はじめに
東工大でティール組織著者のフレデリック・ラルー氏の講演があったのでそのレポ.
時々受けているTOTALプログラムの一環で,東工大の私は講演料は無料.有名な本だったので秒で応募した.一般はわりとすぐ埋まってしまったらしい.さすが.
今回の実現は,東工大の先生が翻訳に携わっていたからとか.ありがたい限り.内容は同時翻訳で行われた.これまたありがたかった.
忙しくて9/13/2019に行われたのに,一カ月も経ってしまった..
4/26/2020本格的に追記・改良
内容
今回の話と上記の動画:著書「ティール組織」は内容が若干異なるが概要は上記の動画がまとまっており明るい.
最近は混乱期に突入しており,BREXITやGreat America Againといった国家組織の回帰の動きが見られる.
歴史に見ると,これらは20~30年ほどでJUMPが見られる.ここではすなわち緩やかな成長ではなく,社会の急変を意味する.
歴史の転換点
この革命的な事実としては,1:農業,2:産業,3:IT化が挙げられる.
その中で組織も以下のように分類できる.
- ヒエラルキー
- 機械
- 生態系
ヒエラルキー
これらは必ずしもどれが優れているというわけではない.
ラルー氏は日本でどうか知らないが,EUではAのヒエラルキー構造が政府や大学に残っていて特に問題意識もなく機能している.”教授は貴族になっている”.また上下関係が非常にはっきりしているため,暴君的・暴力的支配も多い.これは歴史に倣うところが大きいだろう.残念なことに現代でも多分に観察できるものだが.
機械
人間はインプットに対するアウトプットが画一的に求められ,さながら機械である.単純な論理が求められる.個人的見解として,日本の教育システムがまさしくこれだ.一律的な教育システムが未だに残っている.高度成長期の名残ではあるが,現在にはそぐわないと言えるだろう.この点は企業の人事評価をはじめとした組織システムについても同様に言えるだろう.
生態系
ここでは自分らしさ・個性が求められる.そのためには各々のセルフマネジメントが必要になる.また組織の共通目標に向かって,直接的なアプローチも必要である.それぞれが世界をどのように見ているか捉えているか多様性の時代の組織だ.ラルー氏はそれぞれの優劣に言及していないが,これは最近の価値観の進化によって得られたものだと述べている.企業においてもこうした姿勢は重要だ.今後AIの代替によって機械的な性能はますます置換されていくだろう.そうした中で個性を生かしたアイデアや連携が重要になると考えられる.
ケーススタディ
教育
ヒエラルキーでは単に大人が偉い:貴族(高所得者)のみが教育を受けられる社会だ.
機械では18歳までに型にはまったように出荷されるようになる.
生態系では後述のとおりだ.
人類も当初は教育という概念すらなく,大人が偉くそれに倣う形だった.年齢ごとにヒエラルキーが決められていた.近代になるにつれ,学校が普及した.そこで一定の教育水準を満たすような取り組みが行われている.教育水準とは,すなわち機械や部品の規格であり,悪い言い方だとその枠に押し込めるような形だ.ゆえに枠に嵌らない子供はしばしば問題視された.
そして現在は生命的な教育システムが生まれている.ラルー氏は幸いそういった学校に子供を通わせられたと述べていた.ここで再三述べておくが,いずれかが正しいわけではない.ただ私もここに示すシステムは,非常に良いと思った.というのは,子供の自主性が尊重されたシステムだからだ.
そこでは,子供は,登校時にその日に好きな科目やコンテンツを選べる.そのため多くの子供が,自身の長所を伸ばせるシステムになっている.そこで学年の垣根も取り払われている.そのため学校施設も既存の集団授業のための教室ではなく,雑然とした形になっている.ここでは細かいルールはなく,子供の自主性に任されている.こうした環境こそが子供を真に自立させ成長させる環境ではないだろうか.
参考
https://www.youtube.com/watch?v=nCi2kTh0nww
https://www.youtube.com/watch?v=8cOsqYItCoI
上記のとおりユーロ圏を中心に生態的なある意味哲学的なカリキュラムに置換が進んでいる.これに対しアジア,特に東三国の日中韓は学歴社会が顕著だ.これは繰り返す通り優劣はつけられない.しかし人生の目的,本質的な価値付加を考えれば,前者を推したいと思う.一方でこれは国の文化を示すものとも考えられる.日本を筆頭とするアジア圏の勤勉さに裏付けられたものという考えだ.これに基づきアカデミックな分野でイニシアチブを狙う戦略も取り得るだろう.
政治
政治分野でも,生命体的な組織の萌芽が見れらる.これまではエジプト王朝から,権力の強さは変われど,ずっとヒエラルキー型のシステムになっていた.そのため歴史に学べば,一見すると最適なシステムに見える.だがそうでないかもしれない(し,はたまたそうかもしれない).確かに意見を通すには,強いリーダーシップの下での統率されたトップダウンの組織は強い.この強さは国力に直結するので,下手も打てない.だが逆に言えば,保守にならざるを得ない分野だったとも言えるだろう.ちなみに現在の選挙システムは機械的と捉えられる.
前振りが長くなったが,この新しいシステムは台湾で見られた.サンフラワー革命に際し見られた.革命により既存の議員らはその立場を奪われた.そこで新たな政策決定のシステムが必要になった.通常であれば再選が妥当であるが,台湾は少し違った.革命に際し活躍したハッカーがさらに活躍したのだ.彼らは革命で用いたノウハウを再活用し,政策に関して賛否討論するシステムを作った.当初は散り散りな議論であったが,強いコメントに賛成する機能が付けられていたのが僥倖だったようだ.コメントの賛成を得るためか,本気なのかは分からないが,時間が経つにつれて,そうした強力なコメントへの意見の集約化が進んだ.これにより3hで協力のコンセンサスを得ることができた.まさしく民主主義的と言えるだろう.ただ法整備としては,そこはまだ追い付いていなかったので,この意見を参考にし,既存の議員が実務を担った.なおここでの議題は,Uberの導入の賛否についてだった.最後に議員は以前の後ろめたさもあってか,革命の主導者の学生に頭が下がらなったという.
羨ましい限りである.日本ではまず起こるまい.あっても高齢者の猛反対にあうことはキャッシュレス施策で完全に明らかとなった.
参考
農業
ヒエラルキーは元来の生態系が表している.人間がトップであり,肉食動物,草食動物,植物のあの形だ.
機械は弥生時代以来の既存の農耕システムが当てはまる.
であれば生態系とは何か.これまた最近の新しいシステムだ.持続可能性を重視した農耕だ.機械は大規模農地を工場レーンのように捉え,単一種に最適化された農薬が用いられてきた.これに対し生態系システムでは既存の生態系に原点回帰している.本来生物は周りと生存競争しつつ種によってはエビとハゼのように連携してきた.こうしたノウハウを参考にしつつ有機的で複雑なシステムを再現していく流れが見られる.
医療
ヒエラルキーは富と医療が集中していた.ある意味でコロナに苦しむ現在のアメリカの残酷な保険システムが悪化を助長した可能性もあるだろうか.
機械では患者の体こそが機械部品のように医者に見られるものだ.そこでは主に患部だけが見られる.
しかし肥満や糖尿病,うつ病に代表される現代病はこうしたシステムでの診察は難しい.そこで生態システムそのものの見方のパラダイムシフトが求められる段階に移行している.これが生態系的診療となる.
まとめ
以上のように非常に多様な分野でこうしたパラダイムシフトは起きている.特に企業の組織マネジメントにおいては,生存戦略上重要な見方になる.そのため実践せずとも現代社会のビジネスにおいては,頭の片隅に入れておくべきだろう.ここを抑えておけば,自社の改善や取引先のプロコンが見えてくるかもしれない.