航空業界の厳しさは以前より明らかだったが,他の交通モードも予断を許さない状況だ.
特にJRを志願していた者として,やや上から目線で語る.
JR東海、初の営業赤字 新幹線利用84%減 4~6月 :日本経済新聞
まず現況として,JRの健全な財務で安定とされていた主要3社の東・東海・西が揃って赤字に陥っている.Go To トラベルでひと悶着あったが,やはり新幹線をはじめとした特急の利用の自粛による収益減の影響が大きそうだ.通勤に関する考察も見られたが,収益構造として影響は軽微だろう.むしろ定期は買わずとも,隔日で出勤する場合は,輸送人員が減りつつも収益はさほど変化しない.
そして実際的な構造として,これら主要3社が機構などを介して他のグループの赤字路線を補填する形態をとっていたため,これらの持続可能性にもより疑念が深まる.特に九州は苦境に見られる.毎年の豪雨災害による復旧費やネットワークの寸断が,端から見ていてもかわいそうなくらいだ.熊本が在来線で孤立しているのは驚きにあたう.
熊本地区が長期にわたり孤立するとは誰が想像しただろうか… pic.twitter.com/znKmCFYUE2
— むろみあっと (@muromi_WT) 2020年7月13日
また九州は不動産をはじめとして,東と同様に収益の多角化を図ってはいたものの,コロナによる急変には間に合わなかった,対応できなかった構図だ.
JR九州、4~6月期で初の赤字 鉄道の悪化補えず :日本経済新聞
このような状況においては,不採算路線の維持がより深刻になるだろう.ぶっちゃけ貨物も走らないローカルは,よほど特別な事情がない限り財務的に廃線にせざるを得ない状況に来ていると感じる.コロナによる経済的苦境は,廃線の議論をより切迫させ前進させるだろう.
ただこれらを通して公共交通の収益構造にも限界が見え隠れしている.これまでは旺盛な都市開発と通勤需要に支えられ,インバウンド政策も功を奏してきた.ただ黒字な都市部においても,民間的財務の維持はリモートワークの推進で厳しくなることが予想される.そのため抜本的見直しをしてもいいように思う.全線の上下分離だ.
JR東「鉄道の固定費減」 総会、配当撤回動議は否決 :日本経済新聞
こんなこと言っているが,所詮会社が大きかろうと民間一社で無理なのは,社長も株主も監督の国交省も分かっているはずだ.手を打つなら早いに越したことはない.
地方では上下分離が新幹線開発後の三セクで見られる.そもそも鉄道事業を民間で行う日本は,国際的に珍しい.仮に下物を完全に行政とすれば,上物をより柔軟に扱える可能性もある.例えばより利便性の高い直通運転や,寝台列車の再興などだ.
やっぱり鉄道事業者の固定費負担を軽減し、より自由な価格競争を促すために全国鉄道路線の上下分離とオープンアクセスをですね(欧州脳)
— 島村 🛂 Shimamura (@toike_shimamura) 2020年7月31日
ただ現状では規格の違いもあるし,下物で稼ぐ部門の社員の扱いも難しい問題になる.実際には分割子会社化で委託になりそうだが.
また上物が鉄道会社固有のものから離れれば,価格競争力が生まれるのはもちろんのこと,MaaSをはじめとした各種サービスとのシナジーも期待できる.臨時で東京発の列車を設定することで,特定の自治体へ大きな効果を期すことも可能だろう.旅行会社の裁量も大きくなり,現状の苦しさのカウンターとしては十分だ.すぐには実現できないだろうが.
このように夢は絶えない.ただ現行の信頼と安全のシステムの更新による悪化は可能な限り避けなければならないし,最も懸念される点だ.
ただその点で言えば,現状でも波乱を呼んだ.
JR東がまさかのジョブローテだ.一般に運転士などは特別な訓練を経て現場に配属され乗務する.ただジョブローテとなると,ここは非常に非効率となる.人事の流動化による終身雇用への一手にも見える.状況としては,トヨタ社長の先日に似たものを感じる.ただJRに限って言えば,これは悪手にすぎる.安全の低下に繋がりかねないし,効率も悪い.ただ自動化が速やかに行われれば,その心配も少ないようには思う.
ただ冒頭の就活的な話に戻して,かつプロ職について杞憂するならば,乗務員志望で入社する就活生が多い中で,この発表はモチベーションの低下に繋がりそうだし,現社員含め他社に流れそうな気もする.私のバイトの勤務先も乗務員志望で下積みとして,若手で数年現場駅員をしている社員らがいらっしゃるが,彼らの望みを絶つように感じられないこともない.労使の怒りとして表れているのも納得できるところがある.
あとリニアは私は再三慎重派として記してきたが,天下の東海も赤字で静岡の合意も取れず工期延長・工費増加は必至でいよいよきな臭くなってきた.