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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

書評 in 文喫

今日も今日とて文喫.

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今日の目当て:イベントは下記のとおり.

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21世紀の資本という本は確かに知っていたが確かにボリュームから敬遠していた.まとまった映画ならということでノーマークだったが巡り合わせで試写会に行くことに.コロナな昨今ながらイベントは貴重だ.

そしてその感想は後で記すとして,せっかくなので早めに入店して読書を楽しむこととした.ちなみに就活の初動とゼミはまずまずといった具合で幸いだ.今朝もJRとOB会をしていた.この辺も別個で記せたらと思う.

そしてせっかくの文喫ということで物色して流し読みした感想など.

まずこちら.

最前面はダークツーリズムをテーマにしたもの.観光経済学のアカデミックから出ている.このテーマは以前講義課題にも選んだ.未だ興味があった.文庫本で安めなのも吉だ. 

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さくさくまとめて紹介していく.次は世界の地下鉄駅という本.目次を見ての印象は日本が少ないなと.日本は広島のアストラムラインただ一つだ.世界でも屈指の鉄道王国ながら悲しいことだ.これは日本の鉄道運営の特性が表れているのかと考察した.他国では公共インフラとされるが,日本は3セクなどを除き民営だ.そこで収益性が求められるとデザインに割ける余裕は厳しい.とはいえ最近の銀座線のホームなどはレトロさとモダンさの調和がいいとも思う.本書の内容を紹介すると北欧の岩盤むき出しのものやドバイのクラゲモチーフのサイバーなものや,平壌の思想や社会性が反映されたものなど多様で面白い.さらに写真と簡単な解説で読みやすいのも良い.個人的に高雄のステンドグラスの駅は近いし行ってみたい.

オタクが饒舌になってきたところで次に移る.次も鉄道のもので昭和の歴史を振り返るものだ.戦前から戦後の時代背景とそこでの鉄道の役割を回帰しつつ現在との比較がされている.鉄オタとしても知らないこともしばしば書かれており非常に興味深い.例えばジョイフルトレインのSL銀河は線形の厳しさからSLのみならず客車の動力を用いているとのことだ.日本の近代における鉄道の重要性を示す一書として価値がある.

さらに同様のものが続く.最背面のもので都営交通の写真集だ.都営地下鉄をはじめ都電,都営バスの何気ない日常が切り取られている.都営といいつつ素朴でのどかな感じが心地いい.

ここからは表情が変わる.上から紹介する.

まずデザインをコミュニケーションから学術的にアプローチしようとした講義をまとめた本書.日大芸術学部の講義が基.デザインは情報を伝えるすなわちコミュニケーションの手段の1つだったことに回帰し見つめなおした.そしてデザインの歴史を振り返った.通常は産業革命以降から行われるが,広義のデザインは物語・会話をはじめコミュニケーションであるから社会生活の成立から息づく.コペルニクス的で興味深い一書.また留学のテーマにも近く興味深いものがあった.ちなみに前述の地下鉄もロンドンのTube/Undergroundを想起させた.

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次が災害をユートピアと述べる奇特にも見える本書.ユートピアという単語が最近履修した教養科目(以下リンク参考)に近く,加えて土木に密接な災害という掛け算で見逃すことができなかった. 本書の概観は災害という人類のピンチこそ人間の性善説的な協力社会が表れるという論調だ.一方でこれは内部の話で,外部から被災地を見れば,利己的になって危険になっているのではないかという疑念が広がり文字通りの地獄を呈してしまうというのだ.ここには例示もあり耳が痛ましい.人類の善良さと邪悪さを突き付けてくる衝撃的な一著だ.

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3/11追記

コロナの勢いは意外にも収まらず米の流行の潮流から金融市場にも波及する中,災害としてのコロナと本書の関連性は深そうだと考察できる.またこうした状況を受けた各々の行動にも表れる.一般人はメディアの煽りからか,不安になり精神の安定を求めてか,マスクの買い占めや検査数の増加の要望をしている.これが上述の外部環境に似ている.そして武漢では感染予防のため交流が希薄になりつつも団結が見られる.というのを見かけたのだがソースがなかったので眉唾と思ってもらってもいい.また識者とのギャップも興味深い.リテラシーが高いほど事態の深刻さや本質的な対策を考えられている.簡単に言えば冷静だ.そのため買い占めは抑止され発表される統計的数値も吟味できる.こうした人ほど利他的なのは皮肉だ.たまたまこの日付だが9年前,特に原発も同様だったことが思い出され頭が痛い.

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次は星の王子さまをベースにした辞書だ.多言語を勉強している友達に感化された感は否めない.物語を読みながら勉強できるかと思い興味を持ってとってみた.しかし内容はわりとかなり辞書.ただアプローチとしては面白いと思う.

続いて日経の読み方をまとめたもの.ただこれもビジネス初心者向けな感が否めなかった.別に私もビジネスの上級者ではないから一読の価値はあるが,基礎的な内容も多め.例えばCEOやESG,SDGsといった言葉や有名人について紹介しつつ読み方・勉強法を伝授している.ビジネススキルを0から鍛えたい,日経が読みたいけど読めない人には非常にお勧めの本だ.

そしてシナリオを悲観した一書.リスクについて言及されいている.シナリオといえば以下リンクのワークショップだ.いい加減書かないとなあと思いつつ...ここでも楽観的/悲観的シナリオの双方を考えた.VUCAな未来に対応するにはいずれも必要なことだ.その中で特に悲観的シナリオに焦点を当てているという点でまず興味深い.そして序説ではまず911について言及され,こうした少ないリスクに対して対策が表明されたことを紹介している.一方で少ないリスクに対応すること自体のリスクや負担のジレンマを挙げた.そこでこうしたリスクの対する反応や費用便益分析の限界を紹介するとした.これは非常に身近に感じ面白い.まず計画数理・理論を履修してきた身として,今後の費用便益分析の見方が提示されていること,卒研で橋梁の安全率の指標の検討をしてきた身として,リスクアセスメントに言及していることだ.後者は橋を落としてはならないという原則の下,コストの制約から,乱暴な言い方をすれば超低確率の破壊を許容している.この考え方に一石を投じるものと成り得るのが本書だ.また鉄道分野にESを出した身として同様に安全の観点から興味深い.また昨今の事情にも近い.コロナのリスクとその反応だ.目次ではテロ・議定書から始まり環境や経済に重きを置いているようだ.

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セミファイナルは物語の構造分析という訳書.言語の演繹的なアプローチとこれまでの文学の帰納的なアプローチの是非に言及しながら,非常にアカデミックに硬派に物語の分析を行おうとしている.また物語といってもジャンルは多様だ.この定義も厳密には難しい.そもそもの物語というテーマは文系に,分析の硬派な点は理系に,すなわり文理双方におすすめできる一書だ.

最後は小説の読み方の解説書のようなもの.文体は口語的で読みやすいと思う.そして冒頭の教授もとい著者のエピソードが魅力的だ.米の学生の積極性に言及している.米では大人の学生も多く殊更彼らの積極性が高い.それに触発されてかティーンの取り組みにも目を見張るものがあるようだ.学んだ文学を主体的にまとめるカリキュラムがあるようで映画にして賞を用意したりしているらしい.そこには教師の影響もあるようだ.彼らはこの文体が整っていない(いい意味)本書を教科書として用いているらしい.そこでいいと思ったところを抜粋しているとのことだ.これは非常に羨ましい.もちろん小学校入学から高専の国語まで文学に触れる機会はあったが受動的に授業を受けてきた.しかも題材もありふれていた.この形を変えなければ読書離れは必然かもしれない.そしてこれは余談にすぎず本文にはこうしたエッセンスが詰められている.魅力的だ.ただ一方で英文学ベースなため,日本文学の適応の是非は気になるところである.まあ応用次第だろうが.

そして最近マイブームに小説がきている.ベルさんをきっかけに蜜蜂と遠雷を読み始めたことに始まる.

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それこそ中学以来久しぶりに読んだ小説というものが,非常に表現豊かで没入的で面白いのだ.最近はビジネス書がトレンドでこれも知の欲求として非常に面白いが小説も捨てたものではない.特に比喩表現の豊かさが刺さる.中学時代はライトノベル全盛期であれはあれで読みやすい文体で若者受けなストーリーが漫画のようで面白かった.ただ裏を返すと稚拙さが否定できない.また他に読んだ小説と言えば,流行のものばかりで,告白・Another・流星の絆などだ.いずれも面白かったが文学を楽しむというよりかはストーリーを追っていた側面があり,もったいない読み方をしていたように反省できる.特に東野圭吾はミステリーで先が気になってしまう.白夜行は登場人物の心理描写などが複雑な感じで噛み応えがあったようにも思うが,流星の絆容疑者Xの献身は比較的シンプルだった.読みやすくいい読書経験にはなったと思うが一長一短だ.