月曜に一年ぶりくらいに映画館に行って,FateのHFを見てきた.
そのあたりの感想をまとめようと思う.案外,楽しかったこととかは記憶に残らないのでなお意識的に.なおどうしてもネタバレを含むので注意.
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まずFateシリーズの習熟度については,原作のリメイクは一通りプレイしたので,内容は概ね覚えている.とはいえプレイが5年くらい前だったので,正直うろ覚えの部分も多かった.細かい部分は曖昧なものの,大枠の構成は覚えている.
そこでやはり終盤ではそれぞれの全開での戦闘が印象的だったので,作画が安定していることもあり,そこへの期待が高くあった.見た感想としては期待以上の出来だった.特にセイバーと士郎の決戦が激アツだった.尺としてもかなり確保されていて見ごたえは十分だった.あのシーンだけで円盤の購入が決定したといても過言ではない.2者を挙げたがライダーの活躍もよかった.
戦闘としては他にアサシン対綺礼,バーサーカー対士郎,姉妹喧嘩,士郎対綺礼がある.これらは上述のものと比べると,あっさりした感は否めない.ただアサシンは疾走感があったからくどくなくていい.バーサーカーはUBWのテーマが流れただけで涙腺に来るものがあった.姉妹喧嘩も心理的な描写にも注意が払われていてよかった.
ちなみに来場特典のクリアファイルはバーサーカー戦のものだった.上映前の確認時点ではヒロインでなく,若干萎えていたが,上映後はいいシーンだったことで,ポジティブになった.
ただ一点,最後の戦いだけが,やや残念な印象だった.私のかつての記憶では,ここはお互いの譲れない信念で作中最高の戦いだった.これはノベルゲームでできる中で,演出を凝らせ,テキストを極限まで推敲した賜物かもしれない.それほど強烈に印象に残っていた.そこが映画ではいわば解釈不一致なところがあった.確かに肉弾戦で映像映えしにくいシーンではあるものの,もう少しやりようがあったのではないだろうか.台詞回しが主だったと思うが,士郎の心理的な負けられない思いに関する独り言を交えてもよかったのではないだろうか.
戦闘についてはこんなところだ.最後が微妙ではあるものの,総括すれば素晴らしい.繰り返しになるが,やはり作画が安定しすぎている.
次に構成について.ぶっちゃけFateシリーズは設定が細かいし,初見バイバイなところがある.FGOで人口が増えたとは言え,ライト層も多いだろう.そこに配慮したかのような描写が多く見られた.そのためFateシリーズに詳しくなくても,概ね理解できる内容だったと思う.そのため無知の状態でも三部作を見通せば,大体はわかるだろう.ただやはり時間の物理的な限界があるので,これをきっかけにFateの沼へ入ってもらえればなおよしだ.
特に過去の描写については,かなり比重をおいていた印象だ.これは今後,古参や考察勢にも満足できる部分で,非常に優れた采配だったと感じる.ここまで力を入れるのなら,過去編の映像化なども検討しているのかと邪推してしまう.まあ原作者の奈須きのこが飽きてきていると言われているので望み薄か.ただFGOでもエクストラクラスは重要な位置づけで関連性がありそうにも思える.Hollowにも言及があったとかないとかだし.
ただ心残りだったのは,1番最後が突飛な感じがしてしまったところだ.原作プレイ済みとはいえ,綺礼との戦いが終わって燃え尽きた感があって,正直あまり内容が入っていなかったのかもしれない.桜の元気そうなところで勝手に安心していたところがある.なので,その後の展開がよくわからなくなってしまった.青崎が出ていて,そこでこれこれというのは察しれたが,もやもや感はある.Fateライト勢の友人から聞かれたこともあり尚の事という感じだった.彼がWikiなどで調べたところ,空の境界の知識もいるとかで.
個人的に3部作にするにあたり,2章までの感想として,最後に残りを詰め込めるか心配だった.しかしこれは杞憂だった.過不足なくいいバランスで構成できていた.さらに序破急のバランスを考えても,3章で急展開を迎える構成は,結果的に唸らされた.
最後に序盤であった弓道の描写や,ヒロインの憧れであった桜を見に行くシーンもよかった.総合的に大満足だった.前章であったリボンをしっかりと伏線回収しているようなところも,丁寧な描写で評価は高い.
そういえば,1番重要とも言えることを言いそびれていた.この映画において,戦闘の作画と同様によかったのが,イリヤの描写だ.三部作全体としては,桜ルートとしてやはり桜がヒロインだ.ただこの章だけなら,イリヤの可愛さが勝っている.意地を張るところや姉貴面するところが可愛くも心苦しくなる.一方のヒロインさんは闇落ちしているし.
また内容とは全く関係ないが,コロナの影響で席が千鳥配置されているのも快適でよかった.両方の肘掛けを存分に使えるし,他人の隣人のガチャに悩まされることもなくなり,前列の頭が邪魔になることもない.依然として咳などの細かい気がかりやマナーはあるものの,娯楽の体験としては価値が向上した.これを理由に値上げすることは難しいだろうが,映画がより快適に楽しめる環境の開発がさらに進むことにも期待したい.