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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ15:読みたい輸送関連の海外文献3つのレビュー

Help or hindrance? The travel, energy and carbon impacts of highly automated vehicles

ZiaWadudaDonMacKenzieb1PaulLeiby

Transportation Research Part A: Policy and Practice Volume 86, April 2016, Pages 1-18

内容

下記の独立したものを乗算して明示的に扱えるASIFモデルというもので,特に自動運転が導入された際の交通行動の環境影響を予測している.

Emissions = Activity Level * Modal Share * Energy Intensity * Fuel Carbon Content

具体的には,速度向上,隊列走行,事故低下,渋滞緩和などをそれぞれ検討し,組み合わせてシナリオとしその差異を持って不確実性としている.これはエネルギーのリバウンド効果に代表される.またそれぞれは既往研究を参考にしつつ,不足は本研究で分析した.隊列により10数%,速度向上で7~22%効率が改善し,9割以上の人為ミスの事故を防げ,輸送人員から効率化が進むとしている.

そして,これら技術革新により旅行が変化し経済的に支配されることを検討し,現実同様に従属的にエネルギーや環境を評価する.これにより大型貨物は,0.5~1.75倍に幅広く変化すると予測されている.これはトラックの利便性向上やモーダルシフトの推進がせめぎあっているためである.各コンポーネントにかかる費用2011年時点を各既往研究から各車種でまとめている.移動の必要がなく高齢者の移動はかえって減少し,カーシェアの集約化により,家庭部門でCO2が8.8%削減されるとしている.

そして人の負担と技術進歩の程度を不確実性として2種与え,その組み合わせから4つのシナリオを作成し試算している.Aの楽観的シナリオでは,需要の増加はわずかで総輸送エネルギーの40%を削減する.Bの中庸シナリオでは削減がされるものの需要の増加によりほぼ相殺される.Cの強力な回答シナリオでは,すべての効果が発揮されたと想定されここでも概ね相殺される結果となる.Dの悪夢シナリオは,環境的な効率が進まなかったとしつつ自動運転などから需要が高まりエネルギーは2倍となっている.

個々の指標の分析では,自動化が低いレベルでは環境へ優しいのに,レベルが高くなると需要が一段と増加し環境悪化への懸念が予想される.オフサイクルや早期の検討が必要と警鐘を鳴らしている.また各コストが下がることで,相対的にロードプライシングなどの効果が上がり燃料税は下がるとしている.また自動化に伴い大きめの車でのタクシーでのシェアが進み,効率化するだろうなどとしている.最後に自動化は正負の影響があり,色眼鏡をつけるべきではないと指摘してまとめとしている.

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感想◎

レビュー論文だったが不足が補われシナリオ分析も素晴らしくよかった.

 

RailNet: A simulation model for operational planning of rail freight

Guillaume Michal, Nam Huynh, Nagesh Shukla, Albert Munoz, Johan Barthelemy

Transportation Research Procedia Volume 25, 2017, Pages 461-473

内容

豪では,今後さらに鉱物資源の輸出が進み,その中で鉄道貨物輸送がより重要になる.しかしインフラ整備の計画はなく,既存のストックの線路容量を効率的に利用する必要がある.また豪でも鉄道輸送では旅客が優位で,その間を縫ってダイヤを作らなければならない.

これまではこれらの研究に最適化モデルが用いられてきたが,本研究では実際のスケジュールでも使えるようシミュレーションモデルを用いる.こうしたマクロなシミュレーションは,スペインやカリフォルニアで行われており,それを参考としている.

モデルは,鉄道の交通を監視しボトルネックを評価し,貨物輸送を合理化することを助ける.

ネットワークをノードとラインでモデル化している.ノードは駅のほか,ポイント,待避線毎に厳密に設定された.またここでは,港付近での海運の積み替えを中心に考えている.新規の列車に既存ダイヤに被らないよう時刻を与える.そこで許容最大遅延と運用式を定義している.なおモデルでは,位置・時間・速度を考え,車両の長さや容量は簡易化のため省かれている.そこから運用上の制約式をOD時間や退避について数学的に与えている.様々な相互作用が予想され,ここから最適化問題が解けそうな構成になっているが,前述のとおりシミュレーションを行った.これにより,走行状況を監視し,走行中のものが赤丸,空いている空間が青丸で示され明示的となった.またノードの密度(信号的なものか)が,カラースケールで明示的なシステムが導入された.

そして2通りの仮定をケーススタディとして行い,ここで仮定は鉄道網をそのままで①到着番線を新設するものと,②荷下ろし能力を2倍にすることである.そこでそれぞれ図で重複と短縮が見られている.結果,既存のままからループ線で新しく5本/日の増発が可能なことが明らかになった.今後は運用の最適化とさらなる増発を検討したいと締めている.

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感想◎

数式やモデルが非常に厳密に定義されていてよかった.日本においても,環境面から貨物電車を増発することが要となりそうだが,関東圏をはじめ容量が厳しい地点も多そうなので参考になりそうだと思った.しかしそこで大規模更新をせず,貨物関連のインフラを少々増備すれば,実現可能性が高いことが豪で示されたのは興味深い.CBTCなど含むハードの少ない投資での,旅客混雑解消を含めた改善に期待したい.

 

The Future of Trucks Implications for energy and the environment

OECD/IEA, 2017

端的に言って前回の続き.面白いと思ったところの抜粋.

ゼミで電気自動車についてしばしば挙がるのもあってついでに紹介.

Electric trucks:Vehicle and infrastructure technologies

Electric truck technologies While the technical principles for the electrification of trucks are similar to those available for cars, the greater size and weight of trucks, and their more rugged operations, substantially increase the barriers to batteries serving as a substitute for diesel.

As with electric cars, the key performance considerations for batteries designed for use in electric trucks are the gravimetric and volumetric energy densities, the specific power (in watts per kg), the durability and number of discharge cycles a battery can undergo before losing too much capacity, the temperature management requirements and safety.

The hurdles to electrification are lower for trucks with lower GVW and shorter annual mileages.

GVW:車両総重量

Plug-in and battery-electric LCVs and MFTs in urban contexts in municipal service and delivery operations are beginning to move out of the demonstration phase and into the early deployment phase. But as HFTs serving long-haul operations constitute the majority of oil consumption and as their share of total road freight activity and hence energy use is set to grow in emerging and developing countries (e.g. in East and South Asia), demonstration projects for these operations have recently begun (as outlined in the following section on deployment).

When driving on an uncongested highway, a modern truck can achieve efficiencies from the engine to the wheel of no higher than 30%, while electric trucks can reach powertrain-to-wheel efficiencies of as high as 85% or more. Generally, an ICE converts about 44-46% of fuel energy into work at the crankshaft (peak brake thermal efficiency).

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Fig.32では,トラックのCO2排出に関し,LCVは横ばい,MFTは0.25Gt増,HFTは1.5Gt増としていた.

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参考文献のシナリオにより,一本目の論文と同様に将来のCO2の状態には大きなバラツキが見られた.電化が進めば減少に転じるが,場合によっては現状よりはるかに悪化する可能性も示された.大胆かつ慎重な施策が必要だ.