Minimization of urban freight distribution lifecycle CO2e emissions: Results from an optimization model and a real-world case study
Miguel Figliozzi, Jesus Saenz, Javier Faulin
Transport Policy Volume 86, February 2020, Pages 60-68
内容
ポートランドの気候変動対策計画では旅客と貨物の交通によるGHG排出が全体の半分を占めるとされている.そして都市の輸送においては運用が着目され,LCは見られない.そこでこの問題をLCAで同定することを目的としている.そこでWTW分析を行った.
まず既存の文献を整理しアイドリングの重要性や小口輸送における三輪車などの小型車の利点を確認した.そして運用に応じたトレードオフを認め最小化モデルをここで検討した.
ここで連続近似(continuous approximation)法を用い,需要の空間的密度を考慮した.車両の走行距離を車両数や顧客数,駐車場までの距離の関数で定義した.さらにLC排出量の最小化を最適化問題で定義した.そしてバン(GVW4000kg・軽油)と電動三輪車で検討した.
さらに同様の1年分の企業データを用いたケーススタディも行った.またWTWでは製造も内包させGREETモデルを用いた.なお対象地のオレゴン州は水力と再エネが約半数を占める.このほか米全電力平均との比較も行うものとした.
結果は排出最小化には電動三輪車の利用のみが推奨された.しかしこれには9台必要であり,バンのみは2台で済む.これは汚い電力負荷でも同様だった.電費は,電動三輪車は20.55mile/kWh,バンは0.53mile/kWhとされた.またアイドリングの影響が大きいことも示された.これによりバンの結果は大きく異なる.また弾性分析よりいずれも顧客数に代表される規模の経済が明らかになった.また顧客のサービス中にアイドルとすると著しく排出が高くなった.こうした小さなアイドルが総排出に大きな影響を与えることが示された.
政策的考察として,パワートレインのクリーン化の合理性が示され,また都市設計としての高密度化の利点も確認された.さらに倉庫をここに加えると良い.またペイロードと排出はバンが三輪車の7倍だった.人件費などを考慮するとトレードオフよりバンの適宜導入も検討できる.また三輪車は駐停車による短所が小さく都市渋滞の解消の副次的作用も見込めるとした.こうした外部性への削減効果は同様の研究結果もあり,補助金の正当化の根拠となるだろうとした.また将来的には三輪車がUAVに置換可能も検討できると言及した.
感想◎
専ら小さな車両に関する検討ではあったが役割分担の視点として非常に興味深かった.また三輪車特有のメリットとして,都市渋滞の解消といった外部性への影響も面白かった.アイドリングについてはバンであってもEVであれば同様だろう.
A velocity and payload dependent emission model for heavy-duty road freight transportation
Norbert E.Ligterink, Lóránt A.Tavasszya, Ronaldde Lange
Transportation Research Part D: Transport and Environment Vol. 17, Issue 6, Aug 2012, Pp 487-491
内容
これまで車両の排出モデルは車両の原単位に始まり,走行中のデータ収集よりフローモデルも作られた.これらは速度・加速度と車重ごとに定められる.しかしペイロードの変化,すなわち車重の連続的変化は考慮されてこなかった.
そこで実際的な数値を得るため,参考トリップを考案した.また水のタンクを負荷としてテストした.空車重量は5.8~17.8tとされた.そしてEuro-VI法に基づき実験された.
そして排出モデルの作成においては,速度の2次多項式が用いられた.一般に低速では加速度が大きく排出が多く,高速では逆になる.また中速域ではペイロードが主因となるとされる.さらに車重を考慮するため,比出力(kW/ton)を係数に加えるものとした.
そしてPEMS(Portable emissions measurement system)測定データより最小二乗法,重回帰法よりパラメータ推定を行った.これより小型車における非効率が確認された.これは図においても明らかである.比出力の係数による.
また点線で示されたEuro-V基準に対してNOxが大きく上回っていることが示された.これは元来,CO2とNOxの排出は一定であるべきという考えに依る.これはエンジン効率が高くても排出量が高く,既存のエンジンテストとそれに基づく試験の欠陥を示唆する.すなわちNOxの排出量はこれまで50%過小評価されてきたものと批判した.また実験と実地の乖離が大きいことも表す.なおEGRとはNOx排出量を削減する技術である.
感想○
実験と実際の排出量の値が異なる可能性が示唆されたのは非常に興味深い.既存の走行サイクル試験そのものの課題もある中,難しい問題だろう.しかし定性的な評価が得られたものの,ペイロードの定量的な係数が示されなかったのは残念だった.
蛇足
年度更新で学務システムに色々と入力するとともに,倫理規定ほかの確認項目を再度確認させられた.少し気になったのはこのブログの著作権ほか権利関係.もともとグレーゾーンっぽさもありつつ正当化しているような気もしていたので.とはいえこれまでここにまとめてきたのは主に公開されている論文のまとめに過ぎずソースも付記しているので問題ないだろう.実際にはゼミにおいてそれなりに情報整理やらもしているが,そういった解析的な部分は載せていない.とはいえ昔にこうした自己判断で自爆した経験もあるので気を付けたいところ.具体的に言えば研究も既往文献よりかは本格的な解析の段階に突入するので,ゼミタグでの投稿は減ると思われる.とはいえ気になる文献はごまんとあるのだが.