修論の収拾がつかない
— AOKI Takashige (@aochan_0119) 2020年12月19日
多分,年末年始も忘年会もないことだし,親の実家への帰省も難しそうだし,籠もりきり,缶詰で作業することになると思う.
多分,ここを書いている暇もいよいよなくなってくるので,頻度が著しく落ちそう.
借りた本も研究に関係ないものは読めずじまいになるかも.
研究内容との直接の関連はないが,類似する話を最近非常に目にするので,改めてまとめておきたい.
豊田社長記者会見
自工会 豊田章男会長 、カーボンニュートラルと電動化を語る 「自動車産業はギリギリのところに立たされている」 - Car Watch
上記の記事の引用のツイートを見かけた個人的な ファーストインプレッションは以下の通りだ.
言っていることは分かるけど,発電に関してはその分ガソリンが減るわけだし(総化学エネルギーとしてはむしろ燃費が低くて下がる),費用はマクロ的にはむしろ新産業の発展に伴い投資,雇用が増えて悲観することでもないような
— AOKI Takashige (@aochan_0119) 2020年12月18日
感想
実際のところ,EVに関連する研究内容だし,ポジショントークな部分は否めない.
ただ上記の記事は天下のトヨタ様の発言をまとめたものとしては,非常に弱気と感じざるを得ない.
こうした発言は産業界や投資家への影響も大きそうだ.
気になったのでトヨタの株価の推移を見てみたが,この発言を受けての変化は特に見られなかった.むしろ公共交通から自家用車への移行のためか,ここのところは上昇トレンドに見える.
攻めのテスラ
翻ってテスラのイーロン・マスクは攻めの印象だ.
燃料電池トラックのベンチャーだったニコラも強気の数値,発言で注目を受けていたが,虚勢(というか詐欺?)だったので,強気を一概に評価はできないが.
そう見れば市場は豊田社長を冷静と見るか.
守りのトヨタ
上記の記事の発言の中には,様々な数値が具体的に示されている点は評価できる.
そのモビリティである軽自動車しか走れない道、その軽自動車しか相互通行できない道が日本には85%です。
ただこうした発言は微妙だ.事実ではあるが,実走行との関連は低い.
労働人口の言及も自動車産業が日本を支えるために善意で雇っているというよりかは,先述のコロナ特需が優位だろう.
こうしていくつかの部分を穿って見れば,経営者特有の舌のうまさに舌を巻かされる.
さも日本の”産業を守る”ためのように述べているが,そこは完全に守りに入っている.
グローバルのEV市場を取りに行くような気概が感じられない.
これは以下の記事にもあるように,トヨタ,あるいは自工会のメンバーのメーカがEVという破壊的技術に乗り換えられなかった証左だろう.
そもそもできていれば,テスラを提携のタイミングで買収していたはずだろう.
さらにそれに際し,政府の補助を求める姿勢も苦しい.
トヨタ批判
トヨタEVが、なぜ遅いのか失敗を認めない誤記事 | 中古車買取査定君のくるま情報
毎度おなじみですが、メーカー資料をメーカーの好都合のままに解釈し、メーカーの代弁者で説明してしまうが池田氏の記事です。
そこには、メーカーの言い訳や詭弁を突き、コメントするジャーナリスト本来の知識や役割が一切見えません。(中略)
「大手新聞社の多くは、記者は多分全く意識していないが、ドイツのプロパガンダに強い影響を受けてしまっている。」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1908/26/news032_6.html
全くの誤りであり、トヨタHVを妄信するあまり、物事を本質が分かっていない様子。
断片的側面だけを見てトヨタ擁護を繰り返す池田氏。
カーボンシャーシに関する言及は読んでいてなるほどと思った.
研究においても本体の軽量化は考慮していなかったので,含められればと思う.
引用にもあるように上記の記事では,池田氏を筆頭に自動車関連のジャーナリストを痛烈に批判している.並行してトヨタを中心に,EV転換に乗り遅れたメーカも非難されている.
EVとイデオロギー
EVに関する議論は,革新派と保守派(ガソリン車支持)の対立が,激しくなっていると感じる今日だ.
というか環境のテーマがそういうもので,アメリカ大統領線にもあったようなものに似たイデオロギーを感じる.
技術とイデオロギーというと文脈は変わるが,以下が示唆に富んでいて面白い.
科学理解:環境問題意識の醸成という社会課題
日本の科学理解はやはり未熟か.
環境を始め科学分野について,市民の関心が高く,深く議論されるのはいいことだ.
しかしデータに基づかない妄想だったり,デマが広がることは望ましくない.
日本学術会議が政治的議論になったりして,そもそも周知もされていない状況が危うい.
この辺を含め,修了後にでも下記を再びまとめてみてもいいかもしれない.
皇室でも大学でもYoutuberでもいいから,アウトリーチという日本の潜在的な社会課題解決を期待したい.というかそういうことを少しやりたくもある.働きながらも難しいだろうが.
Youtuberといっても,中田敦彦,DaiGoあたりがアレで,そもそも数字取れる,ウケるのがああいうのだから,かなり難しそうだが.
日本のMIRAIは?
双子の赤字
ぶっちゃければ,EV自体の議論はどちらでもいい.
ただ日本がこのままEV化の流れに取り残されると,いよいよ日本の未来も真っ暗ではないかと思った.
双子の赤字だ.
日本はこれまでバブル景気と加工貿易で大きく成長してきた.
半導体や家電は日本の主要産業としては,既に力を失ったが自動車はまだ日本の中枢産業だった.
しかしEV化の流れに乗り遅れて,自動車の外需を取り込めなくなると,マクロ的に日本の貿易黒字が大きく減少する.大きな市場だったアメリカも,テスラの勢いがさらに増せば,売上の減少は不可避だ.
また国内でガソリン車が使われ続ければ,石油の輸入を止めることもできない.
EVは再エネによりエネルギー自給率を高めることもできるが,保守でこれは達成できない.
こうして構造的に貿易赤字が恒常的に広がることが予想できる.
2つの赤字,まさしく双子の赤字は,歴史的にも国家的難問であることが示されている.
現在は財政赤字でも日銀の働きと貿易黒字でなんとかなっているが,貿易赤字となると一気に状況が悪くなるかもしれない.
大東亜共栄圏
こんな副題をつけると顰蹙を買いそうだ.
もちろんかつての植民地支配は忌避されるべきだが,そも日本に統治する力はもうない.日本は前述のとおり衰退不可避だ.
そうした中で地政学的利点を活かしながら共栄を図るのが最も賢いと見える.
そういうニュアンスだ.
そういえば脱亜論は読んでみてもいいかもしれないなあ.
ところでコロナ対策やIT戦略において,台湾の台頭は目をみはる.
親日と言われるが,ある意味中国が抑止しているのは,日本の産業界からしたら助かっている面があるのではないか.
「モノづくりを考えると、工場へのアクセスも大事です。僕が設計するものは日本で作ると割に合わないし、そもそも作れる業者がない。その技術がいま台湾に集まっているんですが、福岡だと台北と東京って同じ距離なんですよ。ここだったら、30、40分で博多に出られるから、午前中に家を出れば昼前には台北の工場に着く。このアクセスの良さは大きなメリットですね」
この話の流れで、「日本からイノベーションが生まれないのはなぜだと思いますか?」と質問した。その答えは、しごく明快だった。
「その理由はハッキリしていますよ。日本のメーカーに勢いがあった時代って、エンジニアがトップに立っていたじゃないですか。ホンダもソニーもそうでしょう。僕は、そうじゃないメーカーってひとつも知らない。でも企業が大きくなって、営業とかマーケティングの人がトップになってから、面白くなくなった。今は営業マンのほうがエンジニアより給料が高かったりするでしょう。泣けるよね。少なくとも、アップルはそうじゃなかった」
なるほどね.面白い.
トヨタのいいところ
ここまでトヨタを中心にEV保守派を批判するように書いてきた.
しかしトヨタもさすがと思うところもある.
KINTO
例えば車のサブスクKINTOだ.
地方はしばらく自家用車が続くだろうが,別の交通機関も便利な都市では自家用車が余っている.これまでは買うか,レンタルしかなかったが,そこにメーカ自ら新たな選択肢を提示できているのは好感が持てる.
パーク24を受けていた時に,とんでもない競合が現れたのではないかと焦ったものだった.
さらに地方のMaaSなどへ広げられるとよさそうだ.
また自動車の販売としてディーラの存在価値の低下は避けられないが,保守管理の拠点として一定の需要は残りそうだ.
FCV
また先述の記事ではFCV開発を強く批判している.
確かに昨今の状況において,あちらもこちらもな姿勢は評価の分かれるところか.
日本一のトヨタならではの戦略とも見れるかもだが.
確かに乗用車においては高コストな上,ステーションの建設の低迷が足を引っ張っている.
しかしいずれの課題も商用車であれば,相対的に軽微な問題になる.
実際にバスでは空港や臨海部を中心に導入が進んでいる.
日野との提携も発表されているので,この取り組みは一概に批判できない.
とはいえ開発が難航して,次世代バッテリーの開発がうまくいけば,商用車を含めすべての市場を奪われる可能性もある.