はじめに
関東に新快速をという記事を見かけたので,これに対し鉄道関連の色々な話を交えながら論じていきたい次第.
その記事の内容とか,そもそも新快速って何っていうのは下記を流し読みしてもらえれば.
https://blogs.yahoo.co.jp/alohaggyy/22296669.html
と,鉄道ネタを温めていたら,先週は問題だらけだったので,書くことが増えてしまったという次第.
電車の事故や運営について
タイムリーなのでこちらを先に.
JRの計画運休について
これは私の所感というか記憶だと,JR西日本がまず積極的にはじめて,他社が随時導入しているのだったかと.そして,この制度自体は非常に評価できる.無理に下手に動かして立ち往生や事故を生むことを防げるので.インフラ系とはいえ,運輸は命に直結するわけではなく,電気や水道ほど切迫したものでもないので.これに対して,動かせという声はそれなりに大きい気がするけど,エゴにすぎないし自重してくれと声を大にしたい.
ただ今回,山手線が8時に運転再開されなかったのは,結果的にまずかったなという印象.やはり誰もがこぞって乗ろうとするので,結果的に混乱が生まれてしまったし,JRの情報発信も足りなかった.会社として,目安を出すことは大事だし,だから8時といったのだろうけど,それが守られないと大きな批判を食らってしまう.これは別に曖昧でもよかったんじゃないかと個人的には思う.例えば,朝は運転を中止して,安全確認が取れ次第,随時運転再開みたいに.ここまでやってくれれば,各企業も休みの踏ん切りもついたかと.
そう諸悪の根源は,日本独特のバカ真面目さ,実直さ,社畜さにあるわけで.そもそも危険な中,通勤することが間違っているので.イギリス人はもっとのびのびと自主的に生きている印象だった.このあたり”機械”.これはフレデリックさんの話を次回まとめようと思う.
個人的な話になるが,当日は集中講義があり,日もずらしづらいこともあってか,開講が遅れつつも行われた.先生は他大なので,わざわざ新幹線でやってくる始末.海外出身の先生なのに,日本に染まってしまったなあと少し悲しくなった.再開直後の最混雑には巻き込まれたくなかったので,11時頃の電車を使ったけど,ダイヤ乱れもあるし,この時間でも非常に混雑していた.あたまおかしい.東急なんかは朝から健闘(?)したらしいし.
忘れがちかもしれないが,台風は災害である.そういう報道は見なかったが,お店は閉店しても全く問題ないし,それが合理的である.働き方改革を唱えるのであれば,こういうところも改善されていかなければならない.経営者やマネージャはそう唱えて社員の安全を最優先にすべきだし,下っ端の社員だってスト的な形になろうとも自身の安全を第一に考えて休むという選択肢もとるべきである.
とはいえ鉄道はじめインフラ系の会社のみなさんの尽力には感謝しかない.上記のような人らは彼らを全力で支援するためにも,鉄道を混雑させて混乱させたりするのではなく,臥薪嘗胆的に冷静におとなしくするべきである.
京急の事故について
はじめに言っておくと私は少なからず鉄分(鉄道好き)があるので,甘い部分もあるかもしれない.しかしなるべく冷静に分析するよう努めている.ただし委員会の詳細が上がっていないので,推測にすぎず大部分は私の妄想にすぎないのには十分注意してもらいたい.
この件では,以前の小田急線の車両への延焼が比較されていて面白いと思った.以下詳細に紹介する.小田急では自動的に停止するシステムが,厳格に機能していた.そのためそれによる事故防止のための停止はできたが,運転士が柔軟に対応する余地が少なかったため,火災の地区に停車してしまったということである.
比べて京急は,この教訓を受けてか,それとも運転士の技能に自信があったのか,小田急と比べ柔軟なシステムとなっており,システムは危険を認識しつつあったが,運転士が気づかなかった(?)ため今回のような事故に至ったというのである.
これらはどちらがシステム上優位に立つかで変わってくるが,結果的にどちらも欠陥を抱えてしまうジレンマを示唆している.そのためどちらが優れているかは議論にならない.包括的に安全性を高めていく必要が示されたと言えるだろう.
そこでどうするか.そもそも踏切があるのが,根本的問題ではないだろうか.ロンドンにはほとんど踏切はない.鉄道網が東京と同等かそれ以上に張り巡らされているのにだ.世界的に見ても,都市部にここまで踏切があるのは日本固有の問題である.非常に根深い根本的問題として以下の視点があると考えられる.
QCDMSと言われるものだ.
質,金,納期,士気,安全(,環境)のトレードオフがある中で,これらをどうプライオリティをつけていくか.実は下記の過去課題でも,講義中に挙げられたものである.世界的にはインフラでそこまで金は重視されないが,日本(特に行政)は最優先と言っても過言ではないだろう.所説あるが,これは駅の構造などにもみることができる.私鉄の緩急で乗換しやすい駅構造に比べ,JRでは御茶ノ水駅などを除いて乗換しにくいのが常だ.国鉄は貧乏だったし,納期の問題も並行していたのはあるが.あるいは電柱なども費用削減による問題と言えるだろう.
しかし結果としては,不効用が大きすぎてイニシャルコストの削減が機能していない.本質的に問題を捉えられない日本の悪癖がここにあると感じる.
東日本で新快速は導入できない
結論はこのとおり.理由は主に2点なので順番に.
都市構造問題
そもそも近畿圏というのは,大阪・神戸・京都の三都市がいいバランスで成り立っている.要は一極集中ではなく,多極分散型の都市構造なのだ.これは言われれば分かると思うし,下記のような分析もある.一方で東京圏は,横浜が粘ってはいるが,はっきり言って東京一極集中でしかない.大丸有や副都心,品川など分散しているようにも見えるが,朝使われる電車はいわゆる上りに限られる.関西圏は分散型なので,上下に分かれるのでそもそも混雑が半分ほどになると,ざっくり述べられる.さらに過去の鉄道の過当競争により,阪神や阪急など多くの私鉄が主要路線を抑えている.これが福知山事故の遠因になったとも言われるが,競争により定時性や利便性など総合的に改善が図られる.一方,東京圏は東京横浜間の東海道線,東横線,京急線の競争を除けば,関西圏ほどではない.そのため悪い言い方をすれば,JR東日本は殿様商売となる.
首都圏・近畿圏の都市圏マップ(10%通勤圏)を描いてみました。横浜・さいたま・千葉が東京都市圏に呑み込まれてるのに対し、神戸・京都は独立した都市圏を形成しています。 pic.twitter.com/x2zjyFojP3
— にゃんこそば🌧️ (@ShinagawaJP) August 12, 2018
これに関し,啓蒙的な図書があった.神保町でたまたま出会ったのだが,なかなか興味深いことが書かれている.こうした問題は,一方でしょうがないと片づけられがちだが,痛烈に批判し改善を迫るべきという論調だ.たしかにそのとおりである.仕方のないものだと諦観しがちだが,そうではないのである.
都市計画的には,東京圏にも多極分散型の都市構造をより推し進めるべきだし,車内空間もより座れるようにするなど改善すべきなのである.ただしここで一応の弁護をしておくと,都市構造に関しては,さいたま新都心に行政機関を置くなど,一定の働きは行われている.今後は税制を変えるなど,企業にアプローチする必要があるだろう.例えば,大宮は安定しつつ床には余裕があるし,そもそも駅前はもっと高度化して再開発できる余地があったりするので.
鉄道のハード面の問題
類似しているようにも見えるかもしれないが,この問題がある.関東の京都線・神戸線にあたる路線としては,例えば東海道線・高崎線の上野東京ラインが挙げられるだろう.その中で新快速並みのスピードを手に入れるには,スピードアップと停車駅の削減が必要なのは言うまでもない.しかし線形がそこまでいいとは言えない.また停車駅の削減も大きな反対を受けることが目に見えている.ありえそうなのは,大船以南,川崎,尾久,赤羽,浦和,大宮以北あたりだが,できそうなのは尾久くらいのものである.しかも仮に速くしたところで,待ち合わせや退避の施設もそもそも考えられていないので導入のしようがない.むしろ川口に止めろとせがまれる次第である.
そもそも日本の列車は,ロンドンの国鉄に比べても非常に速い.現状でも十分だと感じる.現実的にできそうな改善策を挙げるならば,信号設備を改善して,より快速と普通の接続などを短く実現することと,緩急や湘南新宿ラインと上野東京ラインの接続性を改善すべきだろう.後者は例えば大宮駅において,宇都宮線から来た上野東京ラインとほぼ同時刻に高崎線から来た湘南新宿ラインを同一ホームに到着させて,相互の利便性を高めるべきという意見である.大宮には立体交差が上下にそれぞれあるので,若干の工事で実現可能と考えられるし,この効用は案外大きいものである.時間が許せば,この分析も随時行いたい次第である.