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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ13:世界での貨物輸送のレビュー

Investigating using Urban Public Transport For Freight Deliveries

Andrii Galkina, Tibor Schlosserb, Olena Galkinaa, Dominika Hodákováb, Silvia Cápayová

Transportation Research Procedia Volume 39, 2019, Pages 64-73

内容

スロバキアは公共交通が発展しており,貨物を環境への配慮から輸送での活用改善を期待できる.しかしこれまで公共交通に着目した研究は少なく,内部・外部のコストを考慮した一般的な評価スキームが必要で,これを満たすことを目的としている.そこでSWOT分析を行った.また電力ベースの輸送と道路輸送の統合も考慮されておらず,これも検討した.

まず地域特性を分析しており,都市としてバスとトロリーの交通網が整っていて,広島に近いと考えられる.なお運賃収入は,経費を40%ほどカバーしている.さらに輸送に着目すると,倉庫は郊外に多くあり,そこから市街地の店舗へ納品がしばしば行われている.しかしそれぞれにサプライヤーがついており,類似するルートが重複し全体として無駄な運転や駐車が発生していることが,既往の研究でも示されている.これは特に旧市街地で顕著だった.また8号線はターミナルと近く,ポテンシャルが特に高かった.

実際のビジネス面での有効性を確認するため,コストでの評価を行った.また環境や渋滞関連の時間価値の評価も行った.そして貨物のモーダルシフトは,”強み”として経済的にも環境的にも改善が見られた.ただし”機会”としては,さらなる活用には,異なる交通モードでの連携を高めることが重要とされた.貨物輸送と配達も連携が必要で,前者は主に倉庫の空き,後者は経済や技術などの外部的問題と企業やサービスの特性の内部的問題を組み合わせた複雑なものになる.そこで技術的課題解決のためには,公共交通の誘致が適切だと参考文献を示しながら述べていた.また技術や法律などの分野ごとに目標を示していた.例えば,ノードのポテンシャルと容量や交通フローの変動の考慮についての決定や,公共交通においてどれだけ貨物へ割けるか許容量の設定など.

一方で,中央通りは既存の交通で飽和していて,これ以上の輸送は困難であることが,”弱み”として示唆された.鉄道の集荷のシステムが川崎(コンテナ関連?)やローマなどであり,それらを参照すると良いだろうと考察している.またそれぞれの直接の輸送は,土地などの制限から難しいだろうと”脅威”でまとめている.

感想〇

レビューが主の論文でモデルの詳細などは不明点もあったが,都市の公共交通に着目している点で視点として面白かった.トンキロでは長距離輸送を想像しがちだが,都市の非効率なものを改善していく方が,効率的で効果的かもしれないので,その調査も必要だろうと思った.最後の交通の飽和は,輸送の効率化で空間が生まれるのではと思い疑問だった.それと貨物の許容量は,貨物線で現在問題になっているだろうと思った.

 

The air quality and health impacts of projected long-haul truck and rail freight transportation in the United States in 2050

Shuai Panab, Anirban Royc, Yunsoo Choic, ShiQuan Sund, H. OliverGao

Environment International Volume 130, September 2019, 104922

内容

アメリカでは,2050年には経済成長に伴って貨物輸送は倍増すると予想されている.これまでは,ディーゼル車をはじめ,環境・健康への悪影響も多かった.既往の研究では,健康面が考慮されていない.そこで4つのシナリオを考え,対策なし(BASE),経済成長と排出規制(CTR),追加して炭素税(PO),高排出車の排除(NS)とし,経済と環境の面からモデルで予想した.これをディーゼルのトラックと鉄道に適応した.

複数の経済モデルから,2050年のGDPや燃料消費量を推定した.規制が行われることで,PMはトラックで60~70%削減,鉄道で80%削減されることが示された.ここではトラックの寿命により,環境負荷の少ない車両に置き換わったことが主な要因となっている.また過剰推計にならないよう影響の少ない夏で試算している.地理的には,鉄道では一部の路線で,トラックは一部の都市(LA,シカゴ)で,炭素の減少が見られた.PMはLAやアイオワ周辺で減少し,東海岸海上では一部上昇も見られた.

また健康への影響を空気の質や人口で構成されるモデルから計算した.既往の研究事例からの早死率より早死を3600(CTR),4400(NS)件と試算し,貨幣価値換算の関連利益として,38~45億ドルを試算した.

同定のためマッピングすると,やはり大都市部(CA,TX,FL,NY5など)ほど現在の健康リスクが高く,転じて規制の影響が大きいことが確認された.またモーダルシフトについては,全体としては環境改善になるが,前述のように地域により鉄道輸送が大きく増えて,悪化する地点も発生することが確認された.実際の政策はこれを推奨しており,鉄道貨物計画として,この投資の必要性を示している.また車の更新も予算が必要で,50年までに約940億ドル(健康投資の20倍以上)としている.これを継続的に行い,目標を達成するため,随時基準の見直しをすすめている.CTRでも改善はみられるが,不十分だろうと考察している.また炭素税(PO)は$30から$130(50年)としている.

最後にChina VIという強力な義務ポリシーが北京で行われており,その紹介もしている.なお電気自動車も同様に少し言及されるに留まる.

感想〇

先の論文と併せて考えると,やはり特に都心部での貨物の影響が大きいので,そこを中心にしぼるとよさそうに感じた.アメリカは,地理は異なるがエネルギー割合は似ているので,その点参考になると思ったが,主にディーゼルの削減を考えていてややずれていた.