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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

スペイン再発見

はじめに

竹橋は国立近代美術館のガウディ展に行ってきた。
時は先週の華金として、16時にFlex退社し。
週末で開館時間が延長されていたが、企画展の人口密度の高さや満足感、訪問済みであることから通常展は今回はスルー。

pytho.hatenablog.com

なんだかんだ近代美術館は建築の縁がある。
前回はそれほど感じなかったが、近代美術館の企画展の会場は手狭に思えた。
予約制で人数制限してなお人口密度が高かったからだろう。

毎度そうなのだが予備知識はほぼゼロ。
本展でスペインの歴史を学習するまであった。
高専教育はここが良くない。

イスラム

文化

キリスト教イスラム教が割りとバランスよく混在している国は少ない。
スペインのイスラムのルーツを初めて知った。
こういう文化の歴史上の転換は、独自性を持ちやすいので個人的には好きなタイプだ。

これはガウディの作品にも表れていたし、それ以外含むスペイン建築の普遍的な歴史らしい。
それが今日のサグラダ・ファミリアの存在価値を高めている面もある気がする。
キリスト教の中心地のイタリア、イギリスやロシアが、イスラムへの理解を示そうとしても無理がある印象だが、歴史的な混在地域ではその発信に説得力が感じられやすい。
どうもここの不和の解消はひどく前途多難そうなので、和解・平和への礎になればガウディも本望だろう。

建築

さて意味づけはさておき、個人的に重要なのは具体的な建築への影響だ。
確かにイスラム的雰囲気を感じられた。
モザイクタイルを中心とした比較的派手な色使いは近いものを感じる。
これは先の欧州旅行で感じたが、南部は生活と街の色の彩度が高い。
スペインも地理的にそこへの近接性も影響しているかもしれない。
また当然地中海対岸のアフリカ、ナイル的影響も無視できないだろう。

色もそうだが形にも表れていて、自然をこれでもかと詰め込むのもそれっぽい。
欧州系はどこか人工的に作りがちな印象がある。
人間の権威が好きなのかもしれない。
解説にもあったガウディへの有機性への傾倒の一言で済むかもしれないが、これも欧州内の異国情緒感というかユニークさを表している。

有機

本展の2章3節のセクションが、これを代表的に示している。
棕櫚のモチーフやディズニーシーのマーメイドラグーン的な曲線的な水族館的空間の演出などだ。
ja.wikipedia.org

ポストモダンと数学

美しさ

さらにこの曲線の利用は安直だがポストモダンとも近接する。
そこで吊り下げ実験を記述する5節に接続していく。
これはエンジニアからしたら、特に現代においては、ひずみの微分方程式に過ぎない。
あるいは数学者、物理学者ならカテナリーまではたどり着けるだろう。

\displaystyle{
d^ 2w/dx^ 2=-M/EI
}

さらに以降はより数学的要素が強い。
回転体の積分や双曲線面なるもの、媒介変数表示で表現しやすそうな図形など。
それからサグラダ・ファミリアでも出てくる柱のねじれも類似した数学感がある。
で、これが本来的自然の美の追求、いわゆる俗っぽく言えば構造美・機能美的センスらしい。
納得するところだ。
加えて展示方法も優れていて、上記の実験はその結果を反転させて図に起こす必要があるが、イメージしやすいようにその下面に鏡が設けられていた。展示番号45

芸術と数学の関連は黄金比を代表してしばしば表れるが、こういった近代のものは意外と珍しい印象もある。

施工性

またねじれやらは美的効果だけでなく施工性にも優れていた。
確かに工事では墨出しなどを活用する。それに類似する。
簡単なねじれで優れた曲線を作れるということは、その壁面も材料をそのように変形させるだけで完成するわけだ。
これは殊更現代建設設計への風刺な感もある。
現代は技術で曲面を制覇しつつあるが、そういったポストモダン的建築はしばしば建築費がかさみがちだ。
日本だと当初の新国立競技場の案が懐かしい。

実用面で言えば、前述のモザイクタイルは防塵性が優れる利点もあったとか。

ただこれも捉えようで凄いCAD・3Dモデル設計者(Blender等含む)は、うまい具合に図形的特徴や繰り返しをコピペで効率的に処理もしている。
ある意味、ガウディもそういう素養・能力に優れていたと言える。
ただ業界に入っていないのでなんともだが、施工性を十分に考慮した設計はあまり見られない印象だ。
ある程度仕方ないにしても、当初図面と実際の施工図が違って、書き直したりしているわけで。
端から見ると非効率に見えて、あまり関わりたいと思えない。

こだわり

またBlenderに言及したが、サグラダ・ファミリアの作品の規模そのものはもちろん、そのディティールへのこだわり、色味、シェード、宗教性などを考慮すると、比肩はできないだろう。
彼自身が手を動かしながら、彫像の監督もしていたのは驚きだ。
しかも生身の人間や動物を型にとってリアル差を追求したというのだから、もはや狂気的ですらある。

現代のモデリングでいえば、徹底的にスキャンしていくような姿勢が近いだろうか。
なんか彼が先進的だった影響か、現代の最前線の設計にも流用できそうな普遍的とも言えるエピソードが多いし、同様に彼が現代に生きていたらどのような媒体でどのような作品を作り上げたかはとても妄想が膨らむ。

サグラダ・ファミリア模型

聖堂

映像からは内部の曲線はモダンな印象を受けた。
おそらく吊り下げ実験の曲線で、支点近傍の傾きが大きい影響で、柱の傾きが一般的なものより大きい影響なんかがありそうだ。

受難の塔はポストモダン的流れを組んだ雰囲気も感じつつ、メタボリズム感が強い。
受難さの表現なのか微妙に気持ち悪さがありつつも、くどくない感じが意外と悪くない。
こっちは福音史家の塔。
これもモザイクタイルやらで、図形的にゴチャついた感じなんかが、イスラム圏っぽい雰囲気もある。

彫刻

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今回全般の話は初知りなのだが、キュビズムの彫刻の有無も没後議論を呼んだらしい。
ただ結果的に良かった印象だ。
彫刻も建築も本物を見ていないのでなんともだが、こうした様々な表現方法が1つの建築にデパート、ミュージアム的に結集しているのは、それ自体がまた価値にもなっているし、人間・文化・芸術の総力戦的で包摂的な雰囲気もポジティブだ。

叙述トリック

3章後半が叙述トリック的でいい。
というのも3章のメインの前後に、ガウディ前後の建築状況の写真がある。
3章のメイン部分の圧倒さで完成された感すら一度受けるわけだが、ここでいわば現実に引き戻すような展示による独特の表現効果がある。

終わりに

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丹下モダニズムの指摘

最高のイエスの塔の完成予定は2026年らしい。
是非その機会にスペインに行ってみたいものだ。
バルセロナはその区画自体が、都市計画専攻出身として非常に魅力的だ。
スーパーブロックである。これを観光として捉えるのは相当の物好きだけだろうが。
さらに観光要素はなさそうだが、Decidimの利用実態的なところも関連して気になる。

車道の使い方を市民が決める。バルセロナの「スーパーブロック計画」とは | 生活圏2050 | ひらけ、みらい。生活総研
Decidim

下記書籍を以前少し読んだが復習がいるし、他の資料にも当たりたい。