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ゼミ26:FCVについて

Electricity system and emission impact of direct and indirect electrification of heavy-duty transportation

Victor Keller, Benjamin Lyseng, Cameron Wade, Sven Scholtysik, McKenzie Fowler, James Donald, Kevin Palmer-Wilson, Bryson Robertson, Peter Wild, Andrew Rowe

Energy Volume 172, 1 April 2019, Pages 740-751

内容

電気と輸送のエネルギー需要について,Whとkmで別個に推定し,これに対しBEV・HV・FCVなどの各車両で最低コストのバランスを求めることを目的とした.そこでそれぞれの資本や運用コストは需要に対し内生的に求まる.

そしてOSeMOSYSという線形モデルで2015から50年間を考えた.そこでピーク負荷とピーク生成VREを求めた.運用・保守コストや燃費・燃料コストは外生的に与えた.水素は水分解を考え,DOE(エネルギー省)のコストを与えた.発電は火力や再エネを考えた.

輸送需要はGDPに関する台数と走行距離の式で与えた.電力需要は既存のAESOによるものをベースに車両の電化に伴う分を追加した.時間ごとに車両の転換が進み,伴って燃費の改善が行われるとして推定値(FCV:0.56,BEV:0.552km/kWh)を与えた.また購入コストと距離に応じた運用コストを与えた.燃料費はEIAのデータに基づく.

炭素税の有無(150$/tCO2),充電のタイミング,転換する自動車:ICE/BEV/FCVで10のシナリオを考えた.転換は2030頃から本格化し2050までに概ね完了すると仮定した.

まず炭素税の有無で火力の水準が大きく異なった.なしだと半分を占めるのに対し,ありだと1/4ほどになりバイオ発電や原発が台頭した.VREはいずれも1/3ほどで大きな差は表れなかった.グラフに示されたように,FCVが特に排出量削減とコストで良い結果となった.税なしのFCVシナリオでは,累積で3%のCO2排出の減少を3億$の増加とするものだった.税によってより効果的となり,バッテリーに比べ電解槽の柔軟性が全体に寄与したと考察される.これはベースに比べ43->12.33MtCO2,185.4->198.5B$となった.なおVREは太陽光が6割程度と支配的で昼の超過分を水素製造に充てた. Fig. 11

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感想◎

他の文献では転換は緩やかに進むところを寿命に応じて(?),強力に転換させているところはユニークで面白いと思った.一元的にBEVかFCVかで考えたが,組み合わせも検討の余地はあると思う.

 

再生可能エネルギーの出力変動対策の評価手法の提案と水素製造システムへの適用

大山 達也,加藤  尚,松本  弘,真島 洋一,細越 秀男

電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門)2019 年 139 巻 12 号 p. 737-745

内容

再エネの導入が進む中,変動対策に水素を適用できるかの検証を目的とした.そこで5Nm3/hの水分解装置ECと電池67kWhをPV50kWのシステムで実験した.そして周波数に着目し,離散フーリエ変換に基づく抑制有効率,抑制無効率という指標での安定性への寄与率として評価を試みた.

まず機器の遅れに関する簡単な実験を行った.結果,ECも追従速度は高かったが電池の方がさらに高く,PV出力が変動すると水素の製造効率が低下した.そのため短周期は電池が,長周期はECが変動を抑制して,系統へ出力していくものとした.

5月の日中1hに移動平均を300sとしてシステム全体を実験した.各機器に無駄時間があるため,抑制後も多少の変動は残った.フーリエ変換の絶対値はPV出力に比べ小さくなったため,抑制の効果が確認された.特に低周波数領域で効果的だった.さらにどちらの機器の寄与かを明らかにするため,位相を分析した.そして0.01Hzより高周波成分ではECに比べ電池の抑制有効率が高く,寄与していることが示された.

ECはPVに対し遅れ,電池は進んでいた.よって電池がPVの変動を抑制しつつ,ECの変動も抑制してしまっていると推測された.また高周波領域で電池の遅れが比例した.

移動平均を30sにして2月に再実験した.すると出力すべきところを入力として,抑制有効率が負の値になる箇所が見られた.0.03Hzより高い周波数では電池はPVに追従できていないことが示された.ここを合わせようとすると損失が生まれるため,変動する範囲を定めた方が最適な効率を提案できるとされた.

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感想○

電気の物理的な要素が強く難しかった.しかし水素の利用法の展望として興味深かった.ただミクロな話に寄っていて,ここからマクロ的にどうなるかの展望の言及が欲しかった.

 

発電・自動車用燃料としての水素の導入可能性:
地域細分化型世界エネルギーシステムモデルを用いた分析

大槻貴司,小宮山涼一,藤井康正

Journal of the Japan Institute of Energy, 98, 62-72(2019)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jie/98/4/98_62/_pdf/-char/ja

内容

本研究では長期的なCO2排出における水素の影響の議論を目的に,国際需供の費用を分析し,発電・自動車部門の水素技術の導入可能性を分析した.世界に363のノードを設定し,資源や水素製造・輸送のインフラ費用などを求めた.また関連技術としてFCVの他,輸送における液化・化合物やパイプライン,水素火力・燃料電池の発電などを包括的に検討した.

前述のモデルは2015~2050を考え,大規模数理計画問題として線形計画モデルを適応した.目的関数は割引後システム総費用とした.制約式は資源量やCO2排出などで構成され,3億本弱,変数は1.5億ほどに及ぶ.電力は各季節の3時間間隔負荷を天気(晴れ/曇り)に応じて求め,非電力で需供バランスをとり,PVの出力変動も表現した.水素の製造は化石燃料の改質,COのシフト反応,電気分解を考えた.最終需要はIEEJの燃料別需要を参考に輸送部門を台数や台キロ・燃費の予測を仮定とした.

まず水素キャリアの海上輸送は再変換やプラントなどで固定費の増大が確認された.車のエネルギー消費原単位は,JARIを参考にICE:1,EV:0.25,FCV:0.4とした.この燃料精製は別途モデル化し内生的に求めた.ノード間の輸送も考慮したが,ノード内は明示化できなかった.水素補給施設の数・費用はロードマップを参考に漸近を取り込んだ.そしてベースと2度目標のシナリオでCO2排出量に上限を課した.後者は先進国に別途制限を考えた.

結果として,概して水素の利用は限定された.発電は低廉な石炭が強く,VREは経済性が向上した2030sに導入が加速した.低炭素電源は地域差があり,その特性に合わせた選択の重要性が確認された.水素系火力発電は1%ほどに限られた.輸送はパイプラインが経済的だった.EVも値段に対応し2050年には3割になった.しかしより経済的なHEVが支配的だった.これは貨物で9割とより顕著だった.これはエネルギー削減4割ほどでコスパには優れる.なお消費者選考は価格のみによる.水素は改質による製造が多数を占めた.

さらに水素の製造や輸送のコストの低減の詳細をシナリオ分析した.そして運用コストは低下したがFCVの導入は進まなかった.ここでは税,補助金を考慮しておらず,車両の価格の高さが障壁だと考察した.特に車両価格が重要と考察された.日本政府の2025までに価格競争の水準を目指す目標の重要性を訴えた.また水素の製造は化石燃料由来が支配的となった.VRE利用の電解槽は稼働率などから費用的に不利なためと考えられた.材料のエネルギーはタダだが,日本では設備のコストを0.04US$/kWh以下にしなければならない.またそこで原料は米・豪の資源が評価された.

感想◎

壮大なモデルで驚いたが,細かすぎて表現や考察が難しそうだと思った.

 

Vehicle energy efficiency evaluation from well-to-wheel lifecycle perspective

Shoki Kosai, Masaki Nakanishi, Eiji Yamasue

Transportation Research Part D: Transport and Environment Vol 65, Dec 2018, pp 355-367

内容

本研究ではWtWでも特に潜在的側面であろう材料・軽量化に着目して分析を行った.そして燃費の影響も考慮した.データは日本のメーカからのインタビューで得られたものを用いた.ICE,BEV,HEV,FCVを考えた.

具体的にはアルミニウムへの転換を考えた.そして国全体の車両のエネルギー効率を求め加算集計することとした.ここで移動人数と車両寿命を入力した.まず平均的な1.6人,15年を考えた.

TtWでは各EVの改善が確認されたが,車両の製造段階が大きく明確に低下するわけではなかった.そして一般的に最大の5人までの重量の感度分析を行ったところ大きな影響が見られた.日本のライドシェアリング導入に言及し,法規制や感情的な抵抗があるが,政府の説明を通じた乗車率増加の戦略の必要性を訴えた.

また車両の寿命の変化も与えた.するとエネルギー効率に反比例することが確認された.現在では中古車の多くが東南アジアに輸出されていることに言及し,これを国内でより利用することにより効率が高まるものとした.これはBEVとFCVで顕著で,これらは特に長期間使用したほうが良い結果が得られた.なお,ここではバッテリーの交換といった保守は考慮されていないのでBEVは特に効率が下がってしまう懸念がある.

さらに重量を考慮した.これまでの経験的なアルミニウムへの線形での代替が続くものとして考えた.なおこの式はR2=0.954である.そして各材料の比重で車重の変化を推定した.すると車重が約2割減少した.これにより輸送のエネルギー効率も1割向上した.しかし製造段階での改善はあまり見られなかった.これは材料の特性として,加工する中でエネルギーが4倍必要なことが関係していると考えられる.しかしここでは考慮しきれなかったものの,リサイクルとして優位な点に注意すべきだとした.

しかし全体の結果として,全体ではHEVの6.6%の改善以外はICEよりも悪化した.特に2050頃にはBEV,FCVが一般化して悪化するとの結果が得られた.ただし材料の地政学的なリスクの栄養も考えるべきだとした.

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感想〇

重量という観点においてはアルミというだけでなく電池の分野でも支配的になるので関連が深く参考になると思った.しかしBEV,FCVがWtWで悪化するというのは非常に意外だった.