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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

観光で危ぶまれる地方のすう勢

最近のニュースで気になる,書きたいものが積みあがっているので,各個撃破していきたい.

まずはGo To Travel関連.もう少し早く書こうと思っていたら,東京除外といった事態の急展開で今後もますます目が離せないテーマとなってしまった.

このキャンペーンについては,観光業の切実な声が聞かれるが,残念ながら日本は資本主義経済なので支援にも限界がある.そもそも一番おいしいのは,じゃらんのようなネット主体の仲介というのも皮肉だ.日本政府はお金の使い方が下手(カイジ班長風)

しかし,ここではコロナ下で行うべきかという表面的なホットな話題ではなく,もっと根本的な部分を考察したい.日本の観光戦略についてだ.この手のテーマと言えば,以下の書籍は無視できないだろう.私もずっと読みたいと思っていたのだが,読む機会に恵まれなかった. 

ただ現在の状況からすれば,もう読まなくてもいいのではないかと思う.もし既に読んでいる方で違う意見の方がいれば,声をかけてもらいたい.

この本に書いてあるかは知らないが,コロナが顕在化する以前は,人口減少を見据えてインバウンドの観光客からの外貨を獲得することで,経済を維持しようとするのが国家的な戦略だった.これは地方の産業の衰退との親和性も高く,多くの地方が観光戦略をとっていた.

しかし昨今の情勢を見る限り,この戦略が失敗だったことは火を見るよりも明らかだ.この原因を考えたい.

そこでまず考えられるのが,地方産業のモノカルチャー経済化だ.かつて炭鉱などで栄えた地方も,その多くは産業の構造変化,特に三次産業化と人口流出の波で衰退を免れない状況だった.そこで地域独自の資源を生かす形で観光を中心に据え,国策による支援の恩恵も受けられていた.

ただここに大きな問題が潜んでいた.まずコロナで明らかになったように外国人への依存が高く制御が難しい.さらにVUCAで不確実性が高まっているにも関わらず,地域産業を観光へ異常にシフトさせてモノカルチャー化して,リスクを必要以上に高めてしまった.

前者は特に中国依存が酷く,モノカルチャー化をさらに加速させた側面がある.これはコロナの問題が起こらずとも,中国の人口衰退や関税対策と共に状況がじりじりと厳しくなっていったことも予想される.

後者は自治体の責任の重い一面があるように思う.これが企業であれば,経営者は厳しく非難される.観光客はそもそも地域に根付く人間ではないため,それよりも定住人口を増やす施策を重視すべきだ.そのために都市アメニティの向上や企業誘致に積極的に努めるべきだった.また各地方の一律的な観光戦略は,悪い意味で凡庸で冗長だ.世界遺産といった強みがあるなら理解できる.しかし地味な観光地のアピールは効率的とは言えない.ニッチなところは,オタクが勝手に行っていればいいのだ(個人の見解)

ただそんな地方にも活路があると個人的には思う.まず東京のスタグフレーションが深刻で,満員電車といった都市公害も同様に深刻という点.自然に近い快適な生活ができる地方の魅力が,再評価される可能性を秘めている.

さらにこれと好相性で,かつコロナの功罪として,リモートワークがある.これにより東京の本社に勤めるような会社員も,地方での生活が物理的に可能になる.リモートワークの導入が思いのほか進んでいないのは,残念であり懸念点だが.

こういった施策で先進的な印象があるのが,IT誘致を行った高知をはじめとした四国だ.立地は限りなく悪いが,だからこそ危機意識が高かったのではないかと邪推できる.下記は徳島に拠点を置くが,東京での調整も多く出張も多いとのことだった.ただ徳島拠点でも業務上の短所は見られない.むしろ固定費が安い利点の方が大きそうだ. 

pytho.hatenablog.com

ただ地方再起の課題として,独特のコミュニティ・近所付き合いがある.東京にはなく,地方にあるものだ.これは育児などで利点になる一方,特に若者にとっては煩わしく思う人も多いだろう.そのため自治のあり方も見直すべきだろう.コミュニティは必要と思われるので,若者が積極的に参加できるような価値を付加できることが望ましい.そして特にコロナを疑うなどして,攻撃的に都心出身者を迎えてしまうことは避けなければならない.相互の理解と歩み寄りが重要だ.そのためにワークショップなどはますます注目されうる.

最後に観光業の救済について考える.冒頭では資本主義を説いたが,事実観光業が肥大化している点は否めない.そのため適切な形でのスリム化が必要だ.そこでベーシックインカムが効果的と考えられる.これは全員が一定の所得を得るため,過剰な労働が削減される期待がある.これであれば,地方の産業衰退を嘆くことも根本的に解決できる.ただ地方は山がちで災害リスクが高いこともあるので,そういった特有の自治の課題に対して仕事が作られればいいだろう.特に日本の木材資源の活用としての林業は,今後注目できそうだ.環境対策としてCO2低減(輸入比),生態系保持,防災(斜面),地域雇用といったグリーンインフラ的価値があるためだ.

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