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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

フランス美術

先日の国立新美術館で開催されたルーブル美術館展に関して。

フランス美術としては、やはりロココ様式が大好物だ。
絵画としての明るさとそれに伴う色相の淡み、儚さのようでいて明るい雰囲気が非常にいい。
今回はそれに比重を置きたいなと思っていた。


ただ結論を先に示すと、ロココ様式は思ったほど多くなく、その点はやや拍子抜けとも言えた。
本展はその形式に限定せず、ルーブルとしてのフランスの歴史を概観することに重きを置かれていることを再考すれば当然とも言える。

しかしながらやはりキラーコンテンツであることは間違いない。
一発目がまさしくだった。
テーマも技巧的にも典型的と言えるだろう印象だった。

今回、時代の進歩を感じたのが図録・解説のQRコード表示によるWeb化だ。
ただ全ての情報がそこに網羅されているわけではなく、特段年代の記載が抜けていたのはやや残念だった。
これらは手元に紙面を用意するか、プレートを見に行かなければならない。
ただテキストがWeb化されたことで、著作物の個人利用の範疇の潜在性が高まったとも言えるだろう。
直近着目している技術との関連性においては、Voiceboxによる解説の付加とか。
既にありそうな気もするが、視覚障害者向けのテキスト読み上げ機能を応用して、健常者向けにもHTML上のテキストを読み上げさせれば、美術館の音声解説も危ぶまれそうだ。
スマホ向けに落とし込んだりが大変そうだが、そういう開発は俄然興味がある。

1.「アモルの標的」

これが半ば唯一のロココ芸術と言えた気がする。
最初が重要で大衆受けが良さそうなこれを選んだのは無難な采配に思える。
私含めいくらかいそうな気がするが、この冒頭のインパクトやポスター等からロココを誤認した人も多そうだ。

一転して次は大きさ、彩度、テーマともに逆転。
女性が極めて色白で強調されてそうな気がした。
体毛が描写されないのも同様かな。であると当時からそういう嗜好性が綿密なわけだ。

さらにその次の「ニンフとサテュロス」はロココとしての不自然なライティングが表現されている。

浅はかだが8の「ディアナとエンディミオン」は額縁と錯覚するほどの中心部分を囲う装飾が絢爛だった。

11「オレイテュイアを掠奪するボレアス

被害者側の女は反抗しておらず、かつての人権意識を写しているのだろうか。
ただその後の名画の説明にもよると、女はそういう思わせぶりな態度を取るのが戦略でもあったらしい。
周囲には同様な絵が多くあったが、男の性的な暴力性として半獣であることは象徴的だし、ましてや下半身側が獣なのがまさしくといった具合だ。

16「リナルドとアルミーダ」は、天使と鳥のそれぞれの口づけは典型的に寓意的だった。

15「カルロとウバルドの誘惑」

は比較的珍しく銅板が土台。
枠のカーテンは意識的か知らないがフェルメール的雰囲気を感じた。
本展の本節のテーマ、男は暴力、女は魔力という性的な問題は、現代でもそれほど変わらないか。
保守的な見方ではあるものの、DVの具体やオタサー的文化コンテクストにて、それぞれ固定的な役割みたいなものが見られる。
社会規範による循環か否か、鶏と卵の問題ともとれるが。

19「ナクソス島のバッカスアリアドネ

静物、踊れねじれる構図、ロココ的明るさ、背景のエッジされた暗さ、獣人のモチーフ、コントラストがそれぞれ効きついている。
各要素が十分に優れている。
とはいえ個人的な印象としては、尖りきった要素と一貫性には欠け不気味さも感じられた。

18「プシュケとアモルの結婚」

画面上部の背景としての巣立ちや聖火的な肯定的モチーフ、ロココ特有の明るさと淡さでまさしく好みストレートの形式だった。
もはや白馬が淡さで同化している。
これを見て、そういえばフワフワした雲なんかも典型的な具体に思えた。
神話的な解説が結びついているが、一般には分かりにくそうなものの、どれも神話ばかりなこともあり、6「眠るアモルを見つめるプシュケ」と強い関連が伝わってくる。
そういう意味でも本作は本展において、テーマと技術の背景それぞれで楽しい。もちろん時代前後関係や作者の観点でも面白いところはあるだろうが、ここは私にとっては考察分野として依然課題だ。

21「ピュラモスとティスペの遺骸を発見した両親たち」

唐突にロココ系と非常的に対照的な黒。
悲哀さの解説があった。その意では尚の事ロココの方が見ていて明るく気持ちいい。
絵画はこうして微妙なところだが、人間悲劇を求めがちなのが難しいところだ。

図録の見本を見ていて気づいたが欠番の23が天使のアモルたちがロココ的に明るげで可愛げで現物を見たかった。残念。

作品を飾る壁紙は冒頭のピンクから紺へ。

33「ローマの慈愛、またはキモンとペロ」

端的に言えば抜群に嫌悪感があった。
フェチの言い訳くさいし、近親的なのがよりフェチっぽく、今日の倫理観ではかなり気持ち悪い。
何がというと授乳という行為。
言葉で書くとより強烈な感があるが、娘が牢獄で飢えた父にするということだそうだ。
身近さの表現かそれほど美人には描かれていない狙いがありそうなのも、またフェチっぽいように見えてしまって先入観から抜け出しきれなかった。
ただこういう問題提起をできるような作品は、芸術としての存在価値がより高いであろうことも認められる。この心の葛藤がまた作者の術中に嵌められているような気がして、なんだか落ち着かない。
いい話にするのであれば、家族の愛、その具体的な形というのもまた様々に認められるし、そうすべきなんだろうね。

38「エジプトから帰還する前の聖家族」

エスがもはや少女のような可憐さを秘める。
そしてイケオジのヨハネが際立つ。
聖家族、聖母といえば、今日YOASOBIのアイドルのラップ部分の歌詞にも特徴的だが、キリスト圏の受け止めや如何に。別段問題視しているように見えなそうで、トップチャートに躍り出ている。
あれも言わばヒロインの無教養の表現の助けにもなっている、ヒロインの宗教的浅慮の表現の見方は深掘りしすぎかな。

42「聖女の殉教」

たまにの暗いのが逆にハイコントラストに映える。
やはりロココに限らず、フランスにおいては明るい表現が歴史的にも好まれてきたのが、所蔵からも言えそうな気がする。
国旗とかもそうだし、詳しくないが欧州も東側に行くほど、暗さを肯定する傾向にあるような気がする。

41「キリストの十字架降下」

解説からの転載だが明快な配色古典的らしい。なるほどね。

35「眠る幼子イエス

肌の表現が非常に繊細で美しい。
保存状態や普遍的な主題から相当大事に扱われたことがうかがえる。

50「田舎家の室内で若い女性をからかう老人」

端的にはスケベオヤジという普遍的テーマを読み取った。

46「若い女性を訪れる兵士、または朝の訪問」

このあたりからオランダの影響か風俗的でロココと対照的な雰囲気。
典型的な古典的雰囲気、厚塗りの重さもまた。
先述の東的雰囲気とも言えるか。これは完全に個人の見立てだが。

51「部屋履き」

ザ・匂わせの古典。
絵の中の絵は意味があるのか、哲学的な見方もできそう。
であれば寓意的でフェルメールにも近いか。
そうなるとこのあたりは当時のオランダ系の流行りなのか。
そのせい:昨今の日本のフェルメール人気に比例してか、グッズショップの複製画の売れ行きも抜群だった。

で、結局何の絵かと言うと、ただのドア・宅内なのだが、状況証拠的に背徳的・不道徳・淫らさが漂っているという。
しかし考え直すと、これの大きな複製画を自宅に飾るのも、なかなかの胆力とも思えるがw

55「ぶらんこ」

ロココで上位互換的なのがあった記憶。
ただ対人性の愛のテーマの本展にはこちらに軍配か
youtu.be

57「かつてヴィーナスに捧げられた神殿」

一見ただの建物だがレリーフの言わば絵の中の絵が効果的。
時代性の表現も加味してかレリーフなのも特徴的で面白い。
果ててはいないものの、そこそこ朽ちているのはただ写実性を求めたのか…?
あるいは何か寓意的な狙いもあったのか。

61「アモルを支える三美神」

ロココ的色使い!
ミュシャぽい。私も当然好きだし、現代の同世代は好きそう。
ジェラピケで有名なMASHもそういうブランド出してるらしいし。
縦楕円の枠も無駄がなく、うるさくなくいい。
全体的にワタシ的に高得点。

59「かんぬき」

解説され尽くしてるだろうが、本展でも最重要そうなのでしっかり考察というか感想を残しておきたい。
思ったがこうした印象と学術的な見解をChatGPTで比較してみたりして、自身の誤りを指摘してもらいつつ、この解釈を昇華させていくのも活用法として良さそうだ。

カーテンの赤は構図の広くを占め情熱的な表現に買っている。
金のドレスの含意は?個人的には推し量りかねるが、全体的な配色な派手さがエロさを強調させているようにも。
主題を目立たせる効果的なライティングと、いい意味での動きのうるささはロココに特徴的な技術も見られる印象。

フラゴナールの美術作品「かんぬき」に関する解釈は個人の主観に左右される部分もありますが、一般的な通説を以下にまとめます。

カーテンの赤: カーテンの赤は、構図の広い範囲を占め、情熱的な表現を引き立てています。赤は通常、情熱や力強さを象徴する色とされており、この作品においても情感やドラマを強調する役割を果たしています。

金のドレス: 金のドレスの含意については、個人的な解釈が分かれる部分です。一般的に金色は富や贅沢、高貴さを表す色とされていますが、具体的な意味は作品や観賞者の解釈に委ねられます。また、金のドレスが全体的な配色の派手さを強調し、エロチックな要素を演出しているという見方もあります。

ライティングと動きのうるささ: 作品中の主題を目立たせるための効果的なライティングや、動きのうるささは、ロココ様式に特徴的な技法として認識されています。ロココは18世紀のフランスで興隆した芸術様式であり、繊細で優美なデザインや華やかな色彩、細密な描写が特徴です。作品中のライティングや動きは、このロココの技法を反映していると言えます。

以上が一般的な通説として言われている解釈ですが、美術作品の解釈は主観的な要素も含まれるため、個々の観賞者によって解釈が異なることもあります。

62「褐色の髪のオダリスク

解説にあったかと思うが、エロさが際立っている。
確かに当時の写真技術などを考慮すれば先進的、前衛的すぎるほど刺激的な春画と言えたか。

64「庭園での語らい」

顔の表現はいまいちな感もあるが、ファッショナブルな色合いの服装と調和した背景とで味がある。
女性の淡いピンクと、男性のパッキリした赤ツーピースが、同系色という惜しさはあるもののいい。
男性側の白系のシャツ、靴下、袖と黒の帽子もコントラストが効いていていい。

こういう構図でインスタにアップするカップルに憧れるね。
文化的でありつつ現代に通ずるオシャレさ、ファッションセンスをアピールできるようなSNS運用。
発注者に依っては当初からそういった狙いやもしれぬ?

69「友情の盃を交わすヒュメナイオスとアモル」

手前が暗く意図的だ。
結構後年だしオランダとかの技術もうまく取り込んだのかな。

74「ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊」

流線的なるほど幽霊感が増している。
全体的な非現実的な雰囲気が悲劇の表現効果を高めている。

72「ヘロとレアンドロス、または詩人とセイレーン」

海風の激しさと月明かりの木漏れ日感が、厳しくも幻想的な雰囲気を演出している。

67「アモルとプシュケ、またはアモルの最初のキスを受けるプシュケ」

ある意味白雪姫的な場面?
ハイライトがこれからつくところらしい。
目のハイライトは、今日のアニメ文化で意識の覚醒の有無を表現するが、古典的にもしっかり利用されていたらしいようだ。
大判ながら、肌やピンクの衣装の色彩変化が絶妙でリアルなのも手が込んでいる。

焼肉冷麺

例によってフレックスの会社帰りに寄った。
お腹が空いていたし、六本木近辺は行く機会も少ないので、目星をつけた飲食店へ。

変わった冷麺、葛冷麺を提供する韓国系焼肉屋らしい。
一人焼肉で入る雰囲気でもなかったし、予約推奨ぽかったが空きがあってすぐに入店できた。

焼肉屋の夕食で肉を頼まない一人というのも迷惑そうなので、六本木価格で高かったもののタンもついでに一皿注文しておいた。
根本から先まで部位ごとの盛り合わせで、味変的に楽しめたのは良かったし、初めてのサービス体系だった。
肝心の冷麺も独特で美味しかった。
イジョドクなのでせっかくなのでビールも。

注文品数は3品だったが案外結構お腹いっぱいになった。新美から近いのでオススメ。
隣の席の女性二人組もショッパーからして新美帰りだった。