AOKI's copy&paste archive

高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ24:WtW in JP

Economic analysis of near-term California hydrogen infrastructure

Tim Brown, Lori Smith Schell, Shane Stephens-Romero, Scott Samuelsen

International Journal of Hydrogen Energy Vol. 38, Issue 10, 1 April 2013, Pages 3846-3857

内容

LAの水素システム事業についてのまとめ,技術シナリオで短期に注目し,供給は液化と高圧ガス(>50MPa)を検討した.既設と計画中,さらに推奨する追加分の計68か所を,GISよりネットワークで考えた.仮定として利用者目線の燃料コストや航続距離は,いずれも既存のICEと同等になるものとし,BEVなどとの大きな差異とした.ここでICEの費用の増大と燃費の向上の双方から,経時的にいずれも運用コストが上がるとした.また使用水素量はCARBのEMFACモデルから求められた.補給施設は液化が大規模なものとし,LCや保険・土地代・税などの運用コストが包括された.稼働率やインフレ率も反映された.水素精製はLNG由来のSMRとし,今日では過剰スペックにより低コストで可能だ(2011に$4.5/100万MMBtu).ここで原料のLNG価格,施設効率,減価償却などが含まれた.ここに施設ごとの容量と利用開始(予想)を組み込んだ.

結果として3つのシナリオが示された.既設18か所が寿命15年稼働し,これにより液化(17)ガス(33)両立に$33mil,液化(400kg/day,50)のみに$100mil,ガス(180kg/day,50)のみに$50mil融資されるとした.さらに位置とFCVのサイズから,利用の多い場合,そこが拡張されるとした.全体のFCV台数はCARBの2025年に27万台をベースに頭打ちの現状を反映し,1/2なども想定した.

そして両立の中の最良のシナリオでLCで1.1億kg,最悪で6.1千万kgの水素が供給されると推定された.またいいほど施設間のギャップが小さかった.また2017年以降は,圧倒的に施設が不足することが示された.また初期投資は大きいものの,いずれも2011から始めて2020までに黒字を達成する.そのため政府の財政支援の必要性を説いた.数値としては$34~82milほどとなる.また郊外の施設が財政的に圧迫する結果も見られた.また今回は施設の寿命を一様に設定したため,2025以降の継続的なインフラ投資の必要性も示唆された.また拡張を認めない場合,利益は上げられたが効率が低下した.全液化シナリオは25%ほどコストが増大したが,これも黒字だった.全ガスシナリオはコストが15%ほど低下したが,利益も低下した.

まとめにまずICEと同等という仮定の注意を促した.不確実性を大きく持っている.また既存のEVと比べると,ICE,FCVが価格的にかなり不利である点も示された.また郊外はオンサイト生成の優位性がある.

f:id:pytho:20191217000111p:plain

感想○

水素ステーションについて非常に勉強になったが,LNG由来な点,おそらく一般乗用車のみの点は残念だった.

 

ETCデータを活用した都市間高速道路における休憩施設滞在時間推定に関する基礎分析

平井 章一・Jian XING・小林 正人・堀口 良太・宇野 伸宏

土木計画学研究・講演集,Vol.52,(CD-ROM),2015

内容

本研究ではNEXCO3社がICで収集したETCのトリップデータを基に,これまで検討できていなかった休憩行動のモデル化を図り,利用実態のマクロ的分析を行った.

まずICの出入りから旅行時間を求め,それと感知器の速度データの差分と最短経路という仮定から,休憩時間を把握できることを応用した.大型車だけでも1000万以上のトリップが得られた.大型車の平均トリップ長は90kmほどで500kmを超えるようなものも2%強見られた.85%タイル値としては150kmほどだった.ただ休憩を期待できるものやODのペアを考慮すると,小型でもサンプルが少なくなった.また均一区間は取り除いた.結果,小型10万,大型2.4万のデータを用いた.

休憩時間120分ほどまでは単峰性の分布が見られたが,それ以降は直線的な別の分布であることが確認された.この長時間の休憩について,OLAPというコンター図による視覚的分析手法を用いた.まず大型車の方が時間帯の違いが明瞭だった.そして休憩は,深夜割引(流出時の時間により半額になる)に調整した場合と,業務の開始時間に到着できるよう調整しているものがあると考察した.前者は4-8時代の流入が0-4時代に移ったことが,後者は7時をピークとした流出のピークが見られることから推測された.

またより短い60分超の成分も分析された.これは正午にピークを迎え,以降三角形上に分布が見られる.短いトリップでの昼食の休憩が支配的なためだろうと考察した.またトリップが長いと,PA・SAで昼食をとるほかないため,距離によって割合が増加しただろうとした.

いずれの場合も三角形上の分布になり,距離に応じて休憩が増加する傾向が確認できた.またその際のピークも確認された.

感想○

BEVの充電設備としては,深夜よりも日中が重要で平滑化も検討したい中,現状として参考になった.また金銭的なインセンティブに相当する割引の効果が見られた点もよかった.また休憩の分布がいわゆる正規分布でなく,三角形上だった点は特に興味深かった.ただ現状,場所について制御できていない点は,今後の課題だろう.

 

将来の車両・エネルギー技術進歩が運輸部門CO2排出量に与える影響の評価

山本 充洋・加藤 博和・伊藤 圭

地球環境シンポジウム講演集地球環境シンポジウム講演集 18, 75-80, 2010-08土木学会

内容

長期的な技術進歩が運輸の環境面に与える影響を評価することを目的とした.技術を統合し,さらに普及率も同定して推計した.車種ごとの原単位から,CO2排出などを算出した.これを乗用車,貨物車,鉄道について,2000年から10年ごとに2050年まで分析した.

RES含めた発電の原単位をNEDOのデータから参照しCCSも検討した.推移としてLNG原子力は20%,RESはすべてで30%ほどの分布とした.これはMRIほか既往研究を参考にした.そしてCCSによりCO2原単位が3割ほど減るものとした.エネルギーについては,確定的な値としたが,車両技術については理想状態を上限に幅を持たせた.そこで効率をWtWで分析した.またICE,HV,EV,FCVについても検討した.ここではICEはEVの2倍ほどの原単位とされ,またFCVは非常に高い値から大きな傾きで改善し,将来的にICEを上回るものとされた.なお以降の検討ではEVに置換した.さらにそのシェアについては,消費者選考予測モデルを組み込んだ.加えて補助金の有無の影響も30万という画一的な値ではあるものの検討した.

結果,技術進歩を考慮せずとも人口減少により2000年比で2050に45%削減されると推計された.そして技術によりさらに20%前後の可能性が示唆された.なおCCSの運輸への寄与は小さく,これはEVが製造時のCO2排出が支配的なためと考察した.また補助金についても検討したが,2030ごろには効果が見られるものの,2050にはCO2排出が同等とされたためにその影響はなくなった.そのため超長期的な視点において,補助金の効果は限定的だと指摘した.

また中国についても簡単に検討しており,そこでは軽自動車の寄与とEVが支配的とされた.さらに市場規模が大きく,排出量のスケールも大きくなるため,これらの推進と技術進歩の必要性を訴えた.具体的には最良のシナリオにおいても.2010年比で2050年のCO2排出量は6倍とされた.

感想△

WtWをやるわりにEVのCO2が現時点でICEの半分というのは非常に懐疑的だった.またエネルギーミックスこそシナリオを用意すべきと思った.やや古い点が仇になった印象はある.ただ消費志向が含まれていた点は非常に評価できる.

 

交通部門におけるCO2排出量の中長期的な大幅削減に向けた対策

松橋 啓介・工藤 祐揮・森口 祐一

地球環境Vol.12 No.2 179-189(2007)

内容

バックキャストのシナリオ分析を用い交通部門のCO2の7割低減目標の整合的な施策を検討した.これを通してロードマップの作成を大きな目標とした.そこで地理的情報含めてEVとHVでWtWを行った.TtWでは平均旅行速度依存性のエネルギー消費原単位を求め,交通状況に応じた最適なパワートレインを分析した.ここでは54カ月の全国の自己申告給油ログと自動車諸元を用いてデータベース化して分析した.サンプルサイズは160万におよぶ.EVは2000ccクラスと同等となるよう各種設定された値を用いた(例34.6kWh,H2:160l@35MPa).なお当時は今以上に水素の不確実性は高い.原単位から回生で低速に効率が良いことが示唆された.また言及されていないが,高速は空気抵抗による悪化が考えられる.供給施設や航続距離といった交通特性から,ポートフォリオとして都心はEV,郊外はGVが有利とまとめた.また環境配慮としてニュートラルなバイオマスを提言した.まとめとして2020までにはHEVが支配的とした.

これが既存の排出量の4割減となるため,これのコーホート分析をし,HEV大量導入のシナリオを検討した.具体的には2020に8割などとした.小型貨物もHV5割とし,さらに交通量10%減のTDMも加えた.すると1990レベルで13%減まで抑えられることが示された.なお航空の需要増も含まれた.ただTDMも含めたため技術的限界に言及した.またHVの普及が進まないことも考慮し,その場合同様の結果のため交通量の24%の減少が必要と示唆された.さらに車体価格差も検討した.すると2010にはHVの低価格化により,補助金なしでも差額を燃料費分からペイバックでき導入が進むだろうとした.

さらに有識者の意見を踏まえ良質なシナリオプランニングを行った.そして意見をまとめ,都市ごとの検討を行った.都市圏では低燃費走行,地方では徒歩圏の高密度化や公共システムの導入を検討した.そして類型ごとの人口当たりのCO2排出原単位を推定し,人口推定値を基に全国での原単位を算出した.すると運輸部門において,1.76から0.67t-CO2/人となり,217から63tと1990比で2050に71%減となった.

f:id:pytho:20191217000218p:plain

f:id:pytho:20191217000233p:plain

感想◎

旅客中心だが技術進歩だけでなく,使い方も検討されよかった.シナリオプランニングが100年後を考えるWSに似ていたので興味深かった.

 

pytho.hatenablog.com

 

車種別利用パターンを考慮したプラグインハイブリッド車と電気自動車の導入評価

中上聡, 山本博巳, 山地憲治, 高木雅昭, 岩船由美子, 日渡良爾, 岡野邦彦, 池谷知彦

エネルギー・資源学会論文集2010 年 31 巻 6 号 p. 7-15

内容

代替のハードルが低いPHEVに着目してWtWのCO2排出の分析を行った.そこで小型車をさらに類型化し,利用パターンや電源構成から評価することを目的とした.

データには2005年のODデータ7000件余を用いた.これよりPHEVの電気走行可能距離は普通で40,小型貨物で60,軽貨物で30kmとした.仮にこのすべてが代替されると,全電力の5.7%と試算された.EVはLEAFなどのカタログ値160kmを用いた.また燃費も同様としEVは普通で5km/kWhとした.また貨物についてはデータがないため,転がり抵抗などから試算した(詳細は後述).これよりLCVは3,5km/kWhと計算された.さらに前述の走行可能距離と式より求まる抵抗から,電池の容量を決定するものとした.なお電池の単価については,技術革新が見込まれるため線形の式にして柔軟性を与えた.そして2005年の20万円/kWhから2030年に0.5万円/kWhまで低下するという既往研究を参考に,その減少パターンを複数与えた.電気価格とガソリン価格は\7.35/kWh,\130/lで一定とした.これらで電池は車と同様の12年の寿命という仮定の中,ICEなども含め割引率含め最安なものに買い替えが行われるものとして分析した.

結果,0.5万円/kWhまで低下すれば軽乗用車はBEVが9割普及した.他の車種はPHEVの方が支配的で,また貨物では割合が低くなった.これは航続距離が長く不利な点と,仮定においてパワートレインなどに余計にコストがかかるものと仮定したためだ.またシナリオごとに比較すると,電池価格の影響が非常に大きいことが示唆された.以降は0.5万円/kWhを基に評価した.充電は電力需要の低い時間に開始するものと仮定した.

次に電源構成について検討した.既存の電源構成モデルに水力を外生で与えた.またエネルギー計画を参考に線形計画でコスト最小化のミックスで考えた.2030年では原子力が最低の80%(64GW)を占めるとされた.またPHEV,BEVが普及し電源構成が変化するかも検討した.PHEVのみに比べBEVが含まれると電力需要が増加し,原子力がさらに増えた.また原子力の容量が一定とした場合,石炭ガス化が台頭した.この場合BEVではあまりCO2削減の効果は見られなかった.そのため全体としてPHEVの方がコスト面含め効果的だった.なお原子力が支配的な場合は,両者とも問題は軽減された.最大でトータルで最悪のケース比で106%の改善が見られた.石油依存度も74%減少した.

最後に電池単価も検討し,1万円/kWhでもそれなりの効果が推測された.

感想◎

全体で非常に参考になり,燃費計算式はMareevらも同様のものを用いたので参考にしようと思う.ただ時期が時期だが原子力に対する検討には懐疑的にならざるを得ない.

 

日本の乗用車市場における電動化と自動化によるCO2排出量削減可能性予測

西村 翼・ゴンザレス ファン・荒木 幹也・志賀 聖一

Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 40, No. 5160,2019

内容

ここでは自動運転SDVとEVなど次世代車の普及を同時に考慮し,総合的なCO2削減量の可能性について推計することを目的とした.自動運転はレベル0,5,自動車はICE,HEV,BEV,FCVを検討した.普通,小型,軽の乗用車を対象とした.乗用車台数モデルはLEAPを用いた.そして台数とCO2排出量などを求めた.データのベースは保有・新車販売台数ともに2012年時点の値を用い,10年余りの一定の寿命とした.そして国交省の統計情報より年間走行距離を求めインプットした.燃費は燃料ごとに既往の研究をベースにし,SDVのシェアの影響を直線で与えた.SDV100%で39%向上するとした.この研究がEVのSDVを考慮しているのかが気がかりだが.SDVの普通車の燃費は2050年に先ほどの順で17.8,23.3,67.6,43.5km/l(換算)となった.

WtWCO2はIEAのデータをベースに2050年にLNGとRESが1:1,水素精製もSMRとRESが1:1とし,時間で線形とした.また本体,電気両者のコストを割引率含め考慮した.最後に技術の普及についてはロジットモデルを設けた.

そして8種のシナリオで分析した.台数のシェアについて,BaseはICEが66%と依然高い水準を維持した.SDVについては技術の本格化が2030からとされ,そこからの置き換えが進まず38%までに留まった.一方でEVの推進シナリオでは,90%占めるだろうとされた.エネルギー消費については,BEVが400PJ/y,FCVが300PJ/y削減できるとされた.SDVの効果は限定的だった.CO2排出も同様の傾向で,TtWで20Mt/yという1990の8割減を達成した.WtWでもBaseの半分以下に抑えられることが確認された.しかしHEVの効果は小さかった.キャッシュフローはBEVが正(上凸)で,HEVは負,FCVは一旦正から最終的に負となった.そのためHEVの方が経済的ではある.しかし前述の環境影響を考慮すると,FCVが優れていると言えるだろう.またSDVについては,EVの普及によりその効果が薄まるため影響が小さく見えただろうと考察した.

感想△

貨物が行われていないのであくまで参考として.だがWtWのわりに電池交換などの本来的なLCAの視点に欠けていた.SDVを含めている点はいいが,文中も述べたようにEVとのシナジーに疑問がある.また発電も簡易化が多く検討が不十分だと思った.

 

BEVの設計について

f:id:pytho:20191217000154p:plain

左3点はLeaf含む既存のLCVらで,それ以外が既往研究で示された数値.30tの著しく低い値はハイブリッド.

20~35tの車重を考えると経済性からは600kWhか.これをLeafの0.141kWh/kg,0.115kWh/lで単純に割ると4.3t,5.2m3.既存のパワートレインは1t,2m3程度なので悪化は免れない.積載量は重量ベースでやはり2割減.実現可能ではあるが,市場としては微妙か.

Mareevら(以前のMDPIのもの)の40tの論文を参考にすると,航続距離は450km(推計)ほど.だがこの点は算出された論文も少なく不確実性が高い.また積載量・速度(空気抵抗)により大きく変わり,厳密な値の算出はかなり難しい.ここでは電費(シミュレーションより1.33kWh/kmなど)と時速(80km/h)と航続時間(4.5h)から,バッテリー容量(478.8kWh)を推定した.そこから劣化などの安全係数より600kWhなどとした.

FCVも検討したいが,読んだ論文が少ない上,技術が成長中でさらなる困難が予想される.

航続距離に関してデータを収集したが,平均でまとめられ分布が不明.

国交省平成27年度 全国道路・街路交通情勢調査 自動車起終点調査(OD調査)結果の概要について」https://www.mlit.go.jp/common/001230248.pdf

 

f:id:pytho:20191217000143p:plain

車種別・1運行の平均走行距離・実車距離(km)

(回答22,541運行)

平均走行距離

平均実車距離

普通

172

128

中型

227

169

大型

347

272

トレーラ

280

186

全体

297

227

トラック輸送状況の実態調査結果(全体版) - 国土交通省

http://www.mlit.go.jp/common/001128767.pdf

ほかにも大型は500㎞以上のいわゆる長距離のカテゴリが多く2割ほど

 

f:id:pytho:20191217000125p:plain

平成27年9月公益社団法人全日本トラック協会「長距離輸送の実態と労働時間規制の在り方についての提言-改善基準告示等をめぐる諸問題-」

http://www.jta.or.jp/rodotaisaku/rodoho/rodo_proposal201509.pdf

生データに近いか,統計を使ってモンテカルロするには分散がないのが悩ましいところ.

ただ連続運転でも休憩を考えれば,やはり満載時に400㎞程度で十分か.