AOKI's copy&paste archive

高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

現代文学やわめ

大学は卒業と相成ったので,これからは市の図書館にお世話になる.

 

ひとまず当初の狙い通り,普遍的にあるであろう世界文学や現代国内文学や各出版社の新書を漁りつつ,ないものは都度ECで買おうと思う.

 

とはいえ,世界文学はカロリー高めで,読みたいものの多くが貸出中だったこともあり,最近の国内文学,芥川賞本屋大賞関連を読んでみた.

 

概しての感想としては,読みやすくはあるが,やや浅く陳腐な印象を抱いてしまった.

具体的には村田沙耶香の「丸の内ミラクリーナ」と伊与原新の「8月の銀の雪」を直近で読んだ.当ジャンルは1年くらい前の「蜜蜂と遠雷」以来か.

 

pytho.hatenablog.com

 

おそらく上記の感想を抱いてしまったのは,短編集を選んでしまったことにある.話が短いと,それだけその世界観に入り込むのも,あるいは作者が入り込ませるのも難しいと考えられるからだ.

個人的な感情整理の作用は期待以下になってしまったが,1つの娯楽としては十分に面白かった.特にやはりというべきか,書名にもなっている編は完成度が高い印象だ.

 

「丸の内ミラクリーナ」は,弊社は丸の内から物理的に縁遠いものの,女性のいる職場としては概念的に近く,実際に研修のメンターもミラクリーナに近い.若干,パーソナルでプライバシー度の高い話にはなるが,彼女も年代がアラサーに近く,某キャラクターを愛するところも近い.そういう意味で,職場の先輩を当てはめてみることで,面白さが倍増した.

またこれは著者の特徴かもしれないが,端切れのいい勧善懲悪なストーリーでありながら,比較的ディープな人間的欲求の描写のバランスが面白い.ただここはかなり好みが分かれそうなところで,個人的にあまり周囲に勧めにくいようにも感じた.

 

後者「8月の銀の雪」は理系就活生の話とのことで,ちょうど1年余前の自分の姿と重なりそうで非常に興味があった.

全体を通して自然科学に精通したテーマや描写なのは面白い.そのため文系の読書家には知識のいい契機になりそうだ.生物学的テーマが多く,工学系の畑にいた私としても,その自然科学的な内容そのものへの知的好奇心の充足感があった.しかし,そうでありながら,話は案外人情深く,人間臭いのが面白いところだ.そしてその中で社会的課題への問いかけも遠回しにさせられているように感じられるのが,著者の描写の妙技か.より具体的に言うならば,社会的弱者に焦点が当てられている.そういう人たちが,生物や科学に共感しようとするのも心理的に興味深い描写に思える.もっともそれを国語の問題文に出されると困ってしまうが.個人的には題の「8月の銀の雪」のほか,上野の話も好きだった.マイブームだからだ.

 

 

思い返せば白夜行こそ長編で難しく深いように感じたが,中学生によく読んでいた東野圭吾も存外シンプルだったように思う.考えさせられる現代国内文学緩募.というのも海外有名や近代文学は比較的難解なのが分かりきっているので...

娯楽が猛烈に消費される時代変化に合わせて,明快さや一般性が台頭しているとすれば,それは文化的危機にも思われる.

とはいえ,マチネの終わりには気になっていたので,これから読む所存.

それからカズオ・イシグロ

追って書評したい.