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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ31:トラックの役割分担とか

電動過給機搭載大型ハイブリッドトラックの燃費改善の一検討

奥井 伸宜, 小林 雅行

自動車技術会論文集2016 年 47 巻 4 号 p. 901-906

内容

高速を主に走行する大型トラック向けのハイブリットシステムを考えている.走行の特性として回生が少ないため既存のハイブリットと異なりエンジンを最高効率で用いるためバッテリーで調整するコンセプトで検討されている.電動過給機を試作し,この仮想大型ハイブリットシステムを走行試験にかけて検証した.車重は25tを考えた.

まずそれぞれの負荷特性より電動過給機によりエンジンのダウンサイジングが図れることが確認された.そして実ユニットを付加し実験室内で実車相当の試験を行った.走行モードはJE05を用いた.また比較としてハイブリットでない同等のエンジンと,ハイブリットいおいても電動過給機の有無の計3パターンを実験した.さらに積載について半分(16.9t)と全部(25t)を与えた.

まずハイブリット化で積載に依らず15%の改善が見られた.小さなエンジンでは満載時にバッテリーがうまく機能しなかったが,新方式で大きなエンジンを用いると安定した.これはSoCなどから出力の余裕がバッテリーの調整にも寄与したものだと考察した.さらに過給機の検討をした.過給機では特に上り坂におけるアシストでの寄与が顕著だった.これにより出力が安定し燃費が向上した.なおSoCは60%前後で推移できた.また都市モードでも既存に比べエンジンの運転点が効率的なトルク線上に規則的に表れ,燃費が改善した.

これを実用性の面から評価した.各トラックメーカの主要な値と比較した.すると新方式によりエンジンのダウンサイジング化とバッテリーのサイズ低減が図れることが明らかとなった.さらに燃費の改善も高速時において2倍の効果を発揮することが分かった.エンジンが500kg余り軽量化できる一方,別の機械により300kgの重量増加となり,まとめると約245kg軽量化できることが示された.これによりさらなる燃費の改善が期待でき,積載についても悪影響どころか改善となる.また排出物については測定されていないものの,排出温度が触媒に適する温度で安定することから改善すると推測した.そして年間のCO2削減量は1台当たり約17.6tと推計した.

感想○

冒頭のハイブリットの考え方のコペルニクス的転回は面白いと思った.これによりハイブリットに非常に良好な結果が得られたことは期待できる.環境については疑問が残るのとコストの実現性が書かれていないのは残念だった.また排出量の絶対量は示されたが割合だとどの程度なのかが気がかりだった.

 

Eco-optimisation of Goods Supply by Road Transport: From Logistic Requirements Via Freight Transport Cycles to Efficiency-maximised Vehicle Powertrains

Dörr Heinz, Prenninger Peter, Huss Arno, Hörl Bardo, Marsch Viktoria, Toifl Yvonne, Berkowitsch Claudia, Wanjek Monika, Romstorfer Andreas, Bukold Steffen

Transportation Research Procedia Volume 14, 2016, Pages 2785-2794

内容

現状,EVは高価で投資回収は難しい.そこで本研究では運用に着目した.EVのようなパワートレインの技術の定量化を目的とした.

そこで輸送に応じた車両のタイプや経路の動的な影響を考慮するものとした.これに対応するAVL CRUISEというモデルでシミュレーションを行った.モデルは巡航サイクルにP2P交通を内包されている.そこで往復でそれぞれ空荷と積載が仮定された.そして欧州の車両カテゴリのN1,2,3(車重12t以上)から当てはめられた.ウィーンの2つの倉庫のある都市を想定した.そこで交通網と交通流(15分毎)の特性を入力した.また交通の品質は高速道路のマニュアルより6つのLoSに分類された.ただし大型車は3つとした.平均速度に応じてこれらが与えられた.これよりパワートレインの状況が算出され,また車両ごとにエアコンなども与えるものとした.こうしてエネルギー消費,排出量を推定した.パワートレインはディーゼルをベースにCNGの置換,PHEV含む各種HEV,カテゴリN1,2限定でBEVを考えた.FCVについてはまだ具体化されていないため考慮されなかった.

N1ではBEVがエネルギー効率,排出量共に最も優れていた.N2ではエネルギー効率はディーゼルのPHEVが勝った.この点はN3も同様だが,排出量はCNGのPHEVが優れていた.EVでバッテリーを搭載することによる回生の回収の影響が大きいと考察された.なおBEVは50,80kWhで検討され,今回このような低容量でも航続距離に関する問題は述べられなかった.さらにHEVは70%余りのエネルギー・CO2を削減できる可能性が示された.

またカテゴリと走行距離・トンキロの関連表が得られた.これらのデータは持続可能な環境へ配慮した輸送の評価に利用可能とまとめた.これは企業の社会的責任への役割も果たせると述べた.将来的にはステークホルダーの連携によるインテリジェント輸送物流が必要になるとした.

感想○

先週言及のあった車両の使い分けに関して近い研究だったと思うのでその点よかった.ただHEVは複数のパターンが用意されていたが,BEVやFCVが軽視されていたのが残念だった.小型のBEVの優位性が示されたのは良かったが,N3でのFCVの効果を現状ベースでも確認したかった.

 

Well-to-wheel driving cycle simulations for freight transportation: battery and hydrogen fuel cell electric vehicles

Giulio Guandalini ; Stefano Campanari
2018 International Conference of Electrical and Electronic Technologies for Automotive

内容

本研究でも貨物トラックをBEVとFCVでWTW分析を行った.ここでは特に貨物の容積:ペイロードの圧迫への合理性も考察した.車重は3.5,5.2,18,44の各クラスで検討した.それぞれの現行のエンジン容積や公称出力を整理し同等の性能を得られるものを考えた.
運転サイクルはFIGE(欧州の大型車向け)とH-UDDS(同EPA版)を用いた.また各パワートレインの効率はFCH-JUレポートの都市バスのデータを参照した(例えばICE:39%,FC:55%).エネルギーの貯蔵も既存のディーゼルタンクのConcaweの研究を基に考えた.バッテリーは現行の最高効率の140Wh/kgとした.また水素はガスと液体でそれぞれ式により算出された.
これらのデータよりエネルギーベースの電費の計算が行われた.ここでBEV,FCVは回生を考慮した.小さい車両は250km,大きい車両は600kmで想定した.
まず仕事あたりのエネルギーのTtWの比較をした.ICEが最悪でBEVがその5,6割で効率的だった.また積載率は運転サイクルによる差異は小さかった.FCVは概ね既存の90%以上を保てたが,BEVは距離の増加と共に最大30%余りの減少が見られた.そのため輸送の経済的な影響の懸念がある.
そしてWtTを加えWtW(単位エネルギーで正規化した必要エネルギー)での比較を行った.BEVはICEよりも全電力平均含めいずれも効率的となった.これは地域の資源を多く用いるためと考察した.しかし持続可能にするには大量のRESが必要なことも指摘した.またFCVはICEより1.4倍ほど非効率だった.これは水素の生産の効率性の悪さによるものと考察された.気体は分配において,液化は液化におけるボトルネックが明らかとなった.したがってここではRESによるBEVがエネルギー,排出共に最も有利となったが,輸送距離の増加と共にこの利点は失われ,ペイロードの効率も著しく低下する.そのため大きなトンキロではFCVが有利となる規模の経済が明らかになった.エネルギーではFCVの利点は小さいが排出量においては著しくICEよりも低下する.これはRESの利用で特に顕著となる.したがって貨物車両の大きさによるパワートレインの役割分担が最適と考えられる.

感想

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