渋谷,この街を読者はどのように理解しているだろうか.
こちらは最終投稿日3/29に研究室の帰りがてら,渋谷で夕食を済ませて駅に向かう道中.
緊急事態宣言が開けたとはいえ,かなり人出が多い上,ナンパなどの低俗な人も多く見受けられた.
と書けば,やはり雑多,汚い,若い,繁雑,喧騒,混沌といったイメージが浮かぶだろうか.
ただ街にも様々な見方がある.
スクランブル交差点は日韓のサッカーの試合から馬鹿騒ぎの聖地になったが,それでも,それでこそ観光的資源を手に入れたわけで.
世界的にも絶対的な特異的な町並みで,外国人の注目も高いわけだ.
とりわけ以下の書籍では,建築・都市計画の専門の学生からによる新たな視線が提供される.
以上のように,私は渋谷に対して,漠然と見下し,悪印象を抱いていたが,これを読んで振り返ってみると,意外とそうでもない,捨てたものでもないなと感じた.
まず渋谷は地理的特徴と文化的特徴の2種に大別できる.
地理的特徴としては,谷底に中心街たる駅が存在し,そこから坂を伴って四方へ道路と街が広がっていくところだ.
この谷によって高低差が自然と生まれ,特異的な立体感が形成される.
代表的なのは地下鉄たる銀座線が最上に位置する点だ.
また他の地域では地下鉄や道路は地下に埋まり,その高低差を視覚的に捉えることは難しい.特に大手町は路線の集積の割という感じだ.あれはあれで秩序的でいいと思うが,渋谷は独自のカオスさが街の景観に面白さを加えている.
他にも首都高渋谷線の主張は激しく,さらにそのすぐ下に歩道橋が位置していたりする.
最近では都市開発が進行したことにより,ビル間の連絡橋も整備され,ますます立体的な有機性と複雑さが増幅されている.
次に文化的特徴が挙げられる.
渋谷は東急を中心に都市計画が進められている.
こうしたオフィスが整備される一方で,アングラなカルチャーも近接している.
これらのビルの陰にそうしたものが息づいている.
若者の街として,そうしたストリート系な文化が育まれている.
本書では音楽などが挙げられている.
これらは先の私の印象のように,忌避されがちだが,日本の新たな文化の発信地になっていることも事実である.
そこで本書ではこれらの共存を提案している.
大資本によるきれいな都市の形成による一層は一見美しいが,そこは人工的できっと殺風景な渋谷しか残らないだろうし,大丸有の下位互換にしかならない.
案外,渋谷はリベラルな都市でもある.
こうした多様な人が息づくためだろうか.
都内でのLGBTへの対応も早かった.
そうした多様性こそが明日の新しい渋谷の文化を作ってくれるだろう.
これは意図的に誘導するのではなく,彼らの生活圏への干渉を減らした方がきっと面白い.
そこに管理者としての不便さもあるだろうけれども,それでもなお.
また渋谷は都内でも起業が多い地域である.
坂を少し登った雑居ビルには若い会社が多い.
上記のような寛容で多様な環境が,彼らにいい居心地を与えているのだろう.
単純にアングラで地価・家賃が安いからかもしれないが.
一方で大資本は上層階にオフィスフロアを整備している.
ただ彼らのものは小綺麗で画一的な印象がある.
オフィスは会社ごとに様々な色が出るものだろう.
それを活かせるようなもののほうが望ましいだろう.
どこでもフリーアドレスがいいわけでもあるまいに.
本書はソフトバンクが大コケしたWeWorkが挙げられ,今ではコロナ禍でオフィス市場は激変してしまったが.
それからベンチの数の少なさが指摘されていた.
これは外国人が日本の町並みを見たときに指摘されがちだ.
ただこと24区内においては理由が分かりきっている.
ホームレス対策だ.
彼らが居着くことを防止するためにベンチは整備されない.
ただこれはホームレスという公共福祉で行われるべき施策が,都市計画,都市整備にも波及し悪影響していると言える.
同様にボール遊び禁止などの公園の不寛容も挙げられている.
案外,日本は冷たい夜警国家なので短期的には難しいだろうが,リベラル寄りな渋谷からホームレスシェルターなどの整備も期待したい.
LGBTもそうだが,ぶっちゃけこの国の中心たる永田町からの改善はあまり望めないから,動き始めるならこうした各地域からということにならざるを得ないだろう.
こうした指摘を通して,渋谷には案外独自の魅力とポテンシャルがあると感じた.
そうして振り返ってみると案外嫌いになれないのが個人の感想だ.
もちろん客引きの多さ,ナンパの多さには辟易してしまうが,これもこの街の魅力として寛容でいるのが人生を楽しむコツだとも思う.
渋谷はこれまで通学に際し乗換に必須だったが,今後も世話になりそうなので,この魅力をともに発信できれば幸いだ.