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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

高輪築堤

土木を学んできた土木オタクとして高輪築堤の見学会のリベンジに挑んできました.

 

 
 
 
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A post shared by AOKI Takashige (@aochan_0119)

 

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youtu.be

 

音声なしが味気ないが,今回の見学会と同様の説明が上記の動画でも行われている.

 

実は同様の見学会は年のはじめ頃にも行われていた.

その時は応募方法が手紙だったのだが,返事の手紙はなかった.

今回は電話応募とのことで,電話口に粘って権利を勝ち取った.

とはいえ...

 

当の構造物は非常に面白かった.

そもそも23区内の石垣なんて皇居を除けば絶滅危惧種ではないだろうか.

 

石垣といえば,東工大の真田先生が思い出される.

東京工業大学_真田研究室

 

しかし明治の文明開化のお膝元でも,その技術が日本の伝統的な技術で,必ずしも西洋の近代技術を取り入れるものではなく,折衷が図られているのが非常に興味深い.

明治元年であればポルトランドセメントの実用化も済んでいただろうが,あえて石積みを選んだ理由が気になる.

やはり全般的な近代化を進める中で,鉄道建設に国内のセメント生産が間に合わなかったというところだろうか.

新橋付近のレンガアーチも同じような指摘ができそうなものだし.

 

ただこの築堤の役目は案外限定的だったようだ.

というのも実物を見て感じたが,波の浸食による風化は軽微な印象だった.

波に洗われればもっと表面がなめらかになりそうなものである.

戦前にはかなり埋め立てられていた情報もあり,さらにその以前に築堤付近の埋め立てが行われたと考えるのが妥当だろう.

 

築堤の上部が大きく損じている点も気になる.

個人的な考察としては,文化財保護の観点が育まれるより以前,高度経済成長期などの土木工事時に,地盤締固めなどで破砕か取り除かれてしまったのではないだろうか.

石も砕けばちょうどバラストっぽくなるのが,当事者には不都合中の好都合だったかもしれない.

かつてはここが海外線の境界線だったのに,すっかりこの辺りは埋め立てられてしまって,海は遠く磯の香りも感じられず,人間文明のから恐ろしさもほのかに感じられる.

 

さらに土木工学,地盤力学的に非常に興味深いのが,海側の地面に多く打ち込まれた波消し杭.

その効果は検証中で消波作用が一説にはあるようだが,やはり地盤の強化のために打ち込まれたと考えるのがもっともらしいだろう.

しかしその量がすごい.群杭効果とはいえ,さすが国家プロジェクトの重要構造物なだけと言えるだろう.

ただ座学だけで実構造物の基礎なんて素人同然なのだが.

だが,それだけでもないように思える.

背後の築堤の崩壊を防止する上で支持力を高めるとともに,波による海底浸食の効果が高そうだ.そういう意味での消波なのだろう.

 

さらにさらに工法も気になる.

護岸工事については富国強兵の一環でお台場に砲台を設置する中で,同様の工事は既に行われていたようだ.

しかし作業中に絶えず水が流入してくる海中の工事を,当時どのように行っていたか非常に気になる.

現在であれば矢板を立てたり,あるいは明石海峡大橋の橋脚であれば,ケーソンを使いながら海中不分離コンクリートという大発明の恩恵にあやかったわけだが,当時にそこまで高度な技術はなかったはずである.

ありえそうなのは,引き潮時に集中的に工事をすることであるが,果たして実際はどうだったのか.

機会を見て,かつての工法を研究するのも非常に面白そうだ.

このあたりは海外のお雇い外国人の力を頼ったのかもしれない.

 

また鉄道の観点で興味深いのが信号場跡とのことだ.

この制御方法もワイヤーを使った品川駅などからの遠隔操作だったのか,信号係が常駐していたのかなど,今後の調査項目らしい.

 

築堤の総延長は上記の通り3km弱になり,そのうち400m弱が出土したわけだが,都会でありながら大規模で15両編成も止められそうな長さで,そのスケールもシンプルに土木的でよかった.

 

 

ちょうど先月,図書館で上記を借りて,井上勝などに関して知見が深まっていたので,より面白く見れたように思う.

 

見学によって転載不可とされ,ペラ一枚でありながら,特別な資料も貰えて,ありがたいことに無料での開催だったので,東日本旅客鉄道株式会社様にここに感謝を意を表します.

 

高輪ゲートウェイは初下車だったが小綺麗で悪くなかった.

築堤側から見るのも新鮮そうな感じだった.

ただホームが系統分離なのはやはり不便.