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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

ゼミ22:非接触給電のレビュー

今回は奇跡的に前日に脱稿できた!テーマの性質上他分野についてが多くなってよくわかっていない点ご承知願いたい.

可変インピーダンスを考慮した非接触給電システムの回路解析と特性評価

山田 潤, 津田 和真, 小林 涼太, 金子 裕良

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)2017 年 137 巻 11 号 p. 815-826

内容

H型トランスを用いた中継コイル方式,PS方式の特性評価を行った.これはH型が小型軽量化,長ギャップ化,位置ずれ許容量に優れ,走行中の利点が大きいが検討されていないため.
まず式による解析をした.位置ずれや2次コイル不在時も入力電力Iinを抑えられることを確認した.また効率ηの式も導出した.さらにコンデンサCの選定も導かれた.中継コイル方式とPS方式の類似性もしばしば見られた.なお鉄損は無視し銅損は考慮した.
そして特性確認のためトランスを作成し実験した.なお基本波による比較が難しいなどの理由から,フィルタによる疑似的な正弦波に置換させた.これにより効率の低下が懸念されるが,漏洩電磁界が低減できるメリットもあるとしている.特に実用の走行時では大電力が予想される.その中でこのような対策・検討が必要だろうと述べている.このような検討・設計を経て,給電実験を標準3kWで行った.2方式とも理論とよく一致した.また波形も正弦波で力率も1に近く,妥当性が確認された.さらに設計通りの抑制も認められた.2次コイル不在時もインピーダンスの低下により,電流の低減が確認された.位置ずれの程度でも同様に確認された.具体的には,250㎜で中継コイル方式が13.2Ωから39.5Ω,PS方式が15.7Ωから44.6Ωと約3倍となった.さらに効率については,200㎜でも90%付近を維持した.0㎜で最高93%程度である.また中継コイル方式の方が1%以上高くなった.PS方式も,並列数を増やすなどで改善が見込めるだろうと考察した.
また実験時に入力電流が三角波となった原因を追究した.理論を深堀し,インダクタンスの変動を考慮した設計が必要と考えた.追加実験を行いこの妥当性を確認した.

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感想〇

図表が多く載せられ視覚的に分かりやすくてよかった.他分野なので曖昧な部分はどうしてもあるが.200㎜のずれでもパフォーマンスを発揮できているのは,走行時にも十分期待できそうだと思った.

円形及びソレノイド型磁界結合方式非接触給電トランスと共用可能なHc型トランスの回路解析と性能評価

山田 潤, 清水 良太郎, 小林 涼太, 金子 裕良

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)2016 年 136 巻 11 号 p. 891-900

内容

上記の続きとなっている.H型から改良したHc型トランスの検討・評価をした.これは従来のH型トランスを分割し,中央に磁極を追加して,円形トランスの給電を可能にしている.トランスには円形とソレノイド型があり,後者は位置ずれに強いなど特徴があるが,磁界構造が異なり給電はできない.しかし今回のH型系統は互換性を持たせている.1つの状態で検討されてきたが,位置ずれなどのパラメータが大きく,分割された状態で同様に回路解析を行った.コンデンサを直列・並列でそれぞれ求めた.これによりインダクタンスが異なり要求性能も変わった.そしてH型との給電では並列に,円形とでは直列として切り替えるものとした.
また理論値とトランス定数を各パターンで比較し,導出式の妥当性を確認した.効率は理論値とシミュレーションが一致した.
そしてそれぞれ給電試験した.条件は85Hz,インバータ出力350V,35A以下で,効率ηを90%以上とした.また1次(道路)側が円形の場合,インダクタンスが過大になり絶縁の可能性があったため分割された.ギャップ変動特性として,ずれに応じた給電効率を示した.Hc型もH型同士とほぼ同等だった.円形を用いると効率の低下幅がやや大きくなった.また位置ずれをギャップ100,150㎜で検討した.ずれても効率の低下はわずかで,200㎜でも90%ほどを保った.しかしHc型同士では,ずれ方向の効率低下幅が大きく,並列でインピーダンスが変化し,2次側の共振がずれたためだと考察した.まとめとして,共用可能と結論付けた.Hc型トランスの特徴より,y方向(横?)の位置ずれに強く,低下が抑えられることが認められた.また直並列それぞれ1つと等価にみなせることも確認した.
電波法を満たすための漏洩電解対策の必要性を,いずれの条件においても確認した.今回は構造の違いを調べるため,対策をしなかったが今後の検討項目となる.

感想〇

互換性を持たせることでシステム全体として,停車時・走行時も効率的で便利な給電が期待でき興味深い.

駐車時と走行時の二次側コイルを共通化した非接触給電システムの基礎検討

藤田 稔之, 保田 富夫, 赤木 泰文

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)2016 年 136 巻 8 号 p. 522-531

内容

接触給電ではISO19363など各機関の標準化の検討も進んでいる.日本では85kHz帯となった.非接触給電では2次(車両)側の容積制限から,筆者らはソレノイド型が有利と考え検討している.これは小型軽量,位置ずれ許容が大きい,漏洩磁束が大きいという特徴がある.実用上,定位置と走行時に互換性を持たせることが重要で,それを本研究の特徴とした.漏れ磁束についてはアルミ板の設置で対策した.
図はシステムとしての等価回路図で,これよりキルヒホッフの法則などから式を解き,相互インダクタンスMpsが重要なことが確認された.また定置ではMpsは固定なので,入力電圧により出力電流が制御される.
各インダクタンスの計測模型実験をした.位置ずれに伴い特にMpsは低下幅が大きかった.また位置ずれに伴い入力電圧の低下はやや大きかった.250mmで0.4ほど.位置ずれなしでは効率は94.2%となった.これもずれに伴い効率が悪化し,推定誤差も大きくなることが確認された.
さらに走行時の検討を行った.速度依存性は微分方程式で表せる.だが項を分解すると速度による成分は0.13%と小さく,ここでは無視した.システムとしては,1次(道路側)コイルを分割・縦列させて制御するものを考えた.図のように,2つの1次を直列させ2次に給電するものとした.またこの時の式を同様に解いた.共振条件から意味タンス変換特性を求めた.結果,定置と同様の解析手法をとれることを確認した(直列も等価1つ分とみなせる).
ずれx・間隔dを変化させ,Mpsを推定・計測した.まず精度は十分得られた.ただし直列によりdにより相互の影響も見られたM12.しかしこれも設計時に検討できることが確認できた.また0<x<dで相互インダクタンスの変動幅はそれぞれのdで6,10,50%となった.設計時はMpsが支配的で,ここから変動の抑制幅より,電流を決定できると考察した.

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感想◎

効率は他と比べると劣る印象だが,実際の走行給電を詳細に検討されシステム図も示されていたのが,特によかった.

Dual Active Bridge Converter動作を応用した非共振形非接触給電システムの基礎検証

日下 佳祐, 伊東 淳一

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)2016 年 136 巻 2 号 p. 189-197

内容

電磁誘導を用いた非接触給電は1970sから行われてきた.しかし伝送距離増大で力率が低下するため,結合係数が高い場合に限られた.近年ではその対応のため共振に着目されている.しかし複数の変換を介し,効率・小型化の妨げとなった.そこで本研究ではデュアルアクティブブリッジDABを提案した.これは共振を用いないものだが,変換を低減できる.これをミニモデルで実証した.
共振型では力率が1になるよう,それぞれにコンデンサを配置する.電力の式は以下のように導出でき,各位相シフト制御により制御できる.実用上そのための通信の遅れがあるが,山登り法により解決するとした.後の実験で,1sで追従していくことを確認した.トランス???
このシステムの特徴として,変換が3から5回に削減,ソフトスイッチング,1次側電流抑制,双方向可能,容量性負荷対策の不要が挙げられる.数式により自己インダクタンスについて,従来法と比αをとって比較した.すると結合係数0<k<1でα<1となり,DABにより1次側電流の抑制が可能なことが確認された.
その後実験機による検証をした.それぞれの位相を60度前後させることで,広い負荷範囲で双方向に送れることが確認できた.なお軽負荷時には励磁電流が過大で三角波形になった.また様々な負荷において,ZVSが可能でダイオードの損失動作がなく,MOSFETのスイッチングデバイスの適用が可能で,効率化に期待できると分析した.さらに出力0.84kWで電圧が等しいとき,最高94.1%(DC to DC)の効率が得られた.またギャップを変化させたときの,各パラメータの変化を測定した.設計値2㎜に対し1,6㎜を検討した.1㎜では自己インダクタンスが増加するも結合係数の上昇が支配的で,効率が96%まで改善した.一方,6㎜では結合係数が低下し,DAB電力が減少し,効率は90.2%まで減少した.

感想◎

接触では給電が着目される中,双方向可能なものは,スマートシステムの一環としての有用性に期待できる.ずれについては小さな幅での検討だったので,駐車時の利用に特に優れるだろう.

EVシェアリングが担うエネルギー管理

川島 明彦, 稲垣 伸吉, 鈴木 達也

計測と制御2018 年 57 巻 3 号 p. 179-184

内容

カーシェアは増加しEVの利用特性との相性もいい.短距離・長時間充電の点において.なお独では10t-CO2/y削減可とも試算された.さらにPVとでクリーンだが,そこで残量SoCを考慮する必要がある.そこでEMS(:Energy Management System)として,包括的最適化手法とその複雑さを紹介した.
変遷としてはラウンド型から便利なワンウェイ型への転向が見られる.海外ではフリーフロートも多いが規制面から日本では難しい.なお調査当時,現在最大手のTimesは30台に留まる(現在2.4万台).EVシェアの課題として,配車(車両の是正移動)とSoC管理の組み合わせ的性質の最適化問題の計算コスト,未登録者利用による情報管理の難しさ,SoCの適切な利活用を挙げた.
そこでこれを解くための運用システムとフローを検討し,定式化のための要件を示した.そこでワンウェイ型・事前予約型とし,PV・EVをシステムに組み込んだ.そして駐車場,車両,予約,時刻による多次元割当問題となり,0-1混合整数線形計画問題として定式化した.4つを入力として与え,出力の評価関数を最小化するものとして,要素を配車総コスト,PVの余剰損失,系統電力購入費とした.なおそれぞれに重みを与え重要度を柔軟に変えられるようにした.そしてその複雑性について述べた.再度割当を繰り返すため,実際に7件の予約に対し1日以上を要してしまった.そこで決定変数の削減として,まず既存の受付は変更しないものとした.また配車時間も限定するものとした.
そして100件で再度本格的にシミュレーションをした.すると計算時間は144s程度から30sほどに改善した.また結果より配車により受付可能な件が増加し,配車計画と充電計画を同時に考えることで,PV損失の低減が図れることも確認できた.
今後はV2Xによる電池の出力や非接触給電も検討したいとしてまとめた.

感想△

定義について非常に細かく書かれていたのはよかった.解決の道筋も示されていたが,そもそものアプローチに改善の余地がありそうだと思った.丸投げかもしれないが,これこそ理論的ではなく深層学習の使いどころではないかと思った.また最も読みたかったV2Xや非接触給電について,検索で引っかかったので期待したが,検討項目にすぎず残念だった.タイトルとのギャップが大きく感じた.またTimesはじめシェアビジネスは加速しているので,その点は注視する必要があると感じた.

Survey of the operation and system study on wireless charging electric vehicle systems

Young JaeJang

Transportation Research Part C: Emerging Technologies Volume 95, Oct 2018, Pages 844-866

内容

ワイヤレス充電EVの操作とシステムに焦点をあてたレビュー論文.ここでは動的・準動的(トリップでの一時的停止)なものに絞っている.走行中のEVの検討を加えることで,操作とシステムに多くの問題が見つかった.そして設計方針を明らかにし行政の需要に応えるにあたる重要性を訴えた.海外で非接触給電は様々あるが,一般にIPT(:Inductive Power Transfer)充電とされる.システムは抽象的に扱われることが多い.
動的システムは,最初はバークレー校で1990sまでに行われたが,2-3cmで効率60%が低くインフラも経済的に不可能だった.次にKAISTでOLEVが行われた.効率は最高80%で2011から2.2㎞の環状線で運用される.ほかにも鉄道系のPRIMOVE,ユタ大学のSELECTがEVバス(60kWh),欧州の自動車グループFABRICが徴収とスマートグリットの統合システム,米の研究機関ORNL,日系Pluglessほか多数の追随がある.準動的なものとして,ユタ大学は15-25㎝のギャップで90%の効率を満たすバスシステムを実装した.
現在の各研究として,①インフラの割り当て,②航続延長の評価,③費用便益分析,④支援システム,⑤その他規制などがある.①でもマクロとミクロに分類でき,前者は公共輸送に強みがある(OLEVも同様).いずれもODデータより数的最適化で求められる.チョンらはバッテリ劣化も考慮し,低電力充電で寿命を重視すべきと示した(③でも同様).ほかにも多様な経路・不確実性を考慮したものも紹介された.後者では,交通の重心を求めつつ全体のコストも考慮された.また充電と旅行時間のトレードオフも示された.ほかにもプラグインとの利用者選択,建設が民間・公共の比較分析もされた.②も似た分析がされた.400kmのバスにはインフラ込みで500kWh必要とされた.ほかでは1割ほど延長できるとされた.
③は初期投資から長期まで様々だ.例えば動的充電は静的なものと相乗効果でガソリンよりコスパに優れると分析され,$100/kWhのバッテリ価格でも容量の増加より,インフラ補強が効率的と示された.またインバータの設置などの固定費が大きく,短いものを多く設けるより,長いものまとめたほうが効率的という結果もある.OLEVのLCAではCNGよりエネルギーを73%,コストも$140000削減できるとされた.ただし各論文において,建設費は$0.8~4mil/mileなどバラついている.また環境評価もされ,プラグインと大差ないとされた.④では工法,料金,規制などがテーマとされたが,ほかと比べると遅れている.
各研究で課題や注意点はまとめられているが,主に不確実性,バッテリ寿命,ITS,環境がトレンドだろうとまとめた.

感想◎

非常に多様な視点でよくまとまっていた.日本では調べ方が悪いかもしれないが,単純な技術系の話ばかり(一部健康影響なども)で世界と比較すると,遅れをとっていると思った.

蛇足

ゼミの参考資料になりそうなもの適当に.まあ多分ならないんだが.

gigazine.net

www.itmedia.co.jp

blog.evsmart.net

www.nikkei.com

www.zakzak.co.jp

www.jiji.com

headlines.yahoo.co.jp

www.nikkei.com

www.nikkei.com

headlines.yahoo.co.jp

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