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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ3:エネルギー関連の論文レビュー

Interview and Community Participation Event About the Area History for Finding Attractiveness of South Town in Prague

YunoTanaka,KiyokoKanki

Procedia Engineering Volume 161, 2016, Pages 213-2202016, Pages 213-220

内容

序説で聞いて面白そうだったので.チェコでは社会主義時代にパネル工法のプレハブ住宅が多く建設された.これは画一的でマイナスイメージも多く,老朽化で問題点が多い.しかし地域再生の要になることも考えられる.そこで資料分析や関係者のインタビューを通して,地域の再評価することを目的としている.地域としては,大きな住宅地であるプラハ南部の JM を対象とし,イベントでのコメント・インタビューや地域史などを用いた.

コメントは主に 4 つの分野に分類し,利便性,記憶,趣味・嗜好,公共の価値が価値に寄与しているとまとめている.住宅開発の当初から,公共施設や交通アクセスが評価されてきた.しかし当時は住宅の建設が先行し,それ以外の基盤の整備が遅れ問題となっていた.また JM の周辺の緑地は,憩いの場や運動する場として評価された.これも当時は写真のような空き地だったが,社会主義時代に欠けていたアメニティを付加することで,生活水準が向上したとしている.

結論として JM の改善の努力などをまとめ,世界中にある団地的なものに応用し,ユニークな空間にしていけるだろうとまとめている.

感想◎

地図上に特性が記述されていて見やすかった.やはり建築寄りな感じではあったが,社会背景と比較して考察するのは,あまり見たことがない形式だったので興味深かった.またインタビューなど現地との交流などが行われ面白そうだった.また都市計画分野では,利便性や公共性がどうしても重視されているが,住民理解などを得るには,個人的な記憶や趣味に寄り添えることも大事なのだろうと実感した.

事業性を考慮した再生可能エネルギー導入拡大のあり方に関する研究
東京都区部の再開発事業を対象として

中 朝哉, 村木 美貴

都市計画論文集 Vol.53,No.3,2018.

内容

これまでの類似した研究では,補助金支援制度を軸とした議論であった.これは太陽光発電の事業などで社会問題にもなっている.また排出量取引制度による再エネ拡大も論じられていない.そこで,資金補助によらない排出量取引の活用による再エネの費用負担軽減について検討することを目的としている.なお,対象地域は東京 23 区の評価が可能な再開発事業 75 地区としている.東京は 30 年までに CO2 を 38%減らすことを目標にしている.また民生部門の削減が大きく設定されており,一方で運輸部門の削減目標は小さくなっている.

再エネの補助金制度は,一定の自己負担が求められ,公募制は補助金が得られないこともある.一方,排出量取引は CO2 削減量に比例した収入が得られ,自治体の財政負担もなく導入の動機付けが期待できると述べている.先の 75 地区の再エネ導入状況は 26 地区にとどまっている.理由としては,設備費用の高さが筆頭に挙がっている.

環境性経済性について,原単位法で試算した.環境性については,再エネと省エネを組み合わせることで,目標の 38%を達成できることが確認された.また容積の大きい建物では熱効率の観点から,省エネの効果が大きく,小さい場合は相対的に再エネの効果が大きい結果が得られた.経済性については,省エネは CO2 の削減が黒字になるが,再エネは削減するよりも導入費用の方が高く,費用補助の必要性が改めて確認された.これらを総括て,再エネの効果がより見込める地域でインセンティブを設定すべきだろうと述べている.

排出量取引について,価格決定や削減目標に様々な仮定をして,3 つシナリオで分析した.CO2 の取引価格が高いほど,削減義務率を下げるほど,CO2 削減費用が小さくなった.

感想◎

日本における再エネの導入が難しいながらも,効果は十分にあることが分かった.再エネが声高に叫ばれているが,省エネも依然として重要だし,むしろより効果的で経済的なのは少し意外だった.


イングランドの都市計画における再生可能エネルギー政策とその実現性に関する研究

村木 美貴, 小倉 裕直

都市計画論文集 No.40-3,2005.

内容

イギリスの都市計画の再生可能エネルギーに焦点を当て,文献などをまとめている.中央政府,広域都市圏,地方自治体の 3 者で精力的に活動が行われていることが,改正された制度からうかがえる.特に大都市圏では,これまでの二層構造が簡易化され一層化され,都市計画において問題の長時間化の解決の 1 つとしているようである.さらに地方が上位へ上げる LDF も,これまでのものから詳細な部分が,別の補助計画文書へ移行されている.また参考文献からも「PPG22 の指導が不十分」との指摘が挙げられている.

広域都市圏の計画などについて,ロンドンなど南部の地域は,開発の件数が多く,そのためか都市計画についても,比較的詳細に定められている.またこれらの地域は,PS22 の策定後に定められたことも影響していると考えられる.開発圧力の高い地域では,都市計画権限が有効なため,エネルギー施策と都市計画を連携することの必要性が高いと述べている.

地方自治体については,31 の自治体を対象とし,26 が再エネの政策を行っていた.他は計画が古く,多くに自治体で上位の政策の影響を受けていると考えられる.内容としては,再ネの活用の奨励が非常に多いものの,景観・環境への配慮を求めるものが多く合理的である.日本においては,山肌を削るような不適切な開発がしばしば見られたように思う.ロンドン市においては,素材などの環境配慮はある程度見られるものの,再エネやコジェネレーションはそれほど進んでいなかった.

まとめとして,日本では都市計画の連携がまだ進んでおらず,イギリスに学ぶところがある点と三大都市圏の開発が盛んな状況から,再エネを用いた計画へシフトさせていく重要性を説いていた.

感想◎

都市計画と再エネを組み合わせている点は面白かった.やはりこの分野はヨーロッパが進んでいると思うので,各施策で参考にすべきだろうと思った.また日本では,先述したような制度の悪用がしばしばあるように見受けられるので,規制というよりは,制度の作る段階で適切な導入を促せるようにすべきで,その点も参考にすべきと思った.

五島市椛島における浮体式洋上風力発電について

宇都宮 智昭, 佐藤 郁, 白石 崇

システム/制御/情報,Vol.60,No.9,pp.402-406,2016.

内容

環境省再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査によれば,15.7 億 kW と推計されている.特に水深 50m 以深がその八割以上を占め,浮体式の導入が重要な背景がある.しかし現状では浮体式は黎明期であり,世界にも 2MW 級が数えるほどしかない.そこで日本においても実証実験を行い,結果などをまとめたものがこれである.まず小規模実証試験を行い,その後2MW 級の実証機を造るとしている.ここでは小規模実証機のみ記述されている.選定地域としては,地域の理解が得られ,風力発電する自然条件が揃う条件のほか,沖合 1㎞でケーブル敷設や観察がしやすい五島市が選ばれた.

建造はプレキャスト PC などを陸上でくみ上げ,うねりの少ない海で立ち上げ,試験地に移動させ,アンカーで固定した.天候待機を除き,5 日で施工できた.

H.24 の台風 16 号の直撃を受けてしまった.この際に,強風により主塔に過大な曲げモーメントが生じたものの,構造物は転倒・破壊することなく,強度上の課題が達成されたことが確認された.そして所定の点検後,直ちに運転再開可能な状況であり,非常に強かった.なお,陸上変電設備のみがこの被害を受けた.一方,台風により設計波高へ変更が生じたため,実証機では安全性から設計を一部変更した.

感想〇

エネルギー分野がテーマになるなか,洋上風力発電は期待が持てると思い読んでみた.エネルギーの試算などよりも,構造的な課題へのアプローチが多くを占めていたが,概ね面白かった.かなり良好な結果が得られていたので今後に期待したい.また今回はスムーズだったが,近くの漁業関係者の理解を得る点は計画系によくある課題が表面化するだろうなと思った.分野が異なってしまうが.環境省の試算などから,太陽光よりも実現性が高いと思う.

ドイツのエアランゲン市における太陽光発電の設置動向とその影響要因に関する研究

辻田 百合菜, 客野 尚志

都市計画論文集 Vol.50 No.3 2015.

内容

太陽光発電に関する建物用途や土地利用の詳細な把握を目的としている.導入時期からFIT 制度に関する分析と,GIS から土地利用に関する分析を行っている.ここで FIT とは固定価格買取制度のことである.

FIT の補助は徐々に減少している.学校や公共施設は設置のピークが早く,続けて住宅や商業施設に波及していった.その中でも下げ幅が大きいと,駆け込み需要が増加すること確認された.ゆえに導入を促すには,長い周期で一度に大きな下げ幅にした方が期待できると言える.

土地分布としては,地面に置かれるものはほとんどなく,屋根型が主流である.また森林には広がっておらず,市街地などでもバラツキが見られた.そのためその要因の分析を行った.その結果,旧市街地は当然ながら建物が古く構造的に設置できないほか,景観の規制も影響している.新市街地ではアパートがその八割を占め,不動産会社による積極的な導入が確認された.また EEG を契機に学校に多く配置され,設置費の半分を市民が負担し,現在は売電の 6%の利子により 6000 ユーロが創出されているという.地域理解が得られ,市民参加も積極的に行われ成功したと言えるだろう.ほかにもプラスエネルギーハウス地区では,街全体で積極的な太陽光発電の導入が進んでいる.

またロンドンと似たように,ここでも太陽光発電は設置箇所に景観などから制限がかけられているため,乱開発のようなことは行われていない.

感想○

ここまで住民の理解が進んでいて,連携ができているのに感心した.日本ではやはり乱開発が問題だし規制が重要なのだろうと感じた.また九州では供給過多にもなっているので,FIT のような制度を適切に設けることも,同様に重要なのだろうと日本と関連させながら思った.

港湾における風力発電の拡大と 再生可能エネルギーの自己利用の展望

白石悟,福原朗子,米山治男,永井紀彦

土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol.71,No.2,I_7-I_12,2015.

内容

世界では風力発電が台頭しているが,イギリス,ドイツ,中国がほとんどを占め,日本はまだ進んでいない.筆者らは,地域での利用も必要と考え,これまで自己利用で研究している.ここでは,港湾における風力発電の導入状況と拡大に向けた課題などを述べる.

日本では 2011 年と 2012 年にガイドラインなどが示されたが,2008 年以降,風力発電の導入が鈍化している.国交省の資料によれば,洋上風力発電北九州港御前崎港,鹿島港,その他東北などの港で計画されている.

海外の先行事例から問題点を挙げている.イギリスでは特殊法人が海面を含めた土地管理を行っているため,権利上の問題が少ない.日本では海面の総合的管理者が明らかになっていないのが問題と述べている.またドイツでは河口に風車の建設基地があるため,効率的に洋上風力発電が導入されていく背景がある.日本でも費用圧縮のため同様の取り組みを行う必要があるだろう.

港湾空間内での自己利用についても簡単に分析している.施設内で発電分を消費することで,最大契約電力を下げられるとしているが,やはり平準化のためにも蓄電池を導入することも必要だろうとしている.

使用電力の変動性についての分析も行った.北海道の西海岸の 5 つと九州の 1 つを加え,分析を行った.結果として,バラツキがやや大きかったものの,気温と消費電力量に相関があった.またクレーンなどの電力量についても,同様に分析した.

受給バランスについて,風力発電のみと太陽光とのハイブリットの場合の 2 者を分析した.風力発電は 6~8 月に風が弱くなり,需要が上回ってしまっている.またいずれの場合も 10月は需要が大きく,需要が上回っている.しかしそれ以外の時期は供給ができていることが確認された.

感想△

気温と電力量の相関について,相関係数や回帰式が示されていないのは,疑問に思った.またこの分析は月ごとだったので,正確性に欠け,特に暑い日などはより厳しい結果が出るだろうと思った.また自己利用については,簡単な分析にとどまっているように感じた.またクレーンなどの使用電力量の度数を正規分布近似していたが,最低値にも山が見られ,あまりフィッティングがうまくいっていないように感じた.度数について扱うのもよくわからかった.しかしイギリス,ドイツの事例については,興味深い知見が得られた.