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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

【書評】反脆弱性とベーシックインカムの是非

pytho.hatenablog.com

これの続きとして記す.
そうしてさらに考察すると,これを機にベーシックインカムを本格的に検討してもいいのではないだろうか.ざっくりいえば国民全員の暮らせるだけの生活保護を配るような政策だ.
これは本書だけでなくナシーム・ニコラス著の反脆弱性にも依る.といっても現時点においては概要しか読んでいないので後日改めて全体的な書評も行えたらと思う.彼はトレーダと学者の両者の側面を持っている.その中で脆さから進化した”反脆さ”を提唱している.いわゆるVUCAの時代においてはゴリゴリの対策は意味が薄らぐので柔軟性を持たせるべきという論調だ.言葉を変えればレジリエンスだ.土木にもこの考えは浸透している.例えば単純に強度を高めるのではなく,予め壊れることを想定して復旧性を高めるだとか,1本の道が寸断しても大丈夫なように予備の道路を整備するなどしてコストパフォーマンスと不確実性へのリスクマネジメントとして浸透している.また別で言い表せばおばあちゃんの経験と材料の劣化を挙げている.前者は老いつつも補強されるのに対し,後者はただ朽ちるだけだ.前者の重要性というわけだ.
そしてトレーダとしてこれまでの金融の批判を行っている.要はリスクを適切に管理・注視してこなかったツケだとしている.これは私の印象とも合う.世間では灰色のサイとも言われる.彼の著書としてブラックスワンも有名だ.前者は見えているのに無視しているもの,後者はこれまで予想されていなかった事態を表している.下記の記事ではコロナウイルスが後者で,これまでのバブル的景気を前者として批判している.

www.nikkei.comこれまでバブル景気だったが投資家が楽観していたところに,コロナウイルスというブラックスワンが表れ,これを引き金に証券の値段も適正化:下落しショックが増幅したという流れだ.
さらに言うならばこうした不確実な事態への対応策を練っていなかったことも批判にあたる.パンデミックの可能性については言及されていたが誰もがそのリスクから目を背けていた.まさしく現在バイアスだ.リーマンの反省はどこへ行ってしまったのだろうか.
かくして多くの人は失業してしまった.AIによる自動化の進行によって労働力は飽和することが予想される.緊急事態宣言を受けて通勤電車の混雑は著しく緩和している.労働力の飽和の照査だろうか.あるいは思いのほかリモートワークが進んでいるのだろうか.今後同様の事態が繰り返される可能性もある.その度に補助金を検討するのは非効率的だ.であるならば補助金自体をデフォルトとするベーシックインカムも一考の余地があるのではないだろうか.
前回で述べたように低所得者が労働で困窮するような不利な状況は排除できる.またデフォルトで収入があるため,あえて労働する人にはさらなるモチベーションが働く.働く以上しっかり稼ごうとか,ベーシックインカムを支えるために貢献しようという互恵性が期待できる.そもそも日本の金融として多くの人は税金の支払い額よりも公共サービスの受給の方が大きいことはもっと知られるべきだ.こうした背景を考えれば収入だって公共サービスになっても自然だ.というか現状のバランスシートが一般にそうなっている.そしてビジネス力のある人が牽引した方が単純に効率的だ.これは初心者では難しいことがタクシードライバーの実験などから明らかになっている.経済合理性を説いて全体で効率的に働くことを促進し最大多数の最大幸福が実現可能だ.これは経済的余裕や(賛否ある)勤労の喜び・美徳の体現といった広い視野を包括する.

家計「減収証明」難しく 企業、申請手続き煩雑 世帯給付30万円/中小200万円/フリーランス100万円 :日本経済新聞


そしてこれらの議論の活性化について次回の書評で検討したい.