろう.そして従属的なプロジェクト・リーダの求心力がプロセスを推し進めていけるだろう.ただし能力任せにするのではなく,アーカイブや自治体の人材サポートなどのバックアップも同様に重要だろう.
最後に
他の全体のまとめとして提出用のリンクもせっかくなので載せておく
ここからが今回の目玉といってもいいかな
https://t.co/gxElkAAZvl
— AOKI (@aochan_0119) 2019年11月22日
クソ(しんどい)レポートを錬成した😵
…
先生についてはこの辺に詳しい
非常にいい機会をいただきDr. Jonathanはもちろん,受講生の仲間のみんな,東工大,受けるようメールをくれた教授・事務員さん,お招きしていた十代田研にここに感謝を表する.
お題:ポートランド*機を逸しているが
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