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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

書評:蜜蜂と遠雷

ここでも簡単にやってみたのだが一冊読み終えたので本格的にやってみたい所存.

pytho.hatenablog.com

ちなみに上記でも述べたが小説自体しっかりと読むのが久しぶり.そのため純粋に読書が久しぶりの感覚で懐かしく本もよかったので非常に楽しめた.

 

せっかくなので中学卒業までに読んだものをリスト化してみる.

こうしてみるとミーハー本,有名海外文学,ラノベで大別できる.読んでいた時期としてはそれぞれ小5~中1,~小6,中2~といった具合だ.なので幼いころの方が真面目だった説も出てくる.意外と本棚を見返してみると面白くもあった.

閑話休題,それでは本題に移る.

読んだ本はタイトルの通り恩田陸著の蜜蜂と遠雷

といっても書ける内容は限られる.そもそも小説の読書経験が著しく乏しい.中学の頃はラノベを読み漁っていたがあれを文学と正規にカウントしていいかは疑問だ.モダンである意味最先端とも言えるが.

まず比喩が非常に表現豊かだった.これは小説の内容,ジャンルによるところもあるかもしれない.これまで読んだものはミステリー,SFが多く単純な文章表現の良しあしよりかは構成に重点が置かれていたように感じる.

これは逆を返すと,本作の構成はあまり面白くなかった.というのもコンクールを時系列を追って各コンテスタントに焦点を当てている.その中でn次予選,本選に分けられており,読み進めるごとの成長や関連性のワクワク感があるものの展開のドギマギさはない.端的に言って誰が残るだろうとかいうのが伏線云々以前に予想できる.その微妙なニュアンスを序盤から伝えるポテンシャル,表現力は評価できると思う.ミステリーであれば犯人が誰かという衝動がこみあげてくるがこれにはない.やっぱりそうかという感じがどうしても否めない.加えて以下の写真がある意味で衝撃的だった.これは大学の食堂の一角だ.ここで続編について知ってしまった.これにより後半でコンテスタントがさらに成長していく中で,続編ではこうなるんだろうなあというメタ的な視線が入ってしまった.個人的にこの手の小説においては続編は出すべきではないと思う.文学の醍醐味とは作中で語られなかった,特に登場人物の未来についての解釈が読み手に委ねられる点だと強く思う.そして日本においてはこうした土壌が同人市場の素地でもあるだろう.続編はこれを壊しかねない.確かに原作者において担保された物語の需要もあるだろう.しかしそこを踏み留めてこその”文化”だと私は思う.

話をミクロに戻す.作中において非常に好きな表現があったのでこの一点だけ紹介する.以下の部分だ.単行本の261ページにあたる.ここは節の終わりの部分である.ここの最後の3行が深いように感じる.

春と修羅。あたしの。あそこに。

この文章は詩的だ.短い1段落だがここにこそ亜夜の気持ちが凝縮されている.言葉にならない思いの言語化の中途半端さとも言えるものがここに詰まっている.エモい.

そうして続く最終段落やその前の宇宙にいるという描写からも分かるように場面の情景が繊細に描かれている.そのため活字なのにも関わらず世界が広がる.これは登場人物の感想による情景もそうだし,登場人物の演奏自体:音楽もそうだ.こんな情景なんだろうなあというのが容易に目に浮かぶ.豊かな語彙で簡単に行うこの文章力自体はさすがプロだと言える.そしてこれだけの長編にも関わらずその表現に飽きがこない点もすごい.冗長ではない.くどくはない.だから読み進められる.展開がたとえ読めたとしてもコンテスタントの表現する世界の表現を読みたいと思える.デメリットを補う,むしろ活用さえしているのではないかと感じさせるすごみがある.そのような感じで勧められる.

ここまで拙文ながら自分の言葉で書ききってみた.

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上記のようなプロも同様のことをしている.というか私はこれに感化されて真似したところがある.彼女のこの動画が面白そうだったので図書館で借りてみた.ぜひこれも見てみてもらいたい.彼女のものの方が構成も練られ大衆的ではるかにお勧めだ.暇な人は当記事と見比べたり自分なりの感想・アウトプットと比較もしてみて欲しい.

ここからは蛇足.ちなみにだが,私は小学生や学部の頃など何度かピアノに挑戦しようとして,実質的に挫折している.ただだからこそとも言うべきか,音楽家へのリスペクトもある.本作を読んでいて,コンテスタントらへの尊敬が一層増した.プロの音楽家は素晴らしいと再認識できた.ただクリティカルシンキングのうるさいオタクでもある.そのため音楽系YouTuberらに思うところがなくもない.日本でもすごいピアニストらがいる.しかし彼らの動画のクオリティに,わずかながら思うところもある.以下のチャンネルは非常に素晴らしい演奏をする.1つでも聞けば感じるだろう.ここでは身近なサブカル寄りのものを選んだが,クラシック方面でも海外では素晴らしいだろう.

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一方で他の日本人を見返してみると,確かに私より遥か遥か腕は上で素晴らしいが,トップと比べると見劣りしてしまう.そのためチャンネル登録者にも桁の違いが見られる.音楽では作中でも書かれているように言語の壁がない.そのためタイトルが日本語,演奏がJPOPでも関連性は低い.故に彼らにはさらに努力してクオリティを高めてほしいと望む.邪推だが練習時間の差異があるのではないかとも感じる.単純なミスタッチもあったりするからだ.ただ一方でこれにも問題がある.実質無料コンテンツのYouTubeに,そこまでする価値があるかという点だ.これはその通りで有料コンサートを別で開き,ハイクオリティの演奏をしてくれるのであれば,それがもっとも望ましいと思う.