タイトルの通り目黒の庭園美術館を主として外出してきた.
個人的には大大大満足だった.
V&A museumやトーハクにはさすがに及ばないものの,中位の美術館としては一線を画す印象.
以下で詳述する.
ところで,ちょうど八丁堀の行きつけの喜多方ラーメンのお店が,だだちゃ豆の特別メニューを提供していたので,ランチはまずそこへ.
昨年などは知りつつも学校の都合などで逃してしまっていたのでリベンジが叶った.
上は玄米でのきまぐれご飯.
下がだだちゃ豆のスープのラーメン.冷製.
当店は手延べ麺も絶品だが,これらのメニューは独自の別の麺が使われている.
実は似たメニューとしてとうもろこしのものも2年ほど前に食べた.
個人的にはそちらの方がクセも少なく美味しかった印象.
そして山手線をおよそ半周して東京駅から目黒駅を経て庭園美術館へ.
入場は予約の上,ぐるっとパスで実質無料.
庭園美術館という名前だが,ここの本質がどこかというのは意外と難しい問いかもしれない.
もちろんその名に関する庭園も見事なものだが,アール・ヌーボー様式の洋館の本館も劣らず見事だからだ.
しかし庭園を関するだけあり,旧古河庭園にも似て,日本庭園と西洋風の庭園の両者を備えている.
両者のシナジーや境界の工夫は前者の技工が素晴らしく感心し面白いところだが,特に西洋風の要素はこちらが勝る印象だった.
また日本庭園も負けていない.
以下は茶屋で当然ながら和室だが,天井も高めで既存の枠組みに囚われていないのが興味深い.
ここの欄間のとり方も自然でありながら,型破りで面白い.
ただこれを遥かに上回ってすごいのが本館だ.
本館のその建築だけでも旧岩崎邸同様に素晴らしく感心するが,今回は建築にも携わった芸術家の企画展も同時に館内で催されている.
それがルネ・ラリックだ.
特に彼の人生,芸術の時代背景を踏まえて分類された展示は,比較容易で面白い.
コンセプトの合致する諏訪湖の北澤美術館の作品も多く寄せられている.
私自身も可能ということで写真を撮ったが,以下の学芸員さんの話が整理されていてベストだ.
youtu.behttps://youtu.be/sp4JDvvprFU
玄関入ってロビーの手前のすぐの空間.
玄関の段差と明かりを利用した建築の空間的面白さと美的センスの高さに感嘆させられる.
ドーム天井を思わせる空間の豊かさを持った食事スペース.
Royal Societyの一部屋を私に彷彿とさせた.
あまりアクセサリーには興味がなく写真を積極的には撮らなかったが,企画展の第2章は小物のディティールが凝ったものに集約されている.
そこに貴金属が使われ華美ではあるものの,ガラスを使った案外素朴で自然な美しさも使っている.
むしろ貴金属はそれらの引き立て役な印象もあった.
この頃からガラスのセンスはピカイチだったようだ.
それから上のような比較的外径の大きなものへ移った.
特に直上の写真は時代背景もあり,古典の影響が大きいものだろうと推察された紹介がある.
宗教画のような雰囲気も感じる.
ただそれがガラス細工の作品として残っていることが珍しいように思われる.
憧れる広い書斎.
配架の量に加え,写りきらないドーム天井の豊かさたるや.
バルコニーから豊かな庭園を見下ろせるのもいい.
上でこちら側からの写真を載せたが,やはり本構造物のファサードはこの面か.
画像では伝わらないだろうが,上のガラスのツボは正多面体を模しているためか,微妙に角度を変えると透過や反射の具合が変わるのが妙に面白い.
洋館とはいえ和の要素を備えた部屋もあった.
とはいえフローリングで折衷な印象は強いが.
ただこれらのフローリングも只者ではなく,見ての通り寄せ木が採用されている.
作品を裏から凝視するとヒビが.
あるいはガラス細工特有の残された気泡も,その不完成性が味を出している.
以下は当時のカタログや展覧会のポスター.
彼は初期はアクセサリー,中期に家具に類する作品を作ってきたが,以降の時代もミクロ・マクロの両方に関心があったようだ.
ミクロとしては庶民まで日常使いするような香水などのパッケージ,マクロとしてはここのプロジェクトのような建築やアールデコ展での作品が挙げられる.
現代も高い香水は入れ物も凝っていたりするものなのでしょうか.無知.
昼食は先に十分にとっていたので,喉も乾いていたので飲み物を目当てにカフェへ.
コイツが当たりで900円と高くはあるものの,ソーダの辛味にベリーの甘酸っぱさと総合的な香りがよかった.
手前は本展覧会のガラス細工などをイメージしたようなデザート.
メロンはやや苦手だったが,これは普通に食べられた.
蝶を模したチョコや下部のクリームの濃厚さと,フルーツとナタデココと砕いたゼリーのさっぱりさのシナジーが非常に高かった.
これらの要素もあって総合満足度は非常に高かった.
また目録も通常であればただの一覧に過ぎないが,くどくないほどよい脚注がある上,ペラ紙一枚でもなく品がある.
ただ意外と2時くらいとまだ時間があったので,別も見て回ろうと思った.
せっかくなので近場で検討し,徒歩圏内なので写真美術館に行くことにした.
実はこれはやや失敗だったのだが..
目黒-恵比寿間のアーチ橋.
アール・ヌーボーみを感じないこともないのは気の所為か.
で,恵比寿ガーデンプレイスに到着して入場も済ませてしまったわけだが,展示入れ替え中で展示が少なかった.
これが後悔だ.
しかも写真で載せた動物は見たかったなあと悔やまれる.
では何を見たかと言うと,山城知佳子リフレーミングという企画.
沖縄出身の女性で戦争関連が色濃い.
目録などでも直接的に言及されているわけではないが,伝えたいことは米軍基地の土地やその埋立工事,あるいは語り部活動であることは分かりやすい.
表現自体は芸術家らしくくどくて分かりにくい言い回しや表現に見えるが,あるいはその解説の問いかけ形式の記述が明確化させている.
ただ映像としてならまだしも,解説がそれに棘を付け加えてしまっている残念さを個人的には感じた.
そう写真美術館でありながら,次元が1つ増えている企画だった.
ただ解説のせいにも思えなかったかもしれない.
というのも副題についているリフレーミングというのは,映像作品の1つのタイトルにもなっているのだが,それが案外直接的なのだ.
あらすじから引用する.
村に住む若者・探求は,仕事もせずに延々とボクシングの「防御」の練習をしており,琉球士族の末裔おじぃに「鍛えてばかりで1度も試合に出たことがない」とたしなめられても「動こうと思ったときに,いつでも動けるようにしたいだけ」だと意に介さない.
政治色が強いだけに個人的な感想を書きにくい.
ただ私個人としては,経済などは広く左派の姿勢であるものの,直ちに戦力を放棄する思想ではない.
沖縄の負担は確かに大きいだろうが,地政学上避けられない問題と認識しており,この企画展の本質的な目的すら懐疑の姿勢だ.
ただそうした反対の思想の政治に関して,芸術活動を通して風刺や批判,啓蒙を行う姿勢自体は面白い.
あるいはもっと落とし込んで,ロケット弾のような火器の表現にボイパを重ね合わせたりするのも試みそのものが面白い.