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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

心理工学的に優れたプロダクト

書籍のレビューを元に、既存のサービスを見てみる。

心理工学というのは行動経済学をやや自分なりに再定義してみた。
個人的には学術上は経済学と心理学を組み合わせた行動経済学という分野はありだと思うものの、これを実践に応用したものは経済学の応用のさらに応用として位置づけが微妙に異なるように思う。
そしてそこに経済学的な要素はもはや弱く、翻って心理学の強みを実践的に応用した要素を強く感じる。そのまま応用と頭につけてもいいが、工学の方が工学出身としても馴染み深く、文脈的にスッキリしないだろうか。

御託はここまで。早速まずは基本原則的な部分の引用から。

CREATE アクションファネル

CREATE アクションファネル

5つの心のイベントがある。キュー(Cue)によって自動的に、直感的な反応(Reaction)が呼び出され、場合によってそれが意識に上ってくると、費用対効果の評価(Evaluation)が行われ、続いてアビリティ(Ability)と適切なタイミング (Timing)が判断される。これらが行動を実行する(Execute)前提となっている。お気づきかもしれないがこれらの頭文字をとるとCREATEになる。これらの5つの要素によって、行動をつくり出す(CREATE)ことができる*12。

以前も話した通り、現在は主にマーケティング企画を業務の中心においており、そこでジャーニーマップ的な、現代的に昇華して言うならデザイン思考的に検討をする。
これを要素分解して体系化、一般化、形式知化して落とし込んだ形としては非常に納得できる定義だ。
これに関連して述べられているが、消費を喚起するにあたって、これらの要素は密接に関連づいており、いずれの要素も満たすことが一般に求められる。
一般的なマーケ施策、アド・広告のみでは、キューにはいくらか喚起できてもタイミングが難しいことが多い。
ただCVRは悪くても、認知拡大としてのコストとして一定の妥当性を感じられるから産業として成立するのだろう。TVにしろネットにしろ交通機関にしろ。

また費用対効果へのアプローチには主に2通りあるように思う。要は広告に価格を載せるか載せないかだ。
価格を載せれば反応を呼び起こせた場合に、直ちに評価をしやすいという価値を提供できる。
一方で載せない戦略も理解できないわけではなく、尻込みを避けさせる、マーケ担当者の損失回避的な心理効果を予想できる。
ただ1個人の感想としては、広告を打つなら目安となる価格は示してもらった方が、調べるコストを省けて楽だ。オープン価格などで難しい場合はあるだろうが。

しかし価格を開示してなお費用評価が難しい場合もある。顧客がその商品の現在の支払価格や業界水準を知らなければ、そもそも適正な評価に結びつかない。
ややこしい金融商品や通信費は典型例に思える。上記の広告にそれらの比較すら入れ込めないこともないが、そうなってくるとビジーだし、敵に塩を送りかねない。

タイミングを勝ち取るという意味においては、もはや広報よりも営業に近い。
評価を手伝う店頭・電話窓口なんかもあったりする。
ゆえに社内の部署もこのプロセスにおいて、グラデーションを有して有機的に連携しながら、自社拡大を図っていると言えそうだ。

こう考えるとKPIとの関連性の再定義もできそうだ。例示してみる。
キュー:広告のVisit、営業のアタック数
反応:広告からのクリックCVR
評価:HP/LPのアクセス数
アビリティとタイミング:申し込みページのアクセス数
実行:(営業の)獲得数または金額など

ただToBビジネスだと特に上流の様相も変わってくるだろう。

OMO

ある瞬間の習慣を乗っ取った事例としてわたしたちに馴染み深いのは、リアル店舗での買い物でスマートフォンを見る行動である。

  • キュー。カメラ、パソコン、 その他の好きなものを見る。
  • 変容前のルーティン。それらを手に取り、レジまで行って、購入する。
  • リワード。お金を節約できてよかったと思うこと、素敵なカメラを使う自分を想像できること、 商品を受け取れること、など。

この習慣の乗っ取りはリアル店舗殺しにつながる。そのため「有益な行動変容」ではないかもしれないが、根っこの原理は同じである。

なるほど。Amazonにそうしたサービスがあった。AIの商品の画像解析機能もあったが、店頭ということを考えれば梱包されていることも多いし、バーコード・JANコードの方が無難かも。
前者は店頭というよりかは、友達の家やカフェ・ホテルで気になった時とかが好相性か。

そうして考えると、後者が引用と好相性そうだ。これは前提として強力なECを持っていることが前提で、楽天(なぜかトップにはない、探すタブ側)やビックカメラのアプリなどにもある。他にも読書メーターでも類似機能を使っている。

非エンジニアの私でも簡単なことがわかる。こちらなら高度なAIを使わずとも、20世紀に既にあったレジのバーコードの機能の移植で済む。プロならバックエンド側だけなら1人月もかからずできそうだ。既存の複雑なフロントへの組み込みは大変そうにも思えるが。
だからこそ天下のAmazonは後者のAIで優位性を保とうとする戦略だろうか。

あとはどれくらい使われるかというところか。
高額商品であれば比較することは多いので、悪くなさそうだ。
以前は競合他社を買回り品として足で比較することになっていた。
そこを電子化するのは顧客への提供価値としても極めて高い。

Amazonは完全に店頭購買を奪い切る算段だろうが、他の会社はそうでもなさそうに思える。
これこそOMOとして。