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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

Dilemma of Winner Take All

GAFAやBATはIT界の巨人として覇権を手にした.ただその強大すぎる力ゆえに制限も受けている.独占禁止法だ.こうした最近のビジネスと独禁法のジレンマを考察したい.

 

上記は欧州では特徴的だ.個人情報保護を厳格化し罰則もつけ,敵対は明らかだ.中国は先に鎖国にしたことで対抗できるBATを育て上げた.国家戦略に脱帽だ.日本ではこうしたIT関連は敗北と見れるだろう.

しかし独禁法は現在とてもトレンディーだ.パッと思いつくだけで楽天,コンビニ,携帯キャリアが挙がる.ほかにもアマゾンも楽天同様に問題を抱えているし,菅氏の方針として地銀の特例の解除も検討されている.先日,ドコモ口座の問題があった.この理由として,ドコモだけのみならず地銀のシステムの古さへの指摘も見られた.

「地方の銀行多すぎる」 菅氏の真意 :日本経済新聞

 

なぜこんなにも独禁法に引っかかってしまうのだろうか.単純な答えとしては独占・寡占により利益が非常に大きいからだ.これは経済学のゲーム理論でも有名な話だ.ただこの構図は携帯キャリアくらいしか単純には当てはめられないように思う.

他は優越的地位の濫用が挙げられる.楽天などはプラットフォーマーとしての優越的立場から不当に加盟店に負担を求めたことが問題になってしまった.コンビニも小売としての在り方はプラットフォーマー的だ.ただ顧客は問題になっていない.加盟店側が被害者的立場だ.FC契約が主因と言える.業務を委託しているにも関わらず,業務形態を本社がパッケージブランド化し,24h営業や割引,廃棄の管理を支持してしまっている形だ.こうした要求が不当に大きすぎるとして顕在化した.特に人手不足などの問題も大きかっただろう.バイトでまかないきれないオーナの負担はかねてから指摘されていた.反発要因もあったが,FC潰しなどの強権的支配を敷いていた.

これらを考察すると構造的要因が大きそうだ.現在はどこの企業も分社化していて上流から下流への委託は一般的だ.それでも親会社が同じなら,結局は直轄で資本を半ば共有しているから問題はなさそうだ.問題は下流に外部が絡む場合だ.その場合,下流への配慮は上流にとって負担でしかない.toBとして収益を巻き上げることの優先度がより高まる.それでも上流が好調なら,win-winの関係が築ける.ただそれは永続的ではない.上流が不調になれば,しわ寄せは下流に来るのはどの界隈でも同じだ.それが顕在化してしまうと独禁法の優越的立場の問題になると考えられる.

ただ結果的に行政処分となったり,返金騒動で社会的信用を失うことに繋がる.信用経済の現在,これは痛手だ.そのため不調であろうとも,下流を不当に責めすぎない意識が必要だ.しかしそれでは競合との競争に負けてしまう.だから仮に不当と分かっていても圧を回避できない.

まとめとしては,資本主義の限界というのが結論だ.

 

さらにその背景にWinner take allが挙げられる.これは勝者全取りという意味だ.特にプラットフォーマーはその傾向が強い.ユーザを囲い込めれば,ビジネスで非常に優位に立てるためだ.これは合法的だし,資本主義としても健全で非はない.そのためいずれの業界も,これに向けたオールインのチキンレースになりがちだ.

プラットフォーマーとしては,動画の覇権のYouTubeや国内チャットのLINE,アメリカではFacebookが挙げられる.

そしてチキンレースは現在でも熾烈だ.CASEやMaaSは一般化し,世間の注目も高い.これによりTOYOTAが天下を失う日も近いだろう.提携したSoftbankはファンドとして投資先が筆頭でありなあがら大きくなることを虎視眈々と狙っているようだ.

また各種Payも同様の様相を呈している.Origamiは先日破産しているし,そろそろ業界の限界が見えてきそうではある.日本のような現金の信頼度・利便性が高い地域は海外ほどうまく行かないだろう.メルカリもユニコーンとして注目度は高いが,収益化が本当に見通せるのか,資金が保つのか個人的には懐疑的だ.仮にうまくいっても上述のような加盟店への権利の濫用には十分注意しなければならない.

そういう意味でクレジットカード会社はうまくいなしている印象がある.これも手数料などの負担がそれなりに重いというのは有名だ.ただよく調べてみると,これも問題があったようだ.PayがいくらIT化を駆使するとしても,これよりも魅力的な手数料での運営は苦しいように考えられる.

 

これらをまとめると資本主義の結果として独占・寡占が有利な背景があるものの,そうした権利の濫用は法律で縛られている.そのため企業はこのラインを超えないようにしつつ,競合と正当に競争しなければならない.

実現可能だろうか.

そもそもの経済システムに無理があるように感じられる.正当に競争といっても,一社が秘密裏に違反すれば,そこが儲かる.勝てば官軍だ.他企業を淘汰できれば半ば独占もできる.法的措置や信用失墜と利潤のバランスは市場規模が大きいほど不釣り合いになるだろう.まさしくジレンマだ.

最近はこうした構造もあってかオープン化が進んでいる.財務やデータを開示せよという圧力だ.確かにこうした動きは上記のカウンターになる.

 

個人的にはもはや公有化してもいいように感じる.公有化で不正を防げるとは考えないが,バランスの難しい競争をさせるくらいなら,最初から最適化されたライン・料金水準でサービスを提供できないだろうか.規模の経済も働きやすい.分かりやすいのは中国,BATか.国家主導なこともあって,そのあたりの矛盾はない.確かに共産主義的でやや危険な思想であるし,ソビエトの失敗の歴史もある.またBATが下流に優しいとも限らない.たださらなるカウンターの一手となりうるのではないだろうか.

さらに今後AIの台頭で仕事が減るシナリオを考えるならば,こうした方向の相性は高そうだ.国民総公務員というのはある意味日本国民の本望でもありそうだ.