英語がいい感じだったこともあり,社会人としてこの力がどうなりそうか興味深い本があったので読んでみた.
全世界の従業員に匿名で半構造化したインタビュー調査を行い質的データと量的データを収集した.それをMPLUSモデルを用いて統計的に分析したようだ.本書にも補遺として簡単に下記のようなものがまとめられている.詳細は論文に譲るところだろうが,非常に興味深い.どうせハーバードの経営学の大人気講座にもなったというものを理解しきれるはずもないので,この簡単な紹介で個人的には十分だ.
本書は調査対象の属性として,言語と文化に着目し,
- 言語で阻害感を受ける日本人
- 文化で疎外感を感じる英語話者(主に米国人)
- いずれにも疎外感を感じるフランス人やタイ人,ブラジル人など
を挙げ,章ごとに解説している.
この詳細は本書に譲るところとして,全体的なこの点の感想としては面白くも,説明が繰り返されくどいようにも感じた.
要は1は当初当惑するものの社長のリーダーシップなどから結果的には困難を乗り越える,2は当初母国語の使用を歓迎するもののトロイの木馬よろしく日本式の楽天文化の洗礼に困惑する,3は最も困難に思えるものの却って積極的に受け入れ柔軟な姿勢となるとまとめる.
特に3については面白いので,個人的に興味深かったものを引用する.
アジアの国やアジア系の企業で働くことに関心をもっている人は大勢います。そして間違いなく日本には利点があります。きわめて安全ですし、国際的な文化がありますし、ご存じのように食べ物もおいしい。生活するにはおもしろい場所であり、ほかのアジアの国ほど空気も汚染されていません。ところが英語化を実施するまでは、非常に有能なエンジニアが日本で働こうと思っても、興味をもてるような機会を見つけるのは困難でした。でも、いま、かれらには楽天があります。ですから、いまでは世界各地のきわめて有能なエンジニアがわが社に強い関心を寄せています。
フランスの労働法では、企業がフランス語以外の言語で仕事をするよう社員に要求したり、フランス語以外の言語能力で社員を評価したりすることをいまだに禁じている。また多様な文書、たとえば法律の文書、国内や対外的な規制に関する文書、そして人事に関する文書は、フランス語で記されたもののみが法的地位をもつ。英語が堪能であることは、日本と違い、職務評価や昇進において正式に認められた能力ではない。
他にも興味深いのは,国ごとの社会文化形式だ.
欧州系が個人主義なのに対し,アジア系などは集団主義の傾向が強い.
これが楽天の社風にも表れ,特に2の米国人などには受け入れがたい場合があったようだ.また3は集団主義的地域が多かったために,受容性が高かったのではないかと考察する.
さらに3の彼らはもともとグローバル志向が高く,会社の方針と親和性が高かった点も挙げられている.
そこではこうした2者の違いを指すことが多いだろう.
そこで従属的な変化としての給料や人事制度として年功序列,成果主義の違いが表れている側面もあるのではないかと思った.
もっとも特に成果主義は日系企業にもかなり浸透してきた印象もあるが.
さらにグローバル化を見据える企業や役員向けに,事例として一助になると紹介する.
注意点なども書かれている.
本書は公用語化の利点も示している.
本書の示すものに特段目新しいものはないが,やはり社内の国間でのコミュニケーションの円滑化によるシナジーや速達性の利点は大きそうだ.
そしてこれらの分析結果をまとめた講義は冒頭でも示した通り人気なようだ.
ハーバードのビジネス系(経営学系)とのことで,以下のようなTOTALでやったようなこととの関連性も高いのではと思った.
まあ色々ある会社ですが..
楽天、日本郵政・テンセント系などが出資 計2400億円: 日本経済新聞
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