AOKI's copy&paste archive

高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

【書評】人間らしさ

f:id:pytho:20210119104211j:plain

先日,図書館で上の「人間らしさ」を読んだので,内容と感想をまとめる.

とはいえ時間の都合で4/5章しか読めなかった.

 

本書の選択理由といしては,学内のランキングか何かで上位にあっためだ.

著者は弊学でリベラルアーツ系で教鞭をとっている.そうした講義の内容を著者の経験も踏まえまとめられている.

 

本書のタイトルは人間らしさとなっているが,著者は東工大生にいわば非人間性を感じる瞬間があったようだ.当ゼミでは慶応の看護系女子学生と合同で行われるらしいが,東工大生が”やはり”モテないらしい.女子の意見いわく,システム的な思考回路だからというらしい.確かに理系の集まった集団のため,理論への信頼は高いし,それを前提としたエコシステムが築かれている点は否定できない.これは科学研究において非常に効率的だろうが,社会的な生活にはなじまないようだ.なんとも耳が痛い.

 

さらにその中でも同質化が懸念されている.というのも優秀な学生の集まる東工大生は,結果的に都内の進学校の出身者に多くを占められている.これはミクロに見れば非常に喜ばしいことであるが,マクロで集団として見ると同質化してしまいやすい.

昨今では多様性を求められ,そういった属性の化学反応の期待とは裏腹だ.そのため東工大としては,多様な学生を集めたいのが筆者いわく本音のようだ.しかし既存の入試制度・システムにおいて,その実現は難しい.

そこで筆者はアドミッション・ポリシーの改革の必要性を訴える.これまでは試験の点数のみで決定され,そうした仕組みへ強みを持った集団(学校,予備校)が有利になっていた.アドミッション・ポリシーとして多様性の重要性や評価基準を明記することにより,ある意味恣意的な人材確保に努められるとしている.

海外では進んでいる動きのようで正当性は高そうだ.一方で個人的な懸念もある.類似する施策として,特に私立大学を中心にAO入試などが拡大してきた.ただ私の感じる限り,こうした制度への風当たりは悪いように感じる.また今回の話とは真反対だが,医科系で女子を差別する事実もあった.そのため導入には透明性と公平性を担保しなければならないだろう.

 

蛇足になるが,こうした大学の動きも加味すると,受験戦争が虚しいものに思えてくる.塾講師は非常に稼げるバイトだが,保護者からしたら金銭負担がバカにならない.テストの点数で評価される仕組みは落ち目になっている.そのため教育方針として,もっと実用的で主体的で趣味にできるようなものに移したほうがいいと思う.

それから教育関連でもう一つ思うのは公教育水準の低下だ.教師の職場環境のブラックさは顕在化して久しいが,ゆえに優秀で信念を持った教師はぶっちゃけ少ないだろう.若手の日本人研究者にしてもそうだが,業界が弱いと他業界か海外へ流出してしまう.そこで保護者が家庭内で行う教育やふれあいの重要性が相対的に増すものと考えられる.

 

 

話を戻そう.人間らしさのテーマとして,人間の代替可能性についても考えている.マッチングアプリの台頭によって,恋愛はより相対化されたといえるかもしれない.そこで上振れ期待感,すなわちもっといい人がいるかもしれないというパラドックスに陥りやすくなっているのではないかという指摘もされている.確かに恋愛市場に関する種々の議論で見かけるスキームだ.相対化により恋愛は良くも悪くも陳腐化したかもしれない.

 

 

また分かりやすい人間らしい生き方として実存感をあげる.今更だが,本書は哲学的な問も含んでいる.延命治療や終身医療,不妊治療は人間らしいだろうか.根源的に見れば”不”自然だ.しかし時代変化と技術進展がある.個人的に終末期医療は意義を感じられないし,不妊治療も晩婚化の弊害と感じているが,人間社会の発展の賜物として現代社会はこれを使い潰してもいいと思う.

類似するテーマとして考えたのは,生理用低容量ピルの可否や中絶における親権者の同意の問題だ.前者は当事者と管理者の間に認識の大きなズレがあるように感じるが,そこを超えられれば解決に向かえそうだ.後者は倫理的にも難しい.

 

本書ではこのような後者の問題を特に宗教観に絡めて議論している.日本は無意識的な神学的な思想を除けば非常に自由だ.一方で西洋諸国はキリスト教が強い.またワクチンには苗の鶏卵の命のタブーさの問題がある.

 

 

後半からは筆者のスリランカの留学エピソードを中心に語られる.筆者は典型的な秀才だったようで東大在学まで井の頭線井の中の蛙だったようだ.ただこの事実をこうしてさらけ出すのは非常に好印象だ.スリランカの話題では社会のセーフティネットとして機能する側面を持つ悪魔祓いが紹介される.詳しくは本書を.

これにより孤独を回避しつつ,金持ちが積極的にこれを利用して祭りを主催することにより結果的に再分配も行われ不平等感が緩和されるという.

 

 

かれこれ本書が人気なのも納得できた.特に東工大生的理屈っぽさは強みとしつつも,人間らしくあるよう留意して生活していきたい所存.