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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ19:瑞ノ電気貨物自動車

Battery electric propulsion: An option for heavy-duty vehicles? Results from a Swiss case-study

Emir Çabukoglu, Gil Georges, Lukas Küng, Giacomo Pareschi, Konstantinos Boulouchos

Transportation Research Part C: Emerging Technologies Volume 88, March 2018, Pages 107-123

内容

スイスのトラックの全体の実データを用いて,EV化の技術的限界を探すことを目的とし,EVの浸透度を調査した.特徴として,LSVA課税のためのHDTの電子監視に基づく.1年のトリップデータの走行距離と推定された平均裁荷量から,EVへ代替可能な運用の車両をカウントした.これらをエネルギーの総需要式に取り込み,燃料・電気容量に置き換えた.

EVのパラメータは,主にPlotkin and Singhの研究を参照している.パワートレインを置換し,タンクをバッテリーに置換した.なお過重な重量増大もあったためMPWの5%までの上昇を限界とした.こうした重量は,安全性,コスト,道路維持の観点からデメリットと述べている.また大きさから急速充電は現実的でないとして,緩速充電でそのものを交換するタイプを想定した.しかしこれでも時間はかかるので,時間に沿ったシミュレートをした.他の多くは,実現可能性は一旦無視された.まず現状の推定結果を参考データと比較してモデルを評価している.誤差は2.5%以内で概ね問題なさそうであった.

結果として,現状でシフトできるのは12%に留まった.また密度が大きくなっても充電時間がボトルネックになることが示された.そして密度と交換回数はトレードオフになった.電力量は年間で64GWhと推定された.これにエネルギーミックスを考慮すると,電化により却ってディーゼルよりCO2が増加した.密度と交換回数などからシナリオ分析もした.結果,スマート充電も必要だろうとなった.

導入には,荷重制限の緩和(短期的には特に),充電施設の整備が必要だとまとめた.

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感想◎

全数データがあるのは強いと思った.スイスは内陸の山がちな地形なので,日本以上に輸送の低炭素化は難しそうに思う.Plotkinらのも読もうと思う.荷重・重量への言及があったので,後でスイスの構造令と比較しようと思った.また充電の密度と速さと熱は盲点だった.

Fuel cell electric vehicles: An option to decarbonize heavy-duty transport? Results from a Swiss case-study

Emir Çabukoglu, Gil Georges, Lukas Küng, Giacomo Pareschi, Konstantinos Boulouchos

Transportation Research PartD: Transport and Environment Volume 70, May 2019, P35-48

内容

先ほどの続きとなっている.EV化が難しいため,別オプションとして燃料電池にフォーカスした.事実,航続距離や補給時間は有利である.現状はバスが主流で,トラックは2つしかない.そこで燃料電池の実用可能性とCO2削減効果を評価することを目的としている.

方法はほぼ同様である.既往研究より水素タンクは0.25kg/l,補給は30,60g/sなどとした.

トリップと容量より,倉庫で補給するなら30%置換が可能(MPW18t以上は25%ほど)で,ステーション設置で常時補給できると100%可能なことが示された.その際,年間8.21TWhの電気と143ktの水素が必要となった.これを既存のスイスのエネルギーミックスと,今のディーゼルのCO2排出量とで比べると,3割しか削減できなかった.そのため再エネの必要性が確認された.具体的にはPVで6.2km2という数値が示された.ちなみにスイスは,土地制約上再エネがほぼPVに限られる.

また補給を詳細に分析すると,タンクが大きい分,小型車よりも有利なことが示された.また補給の速度,タイミングで待ち時間が変化した.また必要なインフラとしてのステーションとも関連があった.また技術革新で補給の圧力(速度)が5倍に変われば,待ち時間はほぼ見られなくなった.

またCO2の排出量に関して感度分析をすると,パワートレインの戦略と,タンクサイズ,回生効率が有意になった.

先の電気自動車は大きな技術革新があったときのみ,実現可能性が高かったが,燃料電池は保守的な仮定でも可能だろうとまとめている.車両設計に関しては,より現実的だと思う.ただし,これも燃料源の再エネの開発とステーションの設置は不可欠になっている.

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感想〇

全体を通して,燃料電池の方が現実的というのは意外だった.類似の方法で比較していたので読みやすかった.PVに言及されていたが,水素をおそらく昼の余剰電力で作るだろうが,どう作るかがいまいち分からなかった.ただPVとは,Li電池より相性が良さそうだ.ただ前回で課題が洗い出せているので,こっちの方が有利に考えられているという懸念もある.