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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ28:ここのところ抜けてしまっていた分の論文レビューの補足

The heavy-duty vehicle future in the United States: A parametric analysis of technology and policy tradeoffs

Amanda C.Askin, Garrett E.Barter, Todd H.West, Dawn K.Manley

Energy Policy Volume 81, June 2015, Pages 1-13

内容

まず米での大型車(class7,8)への環境問題の関心を挙げ,一貫した資本や走行特性により,代替燃料への切り替えが迅速に行われ投資を回収できる可能性に言及した.しかしこれまでは長期では,不確実性からシナリオ分析に留まっていたため,詳細な選択と所有台数のモデルを構築し,代替への促進の要因分析を目的とした.

既往文献の小型車のモデル(サブモデル:車両,燃料生産,供給)を基に3次Runge-Kuttaアルゴリズムを用いた.代替燃料には実用化が近いLNGCNGを新車のみに考えた.また軽量化や各燃費向上の技術をパラメータとして組み込んだ.ただし空車を減らすなどのソフト面の施策は,適用が難しくモデルでは考慮されなかった.

車両数はFAF(:Freight analysis Framework)から比例するとされ,年数やパワートレインなど7つでセグメント化された.また同様にスクラップ率も与えられた.またトンマイル燃費は複数のデータソースから参照された.

車両購入モデルはコストによるロジットモデルを用いた.さらにここに補給の可用性のパラメータも含めた.これには別個でプライベートのものも与えた.そしてトンマイルに対して減価償却を考えるものとした.さらにVRI(:Vehicle Refueling Index)として,燃料代替車に対する補給インフラの比率によって,その需要と成長を推定した.さらに燃料の生産と供給を,GREETモデルを基に各地域で与えた.

結果は,まず化石燃料の価格の単調の高騰が反映された.その中で天然ガスは採掘増の見込みから直近ではLNGCNGが有利となった.これらは排出物などから環境にも良いとされるが,点火温度が低いため相殺される.なお浄化技術は含まれていない.また排出規制から2017年にわずかな低下が表れた.長期的にはディーゼルが支配的で,2050年でも8割が占めた.残りはCNGの方がやや多かった.しかし燃費はLNGの方が高かった.また貨物の需要増に伴い,全体のトンマイルは2倍まで増加するが,それぞれの燃費の改善による軽減が見られた.また2050年には補給インフラの投資はほぼ0となった.燃料の削減により建設や新車の費用が相殺された.特にCNGは航続が短い欠点があるが,都市トリップ中心に採用が多かった.燃料の選好では,投資回収期間よりも相対的価格差が支配した.

最後に別シナリオとして,石油の上昇を2倍,天然ガスの上昇を半分に抑えると,天然ガス車が6割まで増加した.

感想○

EVに関する言及は少なかったが購入選択モデルとして,GREETモデルを使いながら,不十分な点を補う点は面白かった.

 

水素自動車社会に向けた地域対応型Well-toWheel評価モデルの提案

脇英正,森雄一,シェイン ステファン ロメロ,スコット サムウィルソン,足立正之,千田二郎

自動車技術会論文集 Vol.42,No.5,September 2011.

内容

水素はその輸送や需要の変動が大きく地域差も生まれると考えられる.そこで本研究では地域対応型のWtW分析を行った.そしてエネルギーミックスや製造方法をパラメータとして環境影響を分析した.これより京都での適用を考察・予測した.

水素の貯蔵は執筆時に実績のあった35Mpaの高圧ガスとした.製造は輸送の有無で分散と集中に大別した.前者は水蒸気改質と電気分解とした.電気分解は全電力平均と深夜の原発分を考えた.後者は副生と電気分解を考え,この電気分解原発の近くで行われ生成物がローリーにより輸送されるとした.いずれも送電ロスなどを厳密に与えた.電力の構成比は再エネが10%(内,水力9%),火力が49%,原子力が41%である.

CO2原単位や送電ロスは関電のデータを基に求めた.そしてガソリンもWtWとし,ICEとHVで比較した.ここでICEは車重ごとに3つのタイプを考え燃費も変えた.

結果,原発での製造ではCO2排出は低くなったが,それ以外は既存と大差なかった.特に電気分解は消費電力も多く不利だった.また全電力のCO2排出量が多い点も挙げられる.さらに集中の方が有利な傾向にあった.そのためこれらの地域はFCVの恩恵が大きいと考察した.

しかし集中施設は原発や工場近傍に限られる.そのためこの結果から数式の係数を求め,地域ごとの分析を行った.京都はこれらがなく分散で考えた.車両の台数は自動車検査登録情報検査委員会のデータを基に乗用車分を推定した.そしてFCVの導入程度も3シナリオ与えた.結果,いずれも台数が減少するためCO2排出量も減少した.しかし積極的なシナリオも2050年に16%減に留まった.これはそもそも不利な分散でしか行えないことが主な要因だと考察した.

感想◎

古くはあったが研究の流れやソースとして参考になる部分が非常に多かった.やはり系統を使うには再エネの推進が不可欠だと思った.深夜の原発の分を使うというのは当時らしいと思う.再エネ余剰分でうまく比較などできればと思う.

 

Comparison of consumption and CO2emissions between diesel and fully-electric powertrains for a heavy-duty truck

Simone Gelmini ; Sergio Savaresi

IEEE 2018 21st International Conference on Intelligent Transportation Systems (ITSC)

内容

イタリアにおける大型トラックのEVについて検討した.ただしこの地域はトラック依存の高く再エネ比が高いため,結果は必ずしも一般化できない.車両は36tで分析した.

まずセミトレーラで,511㎞*2の南北のユニット間の往復トリップ(途中で物流センターの停車あり)で分析された.そして燃料,GPS,加速度のデータを収集した.そしてエネルギーベースで考えた.消費量は既存と同様で摩擦などを考慮した.そして消費側もICEとEVで厳密に定式化により推定した.EVについては重量とのトレードオフに言及しつつ,トリップ中の休憩や配送の停車が長めの時に,充電できるとして見積もった.また効率の係数も各種定義した.さらに充電速度も43.5kWから170kWまで考慮し,急速では容量を抑えられることが確認された.これは休憩時間と充電できる容量との兼ね合いによる.特に低圧では満タンまで17hも必要と推定された.しかし相互的に考慮するには,最適化問題が必要となる.そこで220kWh/kgとして考えた.さらに劣化による容量減を一般的な2割で考えた.

結果として低電力だと10t余り,高圧だと6.5t程度と算出された.故に高圧だと効率的だが,トリップの延長に対応できない.そしてバッテリーの寿命も,繰り返し回数で1e6から7e5に低下すると推定された.

さらに走行におけるCO2排出も分析した.ここにはバッテリーの製造も含めた.発電に関しては現状での分析とし,化石燃料発電の分の原単位を与えた.すると電化で4割減となった.エネルギー消費量も回生のため最大7割減となった.これは既存のICEが非効率なためとした.

まとめとして,ライフサイクルでは低用量が有利と考えられるため,適切なステーション立地計画と共に行うべきだろうとした.今後はディーゼルとのコスト比較を行うと締めた.

(既往文献10:テスラのEVセミ,11:大型EVの言及の少なさ指摘)

 

感想◎

トレードオフ最適化問題で解いているのは面白かった.やろうとしている研究にも近しかったのでよかった.コストは残念なところだったが,今後に期待したい.

 

Electric vehicle charging strategy to support renewable energy sources in Europe 2050 low-carbon scenario

Antonio Colmenar-Santos, Antonio-Miguel Muñoz-Gómez, Enrique Rosales-Asensio, África López-Rey

Energy Volume 183, 15 September 2019, Pages 61-74

内容

本研究は,RESの変動性に対し,スマート充電戦略によりグリッドの信頼性と品質を改善させる方法の提案のため,50の既往文献をレビューした.価格による充電のスケジューリングやV2G,分散型のシステムなどの大綱がまとめられた.そこで本書は特に分散型の資源シナリオで役立つものと位置づけた.

シナリオ分析のベースにEurope2050の目標値を用いた.まず再エネが8割の場合は貯蔵システムなど大きな投資が必要とした.その中で容量がPVで4.4から24.2,風力で22.9から64.1GWhになるとしEVもほぼ0から16.3%になるとした.そして生成量を季節・緯度・天気などから一日の曲線で推定した.これを充電方法で集中的/スマートで比較分析した.台数は現在の全体で3億台をベースとした.

単純な比較ではダックカーブ(需供の不一致)が見られた.このため蓄電・蓄エネ(ESS)と需要調整(DSM/DR)とEVのV2Gが挙げられた.柔軟な選択のためこれらは開発されるべきとした.周波数の安定性としてはESSが優れていると紹介した.これらによるシステム効率化に言及した.ただしLiバッテリーは現在コスパが高くない.

EVは様々な利用者がある中,車両の可用性に焦点を当てた.乗用車のEVは90%駐車し距離も短いので,V2Gに適すとした.また商用車の多くも同様で実現可能とした.そしてEVによるDRでダックカーブを解消できると考えた.充電戦略のフローを綿密に定めた.そしてギャップのための蓄電量は200GWhとし,10kWh/台の2千万台のEVのV2Gのシステムを仮定した.このモデルでEV需要は159GWh/日となり,146GWhを輸送部門が占めた.その中でも113GWhがスマート充電となった.そのため系統へは6.25%に留まった.

コストなどのトレードオフもまとめで言及し,送電線の容量を増加させ効率的な改善が可能とした(≒マクロなならし:コスト比較はなし).またBEV普及のトレンドで5TWhほどまでの成長も予想したが,コストと寿命がやはりネックで今後の技術進歩に期待するとした.また利用状況は電化で変化しないとされ,売電により利用者の利益も見込まれる.

 

感想○

自動車の利用を現状と同等と考えていたが,シェアリングエコノミーで大きな変化が予想される.そのため電力システムとして加味すべきだろう(裏付けとして増加するという文献を参照した).しかし綿密な充電フローなどの結果は参考になる部分が多かった.

余談

修論はひとまず1つ目で読んだGREETモデルの適用を考える運びとなった.

https://greet.es.anl.gov/

英語のツール,英語の説明書,英語のYouTube解説...

英語コンテンツは豊富だがなかなか前途多難だ.