土曜日は東急方面ということで,世田谷を中心とした美術館巡りへ.
長谷川町子美術館
まずはサザエさんの舞台の桜新町としての長谷川町子美術館を訪れたのだが,予備調査不足で展示替えで臨時休館で踵を返す.
五島美術館
最寄りは大井町線の上野毛だが,乗り換えが面倒な上,特別に近いというわけでもない微妙な立地なので.
出口には二子玉川側口が本施設にあるので,逆順の回遊の方が円滑そうだ.
写真は撮っていないが,そこまでの道中,二子玉川のタワマンのほか,閑静な世田谷区上野毛の住宅街など高級さを漂わせる建物も多い.
そうした地域柄もあってか,本館もお硬めだった.保守的とも言える.
具体的に言うと,館内の展示施設内でスマホが一切使えなかった.
当たり前かとも思うかもしれないが,時間や通知の確認やメールで触るのもNGなようで,デジタルネイティブとしては厳しく感じた.
またそうした厳しさの割にはその注意書きがあまり目立たない.
これは若干言い訳だが,入り口に書かれているとはいえ,室内には一切そうした案内はないし,不親切というかシンプルに気づけなかった.
そのため注意されてしまった次第だ.
しかし上述のように地域柄を考慮すれば,この厳しさが頷けるところでもある.
もちろん写真も撮れない.
そもそも本館は大東急記念文庫と統合されたらしい.
完全に東急の息がかかっていたというところか.
常設展や企画展的な境界はなく,定期的に展示替えがあるようだ.
今回は桃山時代がフューチャーされている.
概ね読めないものの,有名武将の直筆の掛け軸,書簡が見られるのは確かに貴重だろう.
またそこに現代活字も付記されているので,そこから字の確認や全体で伝えようとする流れが伝わる.
こうしたものを見ていて強く実感するのは,現在のビジネスメールも根本的な構成は一切の変化もないことだ.
件名から始まり,本文があって,結びに署名というのはもはや森羅万象共通だ.
江戸時代に行われた古典のリメイクも多く展示されていた.
その中でも仁勢物語として偽物語に掛けたものは面白かった.
中身をじっくり読めるわけでもないのでそんなものだ.
ちなみにやはり偽物語というと化物語に始まる物語シリーズが思い出されるが,その西尾維新作品は上述のオマージュ的なエッセンスは入っていたりしたのだろうか.あれば脱帽だが.
あるいは短冊などに金銀泥での下絵をあしらった和歌のものもあって,金銀で装飾されたこともあり,現代に通じる美しさがあった.
これは金閣寺と同様の傾向か.
ほかは茶碗などの陶器類があった.
各地の焼き物の派閥とその特徴,歴史的名作が解説されていた.
織田信長の曜変天目茶碗よろしくお茶に通じていた人らで作られた歴史がすごいということ自体は知っているが,それ自体を見てもいまいち分からない.
この方面は審美眼が育っていない.
絶妙なバランスが違うのは読んだ通りで理解できるが.
釉薬や鉄絵具でいい感じに色付けをしたりもするようだ.
油絵も書いたことはなくエアプなのだが,茶碗類に至ってはこれ極まれりだ.
友の会ということで,当館のメンバーシップによる作品の一部も展示されていて,そうしたところか体験施設に行ってみるのも人生経験として貴重か.
後は写真撮影が自由な多摩川側の庭園の様子.
等々力渓谷よろしく台地の縁なのか,河岸段丘的な感じか庭園内の高低差が特徴だ.
印象としては清澄やましてや同じ特徴を持った旧古河庭園などと比べても,高低差に富むが,通路など全体的に手狭な印象もある.
良くも悪くも日本の縮図な感もある.
東工大近辺
昼は緑が丘まで足を伸ばして,学生時代に何回か訪れたビブグルマンのラーメン三藤.
醤油が濃くて深みがある.
途中での酢の味変も大好きだ.
せっかくなので東工大近辺も散歩して,大岡山のドイツベーカリーのヒンメルでパンのお土産も買っていった.
アクセサリーミュージアム
そこから自由が丘乗り換えで東横線に乗り換え,祐天寺のアクセサリーミュージアムへ.
ここは緊急事態宣言中は長らく休館していて,明けでちょうど再開したタイミングだった.
その道中の駅前で行列ができており,10月にもなってまだ暑かったこともあり,和栗と日本酒のジェラートで間食とした.
以下のサイトが簡単ながら簡潔に過不足まとめられているので,私から改めて所感をまとめるところも特にない.
今回の企画としてはバックということで,古くは上述の文具セットに始まり,以降も小物入れとして小ぶりなものがルッキズムよろしく見た目重視で変遷したらしい.
こういうのを見て再訪したくなるのが,ここでも散々述べているV&A museumだ.
絢爛豪華なヴィクトリアもいいが,案外こうしたゴシックなアールデコも比べてみるとシンプルさに洗練さを感じていい.
個人的妄想を語れば,ただアクセサリをプレゼントするよりも,こうしたところで好みを調査しておくのが重要に思える.
宝石店もそうして眺めるだけでの楽しさはありそうだ.
あちらは見るだけなら無料だけども商売なので,見るだけの行為にそぐわないし,プレゼントの選考の過程とすれば,露骨にすぎるが.
しかし今日,こんなに派手派手なのはなかなか身に着けられないか.
ルネ・ラリックに関する展示もあった.
ひと目でこれを思い出した.
この繋がる感じのひらめきに似た感覚が知的充足感として堪らない.
VLやYSLもあって,ブランド好きにはたまらないかもしれない.
私はそうした知識には皆目疎いので,今回がいい勉強になった.
ただロゴだけで高いのはやはり納得できない.
彼らの落ち着いた特徴的な色味も魅力的だが,やはり私は上のような少し派手めで明るい雰囲気が何かと好きだ.
入手経路関連としては,元のオーナが業界の問屋だったことに寄るとか.
別の人が質問しているところから小耳に聴いた.
本館そのものの建築も木造で私立感が半端ない.
かと言って見劣るわけでもないし,換金性で言えばそこらの下手なものよりよっぽどかもしれない.
ちなみにこれも企画展の一部で後半にある.
最後は以下のような私にも馴染みのあるようなもの.
中目黒:郷さくら美術館
そこから一駅なので徒歩で郷さくら美術館へ.
名前の通り目黒川と桜に関する美術作品もある.
3階建てだが中目黒駅前という立地上の苦しさもあってか,施設自体はかなり小さめだ.
近所だしこのようにセットで行くのが正解だろう.
ここは現代の王道の絵画を扱う.
とはいえ完全に写実主義というわけでもなく,やはりそこにオリジナリティを入れて,実際には見えないけど見える世界を描く.
抽象と具体の使い分けは印象派を経由した進歩を感じる.
先の桜で例を挙げれば,遠目から花弁の一片は見えるわけもないのだが,それをあえて現実よりも大きく書いていたり,逆に散らした雫のグラデーションにしていたりする.
一点一点の細かな作品ごとの感想も書きたい.
企画としてはわびさびだとか.
これは現代の傾向なのかもしれないが,――オペラシティでも感じたが――,草花などの自然を主題としたものが多く見える.
代々木上原
最後はまったく東急ではなく,小田急圏内になるが副都心,千代田線経由で代々木上原へ.
そこで古賀政男音楽博物館へ.
若者なので彼のことをよく知らなかったが,日本のみならずアメリカでも名誉賞を受賞した超有名作曲家だとか.
館内は彼の生家の復元や小道具が展示されるほか,ヘッドホンで多くの作品を鑑賞できる.
また彼以外の音楽史の有名人も紹介される.
順路の最初では昨年没した人が特集されていた.
ただここは個人的に渡哲也しか知らなかった.
さらに別年で挙げられている人としては,滝廉太郎や北島三郎くらいで,文化的距離感の大きさを感じた.
おそらく同世代の多くも同様の傾向だと思う.
ともすれば,こうした作品は忘却された現状と仮定できるが,これは温故知新として再発掘されて注目され再消費されるだろうか.
あるいはただただ前へ進み,次々に忘却されていってしまうのだろうか.
個人的には前者に賭けたい.
単純な再消費でなく,現代的なDJ的な新要素で現代版にリミックスされれば,再起はありそうだ.
最後は喉が乾いたので,近所でスムージを飲んで帰った.
ただこれが800円.さすがに高すぎか.
とはいえ毎回ペットボトルに100円超払うだけなのも,人生経験としてもったいないところもあるように思えてならないのだ.
味は見た目の割にバナナが利きつつも,割とあっさりさっぱりしていて水分補給として飲みやすい.
また氷のかさ増しもないので,却って多すぎる印象も受けるくらいで,決して悪い買い物とも言えない.
それこそスタバに比べたら,いや,この話はやめて,筆を置くこととしよう.